暗殺
蕭珊雅が再び目を覚ましたとき、時刻はすでに深夜に差し掛かっていた。彼女は小道の真ん中に横たわっていることに気づき、周囲は静まり返り、ただ風が葉を揺らす音だけが聞こえる。
「おかしい……どうして……?」
彼女はもがくように身を起こしたが、頭はまだぼんやりとしていた。何かを思い出そうとするものの、脳裏には何も浮かばない。やがて、前方に倒れている小禾の姿を見て、農場で彼女と出会ったことがようやく蘇ってきた。
よろめきながら立ち上がり、小禾のもとに駆け寄る。しかし、目の前の光景に、蕭珊雅は思わずその場に座り込んでしまった。小禾の首筋には深い引っ掻き傷があり、血はすでに暗赤色に固まっている。彼女の瞳は開いたままだったが、もう生気はなかった。
「どうして……こんなことに……一体誰が彼女を殺したの?」蕭珊雅は小禾の顔に手を伸ばそうとしたが、自分の手が爪へと変わり、血痕が付着していることに気づいた。
「私……どうしてこんな姿に……?」彼女は自分の爪を見つめ、血だまりに倒れる小禾を見下ろす。すると、恐ろしい考えが頭をよぎった。
「まさか、私が……?」
彼女は慌てて数歩後ずさり、手を引っ込めようとしたが、真相を確かめるため、再び小禾の首筋へと手を伸ばした。そして、その引っ掻き傷に沿ってゆっくりと指を滑らせ、犯人の動きを追おうとする。だが、その傷跡の輪郭は、自分の爪の形と完全に一致していた。
「彼女を殺したのは私だ!本当に、私が……!」
蕭珊雅は勢いよく手を引っこめ、池のほとりへと走った。水面に映る自分の姿を確かめようとしたのだ。すると、全身が暗赤色の血に染まり、両手は恐ろしい鉤爪へと変わり、瞳は血のように赤く染まっていた。
「違う!違うんだ!これは私じゃない!私じゃない!」蕭珊雅はこの現実を受け入れられずにいた。しかし今できることは、誰にも見つかる前に現場から逃げ出すことだけだ。小禾は東へ進めば博望村に出ると教えてくれた。そこには警察署や連防隊がある。ならば今は、逆方向――人気のない場所へと逃げるしかない。
蕭珊雅はよろめきながら西へと走り出した。まるで狼狽えた野獣のように。振り返ることもできない。また小禾の姿を思い出してしまいそうで怖かった。
彼女は次々と田畑を駆け抜け、ついに力尽きて道端に膝をつき、胸は激しく上下し、喉には鉄のような鉄錆の甘酸っぱい味が広がった。
そのとき、遠くの月明かりの下に一人の影が近づいてきた。蕭珊雅は顔を上げ、じわりと迫ってくるその姿を警戒しながら見つめた。月明かりの中でその姿は徐々に鮮明になり、制服を着た彼女は短い髪をきっちりとポニーテールにまとめ、足元には泥だらけのソックスとスニーカーを履いていた。明らかに長い間歩き続けてきた様子だ。
蕭珊雅はすぐにそれが遠山凛であることに気づいた。遠山凛も前方の姿を見て一瞬足を止め、すぐに蕭珊雅だと気づき、急いで歩み寄ってきた。
「蕭珊雅さん?どうしてここにいるの?」
「私は……」蕭珊雅は答えようと口を開いたが、今の自分の姿を思い出し、慌てて両手を背後に隠し、顔を伏せて遠山凛の目を見ることができなかった。
遠山凛は何が起きたのか分からず、さらに数歩進んだ。蕭珊雅はそれを見て、慌てて後ずさった。
「近づかないで!」彼女は大きな声で警告した。
遠山凛はその一喝に驚き、その場で立ち止まった。
「一体何があったの、蕭珊雅さん?」
「近づかないで!あなたを傷つけてしまう!」
遠山凛は蕭珊雅の様子を見て、ますます訳が分からなくなった。
「蕭珊雅さん、落ち着いて。何かあったの?もし話せるなら、教えてほしいの」と遠山凛は優しく言った。
「私は……私は……」蕭珊雅はしどろもどろに口を開いたが、何から話せばいいのか分からない。
「私は……怪物になってしまったの!それが私の体を支配して、小禾を殺したの!今だって、いつまた支配されるか分からないの!」
遠山凛はそれを聞いて笑った。「蕭珊雅さん、あなたは怪物なんかじゃないわ。今の姿も普段と何も変わらないものよ」
「えっ?」遠山凛の言葉に、蕭珊雅は呆然とした。遠山凛はその隙に彼女のそばへと歩み寄り、背後に隠していた両手を引き出した。
「ほら、あなたの手はきれいだし、血痕なんて全くない。あなたが言うような状態じゃないでしょう?」
