6話: 戦闘シーン
銭湯な。やめなさいそういう釣りタイトル。
というわけで、さっきヴァーチュオに銭湯の存在を教えてもらったので、入湯料であろう薄い硬貨1枚を握りしめ、その場所へ向かうこととした。風呂キャンは避けたいからね。
地図という概念はあるにはあるのだろうが、ヴァーチュオは案内板を頼りにしていれば問題ないと言っていた。本当だろうか?イマイチ信じられねえ。まあいいや。探検がてら自力で銭湯探して、ちゃんと見ていなかったこの世界の一般人たちを観察することにでもしようか。まずはこのスパイク通りを西に三つ行くらしい。それだけ教えてもらった。
まず手荷物だが、リュックを背負ってる奴はいない。当たり前だろ。んで所謂「かばん」を持っている人も稀にしか見ない。この時代の人は手荷物って概念ないのか?江戸とかならやりかねないとは思うけど…てかそれ以前に亜人的なのおるやん。あの女の人猫耳生えてるし尻尾生えてる。えーかわいい。そっちは何だろう。わーお、文字通りのバニーガールだ。マジもんの耳にしっぽ、服装も皆さんの想像通りのやつ。…けど待てよ、バニーガールってこの時代あったの?ああもう、いいかニコラ。もう深く考えちゃいけないんだよ。マジでこの世界冗談みたいなことしか起きないもん。てかほんとにニコラって名前なんだよ。今からでも改名してえ。例えばニコンとか…いやそれはまずいわ。
んでこれは…あこれは人だ。でその隣が…ヴォエ!リザードン亜人のチー牛だ。マジで汚いんだけど。なんか油ギトギトというか皮ギトギトだし。不潔なんてレベルじゃねーよ。なんか唇あってめっちゃ厚いし、お母さんに買ってもらったであろうヨレヨレのシャツ着てやがる。ちょっと腹出てるし。きったねー!え?亜人のチー牛略して亜ー牛ってか。やかましいわ。
そう考えていたら、あっという間に三つ目の角は出てきた。看板は…あるな。スネル村公衆浴場…3丁…丁って…え、まさかの尺貫法!?なんで?どういうこと?そもそも一丁は何メーター?…もうわけわかんねえ…。はやく銭湯でゆっくり考えるぞ。もう深く考えたら負けだ。これ。もうなんか収拾つかないから風呂屋ついたシーンまで飛ばしていい?ダメ?
結局そうさせてもらった。ぶっちゃけ何も覚えてねーもん。んで銭湯の中身は?なんとなく想像はついてるよ。だってこの村おそらく相当ジャポニズムに毒されているもん。んてか植民地だったのか疑うレベルなんだよね。でもなんかとても男女で風呂が分かれていそうな気はしない。なんかこの村もといこの時代もといこの世界の公序良俗意識の発展具合を考えると多分中は混浴で魑魅魍魎が跋扈、男女が跋扈跋扈とかそういう具合だろ。ええい、私は初めては好きな人がいいんだ。そうそう易々と渡してやらないぞ。…もし本当にそうだとしたら、ヴァーチュオはそんなえげつないところを難民に勧めない方が良かったんじゃないか?もう地獄絵図だもんそうなったら。スラムだろスラム。ええい何でもいい、不潔を極めることと貞操の尊厳の踏み躙られること、どちらも屈辱だがここまできちまったからには覚悟を決めよう。銭湯の価値はファーストコンタクトで決まると言っても過言ではない。いざ参る…。
えーと…なんだろう、普通に銭湯だな…ある意味予想を裏切らない。男女で部屋は分かれてるし、怪しそうな人たちもいないし。ま、まあ、逆に安心して考え事ができるな。てなわけで滞りなく話を進めよう。ああちょっと、えげつない展開はないから女性読者さん逃げないで!
