↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚界少女  作者: sara
復生の影
63/102

死斗

遠くで、蕭珊雅の氷弾は、あの壊れることのない骨の盾に次々と跳ね返されていた。


氷の破片が飛び散り、「チリンチリン」と澄んだ音を立てた。その盾は本当に手ごわく、蕭珊雅のあらゆる攻撃も、その不動の防御を少しも揺るがせることができない。


「くそっ!」蕭珊雅は心の中で悪態をつきながら思った。「どうにかして、この憎き盾を打ち破らなきゃ!」


彼女が一瞬気が緩んだその隙を突き、蝕刻の姫が素早く間合いを詰め、左腕の骨爪を猛然と振り下ろした。相手の顔面めがけて一直線に襲いかかるその一撃――だが、彼女の傍らに浮かぶ魔法書が鋭敏に反応し、急いで彼女の身体を後方に引き戻す。ぎりぎりのところで、致命的な爪の一撃をかろうじて回避したのだ。


骨爪は彼女の鼻先をかすめ、ほつれた髪の毛数本を切り落とした。しかし、蝕刻の姫は失敗を悔いる間もなく攻撃を止めず、手にした骨爪をそのまま前方へ突き出し、白い残像となって蕭珊雅の喉元へと襲いかかった。


まさに寸前のそのとき、天から灼熱の火球が落下し、蝕刻の姫の頭上めがけて炸裂した。攻撃を察知した彼女は、とっさに大きく跳んで距離を取った。


火球は地面に激突し、辺り一面を真っ黒に焦がした。遠山凛は燃え盛る聖剣を手に、蝕刻の姫と蕭珊雅の間に立ち、再び蘇った怪物を睨みつけ、微塵の怯えも見せなかった。


先制したのは遠山凛だ。聖剣を振るって蝕刻の姫へ斬りかかるが、その一撃は硬い骨の盾に跳ね返され、逆に蝕刻の姫の骨爪がすばやい反撃に出た。遠山凛は抜群の反射神経で、見事に宙返りして後退し、間合いを広げる。


それでも、鋭利な骨爪は彼女の制服を切り裂き、服には三本の裂け目、胸元には三筋の血痕を残した。


さらに蝕刻の姫は追撃を仕掛け、背中の触手をすべて凶器へと変貌させ、まるで豪雨のような連続攻撃で遠山凛を襲う。遠山凛は身をひねって避け、剣の刃で的確に迎撃。二本の突き出た尖刺を弾き飛ばした。その一方で、蕭珊雅の援護も到着し、放たれた複数の氷弾が、襲い来る二本の尖刺を正確に切断した。


前回の戦闘の経験から、蕭珊雅は触手が切断されてもなお操られることを知っていた。氷弾が尖刺を断ち切ると、たちまち強烈な冷気が迸り、切断された部分を瞬時に凍りつかせて包み込み、怪物に再び操られることを防ぐのだ。


遠山凛はそのわずかな隙を逃さず、触手の根元に狙いを定め、聖剣の炎でその再生能力を完全に封じようとした。ところが、剣を振るった途端、またしても硬い骨の盾に阻まれてしまう。


