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虚界少女  作者: sara
復生の影
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死斗

  蕭珊雅の氷刃は、その強固で破壊不可能な骨の盾に次々と弾き返されていく。


  氷片が飛び散り、「チリンチリン」という甲高い音を立てた。


  蝕刻の姫はその隙を見逃さず、猛然と左腕の骨爪を振り下ろし、蕭珊雅へと襲いかかった。しかし、彼女は戦闘経験豊富なだけあり、体を巧みに操って後方に急激に退き、危うくこの致命的な一撃をかわした。


  骨爪はまさに彼女の鼻先をかすめ、ポッキリと折れた髪の毛を何本か巻き込んでいった。


  その直後、灼熱の火球が空から降り注ぎ、蝕刻の姫の頭上を炸裂させた。爆発の衝撃波は瞬時に彼女を押し戻し、攻撃の勢いを一気に削ぎ落とした。


  遠山凛は燃え盛る聖剣を手に、蝕刻の姫と蕭珊雅の真ん中に立ちふさがった。目の前の再誕した宿敵を見つめる彼女の瞳には、微塵の怯えもなかった。


  「行くぞ!」と遠山凛が一斉に反撃を開始すると、聖剣は空気を切り裂く鋭い音を響かせながら斬りつけた。だが、その攻撃は硬質な骨の盾に跳ね返され、逆に蝕刻の姫の骨爪が彼女の隙を突いて猛スピードで反撃を仕掛けてきた。素早い反応を見せた遠山凛は、すかさず華麗な宙返りで距離を取ることに成功した。


  それでも、鋭い骨爪は彼女の制服を引き裂き、服に三本の裂け目を刻み込んだ。さらに胸元には血痕まで残してしまった。


  蝕刻の姫はさらに追い打ちをかけ、背中にある残りの触手を獰猛な棘へと変貌させ、まるで豪雨のように遠山凛へと襲いかかり続けた。彼女は身をかわしながら、剣の切っ先で正確に迎撃し、二本の突進する棘を弾き飛ばした。その間にも、蕭珊雅の援護がすでに到着していた。彼女が放った数発の氷弾は見事に命中し、襲いかかる二本の棘を鮮やかに断ち切ったのだった。


  前回の戦いで得た教訓から、蕭珊雅はこれらの触手が一度切れてもなお操られることを知っていた。彼女が放った氷弾は、棘を切断した直後に強烈な冷気を放出し、その断片を瞬く間に凍結させて包み込んでしまう。これにより、怪物が再び触手を操って攻撃を仕掛けることを防ぐことができたのだ。


  遠山凛はそのわずかな隙を逃さず、触手の再生箇所を狙い、聖剣の炎で完全にその再生能力を封じようとした。しかし、彼女の剣が動き出した途端、またしてもあの堅牢な骨の盾に阻まれてしまった。


  切断されたはずの触手は、瞬く間に再び生えてくる。慌てて後方へと飛び退いた遠山凛は、再生した触手の追撃をかろうじて避けた。


  「くそっ……」と蕭珊雅が彼女の隣に降り立ち、冷たい表情で言った。「こいつの盾は厄介すぎる。防ぎきれない限り、どうやっても攻撃できない。なんとかして突破しなきゃいけない」


  「でも、ここまで何度も攻撃してきたのに、盾には一切の傷跡さえ残っていないんだ」


  遠山凛は荒い息を吐きながら、胸元に開いた傷口から痛みが走るのを感じていた。


  蕭珊雅は不気味な骨の盾をじっと見つめ、何かを見つけたかのように眉をひそめた。そして、遠山凛の剣に絡む聖なる炎を見つめ直すと、突然大胆な作戦が頭の中に浮かび上がった。


  「あなたの最強の炎を使って、あの盾を徹底的に焼き続けてくれ!」


  遠山凛は彼女の意図が分からなかったものの、蕭珊雅への信頼から即座に指示を受け入れた。彼女の手の甲に宿る炎の紋章がまばゆい光を放ち、遠山凛は高々と聖剣を掲げると、熾烈な炎が剣身を覆い尽くし、天に向かって巨大な火柱を形成した。


  「ハァアアッ!」


  雄叫びを上げた遠山凛は、一気に剣を振り下ろした。すると、炎で構成された巨大な怒龍が迸り、蝕刻の姫へと直撃した。


  蝕刻の姫は、遠山凛の炎が持つ再生封じの特性を熟知していたため、油断せずすぐにその巨大な骨の盾を前に掲げ、まさに天地を揺るがす一撃を受け止めた。


  炎と骨の盾が激しくぶつかり合い、「ジジジッ」と耳を劈くような焼ける音が鳴り響く。やがて、骨で造られたその盾は聖炎によって真っ赤に焼かれ、まるで溶鉱炉から取り出されたばかりの鉄塊のような迫力を帯び始めた。


