書き直し
バイオレットの中に、静かな安堵が広がっていった。二人が座ってから、カフェの中はいくらか賑やかさを増していた。カウンターの奥ではエスプレッソマシンがシューッと音を立て、焙煎された豆の香りに、奥で焼かれている何かのバターの匂いがかすかに混ざっていた。隣のテーブルでは大学生らしき二人組が、皿に載ったペイストリーを分け合いながら笑い声を上げていた。声は控えめながらも明るく、店内のざわめきの中へ溶け込んでいき、決してそれ以上目立つことはなかった。
久しく本気で書けずにいたあと、彼女はようやく、もう戻らないかもしれないと恐れていたあの感覚を取り戻していた。もっとも、その安堵は長くは続かなかった。情報の出し惜しみ、伏線、そして回収について語ったアカメの説明が、頭の中で何度も巡り続け、ペンを手に取ってもなお静まる気配がなかった。
彼女は先ほど書いたばかりのメモと原稿を並べて開き直した。ページはまだ、手のひらが触れていた温もりをわずかに残していた。隣では、席を立つ客の椅子が床を軽く擦り、扉の呼び鈴が一度鳴ってから、カフェはまた落ち着きを取り戻した。
彼女の視線は原稿のページからノートへ、そしてまた原稿へと、同じ道筋を何度もたどっていった。頭の中では、すでに自分の物語の形を一つずつ組み立て直し始めていた。周囲の物音は、ほとんど意識に上らないほど遠のいていった。
「……これは、私にとって簡単なことではないと思います、赤和女さん」
ようやく彼女は、しばらく脇で冷めかけていたアメリカーノを手に取り、ゆっくりと一口すすってからページへ意識を戻した。コーヒーの苦味が、頭の中の騒がしさを、はっきり考えられる程度にまで静めてくれた。カップを置いたあとも、その温もりは手のひらにしばらく残っていた。
「正直、私自身も嬉しいです。普段はなかなか疲れが溜まるので、こうして少し息抜きができるのは」
彼女のペンは再びページの上を動き、一筆ごとに紙をこする小さな音を立てた。その音は、カウンターの近くで響くカップと受け皿の触れ合う音の下に、ほとんど埋もれてしまうほどだった。時折、彼女は修正が必要な箇所に印をつけた。削るべき情報、あとの章に回すべき手がかり、そして当初の予定より長く隠しておくべきだと判断した部分。
「ここにこの印をつけて……それから、この部分は移動させて……これも」
彼女は再びコーヒーへ手を伸ばし、もう一口ゆっくりと飲んだ。カップはもうほとんど空になっていた。頭の中で形になりつつある改稿の計画に満足がいくまで、彼女は原稿を何度も読み返した。
読み終えると、バイオレットは軽く頭を下げた。
「ありがとうございます、赤和女さん」
視線を向かいへ移すと、アカメはチーズロールケーキを楽しんでいる最中だった。フォークはまだ指の間に軽く握られたまま、皿の脇にはかすかに粉砂糖が散らばっていた。
「ここから先も、もっと成長できるように頑張ろうと思います。これからも力を貸していただけると助かります」
ちょうどケーキを一口、口へ運んだところだったアカメの動きが、完全に止まった。しばらくの間、彼はただ彼女を見つめていた。咀嚼することすら忘れ、フォークは皿へ戻る途中で宙に浮いたままだった。耳がわずかに赤くなっていたが、バイオレットにはその理由までは分からなかった。彼は不意に、急いで飲み込んだ。
「んぐっ……!」
彼は拳を口元に当て、鋭く咳き込んだ。その音の大きさに、隣のテーブルの学生たちが一瞬こちらへ目を向けたが、すぐにまた自分たちの会話へ戻っていった。
バイオレットはわずかに首をかしげ、彼を見つめた。表情はいつも通り平坦だったが、声の端にはいつもより少しだけ、心配の色がにじんでいた。
「赤和女さん、大丈夫ですか」
彼はすぐに湯呑みを手に取り、湯気がまだかすかに立ちのぼる中、何口か続けて飲んだ。咳は少しずつ落ち着いていった。
「あ……はい。すみません」
しばらくすると呼吸も普段通りに戻ったが、襟元にはまだかすかな赤みが残っていた。
彼が落ち着いたのを見届けてから、バイオレットは今日会う、もう一つの理由を思い出した。
「あ、そうでした」
「私が演じることになるキャラクターについて、見せていただけますか」
アカメはうなずいた。「そうでした」
彼は鞄を開け、NECのLaVieタブレットを取り出し、静かな起動音とともに電源を入れた。カフェの薄暗い照明の中、画面の光がかすかに彼の指先を照らした。