切断された触手は瞬く間に再生し、遠山凛は慌てて後方へ跳び、再生する触手の追撃を避ける。


「こいつの盾、厄介すぎる。防衛を崩さなきゃ話にならない。なんとかして盾を破らないと」蕭珊雅は遠山凛の隣に降り立ち、冷ややかに遠くの蝕刻の姫を見据えながら言った。


「でも、こんなに攻撃しても、あの盾には傷ひとつ付いてないよ」遠山凛は息を切らしながら答えた。


蕭珊雅は改めてあの奇怪な骨の盾をじっくりと眺め、何かを見つけたようだった。そして、遠山凛の剣に巻き付く聖焰にも目をやる。すると、彼女の脳裏に大胆な作戦が閃いた。


「凛、その炎で、あの盾をずっと焼き続けて!」蕭珊雅が叫んだ。


「え?」遠山凛は一瞬戸惑ったが、遠くではすでに蝕刻の姫が再び迫っている。


「早く!」蕭珊雅は迫り来る敵を見据え、急せかした。


「わかった!」


遠山凛はまだ彼女の意図がよく分かっていなかったが、蕭珊雅を信頼していたため、思い切ってその提案に従うことにした。


彼女の手の甲に刻まれた炎の刻印がまばゆい光を放ち、遠山凛は歯を食いしばって聖剣を高く掲げた。燃え盛る炎が剣身に巻き付き、天を貫く火柱へと姿を変えた。


遠山凛は雄たけびを上げ、勢いよく袈裟斬りを繰り出す。炎でできた巨大な怒りの竜が噴き上がり、蝕刻の姫へと一直線に襲いかかった。


蝕刻の姫は、遠山凛の炎が再生を封じる特性を持つことを知っており、油断せず、巨大な骨の盾を身前に掲げて、この天地を揺るがす一撃を真正面から受け止めた。


炎と骨の盾が激しくぶつかり合い、「ジジジッ」と耳を劈く焼ける音が響いた。ほどなく、骨でできているはずの盾は聖焰によって真っ赤に焼かれ、まるで炉から取り出したばかりの烙鉄のように輝いた。


「今だ!」


炎の攻撃が終わると同時に、蕭珊雅はすかさず、用意しておいた極低温のビームを、真っ赤に焼けただれた骨の盾に照射した!


実は蕭珊雅は以前から、その骨の盾に細かな傷があることに気づいていた。そして、この超高温と極低温の衝撃が同時に加わったことで、熱膨張と冷収縮の物理法則により、それらの小さな傷が瞬く間に広がり、蜘蛛の巣状の亀裂へと変わったのだ。


遠くで様子を窺っていた緒方花音は、一瞬で事態を理解した。あの骨の盾は、以前アパートで春谷時雨の風の力を宿した風刃に斬られて、細かい傷がいくつも刻まれていた。だからこそ、二人はついにこれを突破できたのだ。


「時雨のあの攻撃が、結果的に彼女たちを助けていたのか……」緒方花音は思った。


盾に亀裂が生じたのを見て、遠山凛はすかさずチャンスを捉え、聖剣を振るってその骨の盾を力いっぱい叩き割った。


「バキッ!」


蝕刻の姫の骨の盾は、もはやその力を耐え切れず、轟音とともに砕け散り、大小無数の破片となって地面に落ちた。


遠山凛はすぐに追撃を加える。


骨の盾がなくなった今、炎をまとった聖剣こそが、この怪物の再生能力を打ち負かす最強の武器となった!遠山凛は高く跳び上がり、猛スピードで袈裟斬りを繰り出して、蝕刻の姫の胸にある核へと直撃する。


慌てて左手の骨爪で防ごうとする蝕刻の姫――だが、聖剣の炎が骨爪に触れた瞬間、爪は見る間に真っ赤に焼け、今にも折れそうになった。


まさにその危機一髪、怪物は怒りの咆哮を上げ、盾を失った右手から新たな骨爪が瞬く間に生えて、遠山凛の無防備な腹部へと突き刺さった!


「シュッ!」


蕭珊雅の氷弾が疾走し、蝕刻の姫の奇襲を仕掛ける右手へと正確に命中。生えたばかりの骨爪ごと、腕全体を凍らせてしまった。


遠山凛はその隙に後退し、蝕刻の姫との対峙距離を再び広げる。怒り狂った蝕刻の姫は、左手の骨爪で右手を覆う氷の塊を粉々に砕いた。


完全に挑発されたのか、両手の骨爪を一気に硬化させ、互いにこすり合わせて火花を散らす。背後の残りの触手もすべて硬くなり、背後に殺人的な尖刺へと変貌。明らかに決死の覚悟で臨んでいる。


遠山凛も油断せず、再び前に出て戦いを挑む。蝕刻の姫は両手持ちの骨爪を得て近接戦闘能力を大幅に高め、遠山凛の鋭い攻撃に対し、骨爪で次々と防ぎつつ、隙を見て致命的な反撃を仕掛ける。


「カーン!カーン!カーン!」


炎と骨爪の激突がまばゆい火花を散らす。遠山凛は一つの隙を狙い、蝕刻の姫の胸にある核の紅玉へと一太刀を浴びせる。蝕刻の姫の二本の骨爪は即座に交差し、十字型になって聖剣の切先を必死に防いだ。