  「今だ!」


  炎の攻撃が終わった刹那、ずっと傍らで力を溜めていた蕭珊雅がタイミングを見計らった。彼女はすでに充填していた極寒の光線を、一気にあの真っ赤に焼けただれた骨の盾へと叩き込んだ。


  実は蕭珊雅は以前から、この骨の盾に細かな傷痕があることに気づいていた。それが、急速な高温と極低温による劇的な冷却作用を受けたことで、熱膨張と収縮という物理的原理が働いて、その小さな傷が瞬く間に広がり、蜘蛛の巣状の巨大な亀裂へと変貌したのだった。


  離れた場所で様子を見守っていた緒方花音は、その光景を見て一瞬で事情を理解した。なぜなら、この骨の盾は以前、マンションの一室で春谷時雨が風の力を宿した風刃によって幾筋もの細かい傷をつけられていたからだ。つまり、彼女たちが攻略に成功したのは、あの時の時雨の攻撃のおかげだったのかもしれない——。


  「あの時雨さんの攻撃が、偶然にも私たちを助けてくれたのか……?」と緒方花音は思った。


  「カシャッ!」


  蝕刻の姫の骨の盾は、とうとうその耐久限界を迎え、轟音とともに粉々に砕け散った。無数の大小さまざまな破片となって地面に落下した瞬間、遠山凛はすかさず勝機を逃さずに追撃を開始した。


  骨の盾がなくなった今、彼女の炎を纏った聖剣こそが、この怪物の驚異的な再生能力を打ち破る唯一の武器となったのだ。遠山凛は素早く前進すると、高く跳び上がって力強い一撃を加えた。それはまさに蝕刻の姫の胸元にある核心部へと直撃し、深々と食い込むほどの威力だった。


  しかし、その瞬間、蝕刻の姫は左手の骨爪で必死に防御を試みた。聖剣の炎と骨爪が激しくぶつかり、骨爪は見る見るうちに真っ赤に染まり、ついには脆くなり、あっという間に砕けそうになった。ところが、そのとき、怪物は激しい咆哮と共に右手から新たな骨爪を生み出し、警戒心を欠いた遠山凛の腹部へと容赦なく突き刺そうとしていた。


  「ヒュゥウッ!」


  その瞬間、蕭珊雅の氷弾が疾風のように飛来し、狙い澄ましたように蝕刻の姫の襲撃準備中の右手を直撃した。瞬く間に、生まれたばかりの骨爪ごと腕全体が凍りつき、動けなくなってしまった。


  遠山凛はその隙を逃さず、一歩引いて態勢を整える。一方、蝕刻の姫は激昂し、左手の骨爪で自らを包んでいた氷塊を粉々に打ち砕いた。すると、今度は両手に鋭い骨爪が生え揃い、まるで漫画のキャラクター、ウルヴァリンさながらの姿へと変貌を遂げた。


  完全に怒り狂ったかのように、背中から残りの触手すべてを硬化させ、それを鋭利な棘へと変え、背後に広げて決死の反撃態勢に入った。


  遠山凛は深呼吸を一つすると、再び正面から立ち向かっていく。両手に骨爪を携えたことで近接戦闘能力が格段に向上した蝕刻の姫に対し、彼女は鋭い攻撃を繰り返しながらも、常に骨爪で受け流し、隙を狙って致命的な反撃を仕掛けてくるのを警戒していた。


  「ガチャン!ガチャン!ガチャン!」


  炎と骨爪の激しいぶつかり合いが、眩い火花を散らせる。遠山凛はその一瞬の隙を逃さず、蝕刻の姫の胸元にある核心の赤い宝石へと一太刀を振り下ろした。すると、蝕刻の姫の両手の骨爪が咄嗟にクロスして十字型となり、聖剣の切っ先を完璧に防ぎきった。


  双方が互いに拮抗したまま、緊迫した攻防が続いた。


  そのとき、蕭珊雅の氷弾が再び援護に駆けつけた。蝕刻の姫は背後の触手を駆使して襲いかかってきた氷弾をことごとく打ち砕こうとしたが、それらは砕け散るどころか、瞬く間に無数の氷晶へと姿を変え、背後に控える彼女の触手すべてを完全に包み込んでしまった。おかげで、背中の武器はもはや自由に動くことができなくなってしまったのだ。