銭湯の看板娘…に硬貨を叩きつけ、中へ入ることとす。私おべっかが上手いのね。脱衣所も面白みはない。ただ強いて言えば体重計はないし、扇風機もねえ。すりガラスのドアとかそんな大層なものもねえ。けどそれ以外は普通なんだよ。謎テクノロジーの証明もあるし。想像してもらうとしたらガスランプみたいなやつ。でもこんな水気の多いところでガスランプとかそれなりに危なそうなのに。って、考え事はしない。今は虚無…虚無…ドパガキすぎて手遊びが止まらねえ。逆に今までどうしてたんだよ。
キモ男のシャワーシーンなんて誰も見たくないだろうからあえて言及することは避けるけど、その道中で偶然鏡を覗き込んでしまった。その時に映った顔面は少なくとも自分の顔とは思えないほど整っていて、それなりに清潔感のある見た目に仕上がっていた。ガリガリなことに変わりはない。だが容姿についてそれなりの情けを賜ったことには、感謝してもしきれない。なにより私は自分の容姿に自信がないことが潜在的な憂鬱を引き起こしていたからな。なるほど、だからヴァーチュオは私を助けたし、膝枕したし、その顔が崩れたことで大笑いした。世の中顔やんけ。よっしゃあ、今や醜形を克服した身、前の世界で散々やられてきたルッキズムの如何をこの世界でやり返してやる。畜生ども覚えとけ。
さてと考え事だ。湯に浸かろう。まあこれで湯が不潔ということはないでしょう。信じるよ。今日のメイントピックは結局この世界の変なところについて、そしてカランビットとかいう暴力女の対処法について。ついでに難民として匿ってもらえなくなった後の生活法について。どれからいこうかな。順番にやりますか。
まずこの世界のベースは中世。けど武器や建物は近世。トイレのピクトグラムは戦後。亜ー牛はもはやモチーフがわからん。そして尺貫法とこの絶対現地の人は絵の光景を理解していない富士山が描かれたこの銭湯はもジャポニズム的絵教によるものであることは想像はつくが意味はわからん。んてか魔法たる魔法もねえ。いや、あってもみんなが考えているほど派手じゃないだけかもしれない。そうだな、帰ったらヴァーチュオに聞いてみよう。話を戻して、いやさ、独自文化として訳わからない要素があるのは全然理解はできるよ。けど全てにリアリティがあるんだよ。そう、私が怖いのはそこ。何で?異世界だから〜なんて思ってたけどだったらもっとファンタジーファンタジーしていてくれよ。汚い亜人はじめリアリティがある場所が全部間違っているんだよ。というかまじで一度ぐらい俺TUEEEさせろや。水晶玉で測ったらレベル1だったけど実際は1京飛んで1でしたとかっていうオチとかじゃないのか。あ、そうか、これからするんだよ。我が容姿を罵り、私から生きる活力を奪ったものに裁きを。このガバガバすぎる世界も、全て私がかつていた文明のそれを超えるものはきっとないのだろう。であれば、全てにおいて予測がつくのだ。今度こそ深く考えない。全てを受け入れろ。お前は今仏だ。
Next。カランビットへの対抗策だな。殴られた時の話を思い出す。と言っても数時間前だけど。まず気になるのは『お前民主派だろ。絶対。じゃなきゃ女の名前つけねーもん。』という発言。何となく推測するとしたら…民主派は…女だと運動に参加しなくてよくなるから、家によっては女の名前をつけて…強制参加を免れようとしたとか…?じゃあ王政派はどうなんだ?そもそもカランビットっていう名付け方自体どうなんだ?推測できる情報が少ないな。どっちにしろあの殴り方を見ると急に沸々と怒りが湧いてきて抑えられなかったように見えたな。やっぱ弟が死んだシーンをフラッシュバックしてしまうのだろうか?もしそうなると一度民主派のレッテルが貼り付けられた私と会話することはもう生理的に受け付けない可能性も高いな。かと言ってどっかでばったり遭遇したら殴られるのはごめんだ。あいにく私に被虐性愛の嗜好はないもんで。そして女子を殴ることもしたくない。けどやられたらやるしかない。けどそもそも対抗できそうなほど自分に力があるわけでもない。もう人道的な方法での解決は諦めるのが筋かな。護身術でも習おう。
最後、もし自警団本部を離れる流れになったら?第一何を仕事にできるかもわからんし、社会構造がわからん。奴隷とかの制度もまだ残っていてもおかしくはないと思うし。どうしようかな。それこそこの風呂屋の主人にあって「ここで働かせてください!」と言ってツラを下げるしかないかもしれないな。そもそも私まともに働いたことないんだよな。家から出られないのに労働なんてできねえ。でももし採用されてしまったらどうなる?シフト制か?終身雇用か?派遣だとしたら3年ぐらいで切られちまうのか?研修期間は?初任給は?そもそも物価は?国のGDPは?えっと何の話してる?そうだ、自警団を出るかどうかの話だ。…カランビットとかいうアホもおるが、たとえ彼女に恋人とかがいたとしてもヴァーチュオと一緒にいられるんだったら自警団で飼ってもらうのも悪くはねえな。もしかしたらまた撫でてもらえるかもしれないし、膝枕して食えるかもしれないし、あんなことやこんなことしてもらえるかもしれないやん。なんか急にやる気出てきた。私は全知全能の森羅万象を司るものです。この世の全てを覆します。何言ってるんだお前。うーん、どっちにしても夢があるなあ。でもさ、自警団にいる人がそんなに多くなさそうなことを考えると名前を奪ってもらおうとして却下された人がたくさんいる可能性も大きそう。ましてや私力無いしなあ。子犬のふりをするぐらいしかやることがない。癒し要素も皆無だし。見た目は良くなったとしても横浜○星レベルでもないし。まあ言ってみるか。色々やってるうちに自分の強みが見つかるかもしれないからね。こういうポジティブシンキングを前の世界でも持ちたかったものだよ。ああやば、のぼせちまう。茹でチー牛は勘弁だ…もうこの自虐も使えないのか。嫌味になっちまうもんな。くっそ。いいんだか悪いんだか…いやいいだろ。
はあ、いい湯だったな。風呂の後のコーヒー牛乳はないのか。んてかそれ以前に地文なしだわ。入湯料は使っちゃったしな。そそくさと戻っちまう。もう顔がいいだけで人生が美しく見える。もうほんとに薔薇道。なんか全部上手くいきそう。常に躁だなこれじゃあ。…それにしても、爬虫類系亜人のイチモツってデケェんだな。ああちょっと、女性読者逃げないで!
こんな下品な作品にする気はなかったんですけどね...やはり心根が下品なのでこうなってしまいます。
私は大学に来て2ヶ月、僭越ながら魔法使いになることを決意しました。皆さんも魔法使いになりませんか?