両者は膠着状態に陥る。


蕭珊雅の氷弾が再び援護に駆けつける。蝕刻の姫は背後の触手を動かして襲い来る氷弾を砕こうとするが、氷弾は砕かれても消えることなく、瞬く間に無数の氷の結晶へと変わり、骨爪と背中の触手すべてを徹底的に凍らせる。


遠山凛はここぞとばかりに聖剣の炎を一気に増幅。交差して防いでいた二本の骨爪は音を立てて粉々になり、破片が地面に散乱した。


遠山凛の剣先は蝕刻の姫の胸の核へと突き刺さり、深い裂け目を刻んだ。


「ウゥゥーッ!」怪物は苦悶の叫びを上げ、勢いよく後退する。遠山凛はその機会を逃さず、さらに二度の斬撃で、蝕刻の姫の両側の凍りついた触手を根元から一刀両断した。


炎が触手の付け根を焼き尽くし、もはや再生能力は失われた。


遠くの巨石の陰に身を潜めていた緒方花音と青木紗綾は、恐るべき怪物が苦戦しているのを見て、思わず胸が躍った。


だが喜びも束の間、青木紗綾の手が何か小さく蠢くものに触れてしまった。視線を落とすと、そこには全身が白骨でできた二匹の骨蛇が現れる。


それは蝕刻の姫の体から砕け散った骨の盾や骨爪の破片が集まり、かつての亀裂を抱えたまま生まれ変わった存在だった。


二匹の骨蛇は青木紗綾と緒方花音を見つけ、砕けた骨でできた大きな口を開き、猛然と二人へと襲いかかった。


「きゃあっ!」二人は同時に悲鳴を上げ、とっさに腕を上げて身を守った。


緒方花音の手の甲に刻まれたメビウスの刻印がまばゆい光を放ち、灼熱の力が迸って、彼女に襲い掛かる骨蛇を瞬く間に砂へと変えた。


一方、青木紗綾の手の甲には、淡い青色の風の刻印が突如出現。緊急時に自動で風刃を発生させ、「サッ」という音と共にもう一匹の骨蛇を真っ二つに切り裂き、地面に落とした。


切断された骨蛇が再び動き出す間もなく、緒方花音は咄嗟の判断で、輝く右手を伸ばし、その残骸に触れた。メビウスの刻印による灼熱の力で、二匹目の骨蛇も砂へと変わった。


緒方花音は青木紗綾の手の甲にある小さな風の刻印をじっと見つめ、すぐに悟った。


「きっと時雨だ!私たちが去るとき、階段の入り口で軽く叩いてくれた。この刻印は、あのときに授けてくれたお守りに違いない!」


一方、青木紗綾も驚きながら自分の手の甲を見やる。刻印は数回ピカッと光ったあと、ゆっくりと消え、まるで最初から存在していなかったかのように跡形もなく消えてしまった。


蝕刻の姫は、密かに仕掛けた奇襲計画が失敗に終わり、触手は根元から切り落とされ、盾も爪もすべて砕け散ったことを悟った。


もはや抵抗する力はなく、ただ無力に地面にひざまずくだけだ。


遠山凛は聖剣を手に、最後のとどめを刺そうと前に出た。


だが、蕭珊雅の動きは彼女より速かった。彼女の怒りが凝縮された極寒のビームが、怪物の核へと一瞬で命中。


蝕刻の姫は、砕けた紅玉ごと徹底的に凍りつき、氷の彫像へと姿を変えた。極寒の中で細部まで粉々になり、やがて舞い上がる無数の微粒子へと変わる。


怪物の終焉とともに、彼女が開いていた虚界の空間は激しい震動を起こし、崩壊を始めた。空には暗紫色の亀裂が広がり、まるで世界の終わりの予兆のようだ。


遠山凛は自らの刻印で現実への帰還の裂け目を即座に開き、皆に叫んだ。


「早く逃げて!」と。


青木紗綾と緒方花音もすぐにそれに続き、裂け目に飛び込んで、崩壊しつつある虚界の空間から脱出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。