  遠山凛はそのチャンスを逃さず、一気に力を込めて聖剣の炎を増幅させた。そして、交差して防いでいた二本の骨爪を、一撃のもとに薙ぎ払った。聖剣の鋭い切っ先は、そのまま蝕刻の姫の胸元にある核心部を深々と抉り込み、そこには見るも無残な亀裂が現れた。


  「グワアアアッ!」


  怪物は激痛に呻き、大きく後ろに仰け反った。遠山凛はその瞬間を逃さず、勢いよく二度の斬撃を加え、背後に控えていた蝕刻の姫の触手を根元から一刀両断にしてしまった。


  炎が触手の付け根部分を焼き尽くし、もはやその再生能力は完全に失われていた。


  一方、遠くの岩陰に隠れて様子を見守っていた緒方花音と青木紗綾は、恐怖の怪物が苦戦を強いられているのを見て、内心喜びを抑えきれなかった。しかし、まだ安堵するには早すぎた。青木紗綾の手が、なんと微かに蠢く何かに触れてしまったのだ。彼女がそっと覗き込むと、そこには白骨でできた二匹の骨蛇が確かに存在していた。それらは、蝕刻の姫が倒れ際に放った骨の盾や骨爪の破片から生まれたものであり、かつて彼女自身が負った亀裂をそのまま宿していたのだ。


  二匹の骨蛇は、青木紗綾と緒方花音の二人を見つけると、瞬く間に骨でできた大口を開き、猛然と襲いかかろうとした。


  「キャアアアッ!」


  二人は同時に悲鳴を上げ、反射的に腕を掲げて防ごうとした。そのとき、緒方花音の手の甲に宿るメビウスの紋章が眩い光を放ち、灼熱の力が一瞬にして彼女を襲おうとした骨蛇を砂粒へと変えてしまった。


  一方、青木紗綾の手の甲には、今まさに風の紋章が現れた。彼女は危機的状況の中で自動的に生成された風刃を素早く放ち、もう一匹の骨蛇を真っ二つに切り裂いて地面に転がした。


  さらに、その断片化した骨蛇が再び動き出す前に、緒方花音は咄嗟に自分の輝く右手を伸ばし、その残骸に触れた。すると、メビウスの紋章の熱で、二匹目の骨蛇もまた砂粒へと変わり果てた。


  緒方花音は、青木紗綾の手の甲に残る小さな風の紋章をじっと見つめ、すぐに悟った。


  「きっと時雨さんが、私たちが去るときに階段の入口で軽く触ってくれたんだわ!あの紋章は、きっとあのとき彼女が授けてくれたお守りなのよ!」


  青木紗綾もまた、自分の手の甲に残る風の紋章を驚きの目で見つめ、やがてゆっくりと消え去るのを確認した。


  一方、遠くに控えていた蝕刻の姫は、自らの卑劣な罠がことごとく失敗に終わったのを見て、完全に追い詰められたことを悟った。もはや抵抗する術もなく、背中にある全ての触手は断ち切られ、誇り高かった骨の盾と骨爪も粉々に砕け散ってしまっていた。


  彼女はもはや最後の力を振り絞ることさえできず、胸元にある核心部が弱々しく光を放つばかりとなり、無力なまま地面に膝をついてしまった。


  遠山凛は聖剣を手に、まさにその怪物へと迫ろうとした。しかし、蕭珊雅の動きは彼女よりもさらに素早かった。彼女はこの怪物に再びどんな隙を与えることも、予期せぬ展開を許すことも絶対に嫌だった。そこで、全身に渦巻く彼女の怒りを凝縮した極寒の光線を一気に放ち、怪物の核心部を直撃させた。


  「すべての怪物は、私が倒す!」と蕭珊雅は心の中で叫んだ。


  「カチィィィン……」


  蝕刻の姫は、砕けた赤い宝石ごと完全に凍りつき、瞬く間に巨大な氷像へと姿を変えた。そして、その極寒の力によって、徐々に細かく砕け散り、ついには無数の砂塵となって空に舞い上がった。


  怪物の最期とともに、彼女が張り巡らせていた虚界空間もまた、激しい揺らぎを始め、崩壊寸前へと陥った。空には暗紫色の亀裂が無数に広がり、まるで世界の終わりを告げるかのようだった。


  蕭珊雅はすぐに自分の紋章を使い、現実へと戻るための裂け目を開いた。そして、全員に向かって叫んだ。


  「早く逃げろ!」


  青木紗綾と緒方花音は、その声に従って一斉に裂け目に飛び込み、崩壊しつつある虚界空間から脱出したのだった。



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