「デザインから、キャラクターの背景まで、順を追って説明させてください」
彼はタブレットをテーブルの向こうへ差し出した。持っていた手の温もりが、端にまだかすかに残っていた。バイオレットは両手でそれを受け取り、画面いっぱいに映るキャラクターの原画を見つめた。
彼が語ろうとしている構想が、少しずつ彼女の中で形になっていった。
そのキャラクターの名前はユナ・アルテメシア。人と馬が組み合わさった姿で、スポーティな装いをまとい、明るい色使いと躍動感のあるラインで構成されていた。ひと目で目を引くことを意図したデザインだった。
バイオレットは一度、ゆっくりと瞬きをした。デザインを見つめれば見つめるほど、自分が思い描いていたものと何かが噛み合わないという感覚が強まっていった。
その間もアカメは説明を続けていた。一文ごとに声には熱がこもり、空いている手は、まるでそのキャラクターが今にも画面から抜け出してくるかのように、画面へ向かって軽く動いていた。
「ユナ・アルテメシアは、園芸と執筆を愛する人馬のハイブリッドです。要するに、異世界から来て、事故のような形でこの地球に辿り着いたという設定です」
彼はいくつかの構想画像へ画面を切り替えた。指がガラスに触れる小さな音だけが、彼の言葉の合間に響いた。
「性格はかなり明るくて、人付き合いも得意で、エネルギッシュです。いつも場を盛り上げようとするタイプですね。それでも、園芸や小説の執筆をしているときには、落ち着いた一面も見せます。それに、この地球の現代文化についてはかなり無邪気なところがあって、時々、本人も意図しないうちに面白いことを口にしてしまうんです」
彼は説明を続けていたが、バイオレットはすでに自分なりの結論に達していた。
あのキャラクター。
自分が思い描いていたものとは、何一つ似ていなかった。
「いいえ」
アカメは話の途中で止まり、彼女のほうを向いた。タブレットの光が、まだかすかに彼の手を照らしていた。
バイオレットは彼の目を見つめ返した。表情はいつも通り、読み取りづらいままだった。
「これは望んでいません」
彼が理由を尋ねる前に、彼女はさらに続けた。
「ああいうキャラクターを演じるふりはできません」
アカメはしばらく黙り込み、片手を顎へやりながら、彼女の言葉の意味を考えようとした。周囲のカフェの喧騒が、急にさっきより大きく感じられた。彼が問いを口にする前に、バイオレットが先に頭を下げた。
「申し訳ありません、赤和女さん」
彼女は再び顔を上げた。
「以前発表されたユナ・アルテメシアが、実際の自分に近いものだと思ったから、ここへ来ることに同意したんです。ダークなテーマに惹かれる作家で、今こうして着ているようなゴシックスタイルを好み、人付き合いを避けがちな人間として」
アカメは静かに息を呑み、一度喉を動かしてから、ようやく言葉を取り戻した。何かが自分の中でかちりと嵌まったかのように、その表情に変化が浮かんだ。
彼は長く考え込むことなく、すぐに決断を下した。
「それなら、構想を見直します」
彼の視線はまっすぐ彼女に向けられていた。肩にまだかすかな緊張が残ってはいたが、それでもその眼差しは揺るがなかった。
「絵師に頼んで、あなたが本当に望むイメージに合わせてモデルを作り直してもらいます。僕の最初の小説家タレントになってください」
バイオレットはしばらく黙っていた。これほど早く彼が決断するとは、本当に思っていなかった。
彼女にとって、すでに公表された構想を変えるということは、軽く考えていいことではなかった。それにもかかわらず、彼はためらいの跡すら見せずに、まさにそれをやってのけた。まるで、その決断を下す理由をずっと待っていたかのように、その決定はテーブルの上に自然と収まった。
それが彼女の中に、ある疑問を残した。この人は、いったい何が理由で、これほど真剣に自分を引き留めようとしているのだろうか。
同時に、以前ヒミコが言っていたことが、結局のところ本当だったのだと、彼女は思い始めていた。どこか背後で、エスプレッソマシンが再びシューッと音を立て、カフェは何事もなかったかのように、いつもの様子で流れ続けていた。
アカメは本当に頼りにできる人物なのだと、その考えがこの日の午後、初めて、いつもならつきまとうはずの疑いを伴わずに、彼女の胸に静かに収まった。