蕭珊雅は自分の手を見下ろした。白くて清潔なその手には、確かに血痕は一切なかった。彼女はしばらく自分の手を見つめ、続いて服にも目を落とした。泥や草のかけらは付いていたが、やはり血痕はない。
「一体どういうことなの?」彼女は依然として疑問を抱いたままだった。
「もしかしたら、あなたは悪夢を見ただけかもしれない。あまりにリアルな夢だから、現実と夢の区別がつかなくなってしまったのかもね」と遠山凛は言った。
遠山凛の言葉に、蕭珊雅はようやく安堵した。なぜこんなに現実的な悪夢を見てしまったのかは分からないが、今は遠山凛の説明を信じたい気持ちだった。
「そうなの……よかった」重荷が下りた瞬間、蕭珊雅の膝から力が抜け、涙があふれ、そのまま地面に崩れ落ちた。
遠山凛は慌ててしゃがみ込み、彼女の肩をそっと支えた。「大丈夫よ、蕭珊雅さん」
「ありがとう、凛……」蕭珊雅は嗚咽交じりに言った。「私……すごく怖かったの。取り返しのつかないことになってしまうんじゃないかって」
遠山凛は彼女を優しく抱き寄せ、さらに慰めた。「蕭珊雅さん、それはただの悪夢よ。怖がらないで、私がここにいるから」
遠山凛は優しく背中をさすりながら、まるで子どもをあやすように語り続けた。蕭珊雅は彼の胸に寄り添い、少しずつ気持ちが落ち着き、呼吸も穏やかになっていった。
しかし、すぐに違和感に気づいた。凛の体はどうしてこんなに冷たいのだろう?それに、彼女が先ほど聞いた言葉は、記憶にあるあのフレーズとは違っていた。
目の前の存在は凛ではない!蕭珊雅の心は猛然と覚醒した。その瞬間、目の前の「遠山凛」は不気味な笑みを浮かべ、瞳に赤い光を宿し、鋭い牙を覗かせて、蕭珊雅の首筋に噛みつこうとした。
「あなた……凛じゃない!」蕭珊雅は叫び、目の前の「遠山凛」を突き飛ばした。
その勢いで、「遠山凛」の姿は跡形もなく消え去り、蕭珊雅はベッドの上で跳ね起きるように目を覚ました。
彼女はベッドの上で荒い息をつき、額には冷や汗が滲んでいた。あたりを見回すと、自分がベッドに寝ていることに気づいた。眼前では一匹の血蝙蝠が旋回しており、逃げようとしている。蕭珊雅はふと首筋がむず痒くなった気がして触れてみると、浅い咬み痕が残っていた。この血蝙蝠はいつの間にか部屋に侵入し、彼女が眠っている間に一刺ししていったのだ。
そのとき、血蝙蝠は超音波でリビングの位置を特定し、そちらへ逃げ出そうとした。寝室のドアへ向かおうとした瞬間、異変に気づいた魔法書がリビングから飛び出し、彼女を押し戻して床で暴れた。
蕭珊雅は素早くベッドから降り、右手を掲げると、指先から魔法の光線が放たれ、正確に血蝙蝠を撃ち抜いた。血蝙蝠は衝撃で数度痙攣したあと、ぴたりと動かなくなった。蕭珊雅が近づいて詳しく調べると、その翼には細かな呪文が刻まれていた。古代の文字のようだ。彼女がその文字を読み取ろうとした瞬間、血蝙蝠の死骸はたちまち溶けて血の水となり、床に染み込み、かすかな腥臭だけを残した。
蕭珊雅はそれを見て、はっと何かを思い出した。
「この消滅の仕方は、前回路地で襲ってきたあの飛刀と同じだ!」
「でも、一体誰がすべてを操っているの?」蕭珊雅は胸の中の疑問を募らせた。
そのとき、傍らの魔法書が何かを感じ取り、蕭珊雅の机のそばへとやって来た。右側の引き出しの前でうろうろする魔法書に導かれ、蕭珊雅はゆっくりと引き出しを開ける。中にはすでに開封された一通の手紙が静かに収められていた。それは以前受け取った謎の手紙だった。
蕭珊雅は手紙を取り上げ、表側を確認したが、封筒の文字はどこかへ消え去り、ただの空白が残っていた。さらに中身の便箋も同様に文字が跡形もなく消えていた。
「どうして文字が消えてしまったの?」蕭珊雅は困惑した。
そのとき、彼女は机の上に置かれた封筒の裏面に刻まれた蝋印の蝙蝠の模様に気づいた。その赤い蝙蝠は、先ほどの血蝙蝠とよく似ていた。そして、以前の手紙の署名欄にも同じ蝙蝠が描かれていたことを思い出す。
「もしかして、この手紙は私を狙った暗殺なのか?そもそもこれが巧妙に仕組まれた罠だったの?」蕭珊雅は背筋が凍る思いだった。
彼女は急いで引き出しの中からライターを取り出し、封筒ごと手紙に火をつけ、窓の外へ投げ捨てた。夜空を舞いながら、炎に包まれた手紙はやがて灰となって地上へと落ちていった。
手紙が完全に消え去るのを見届け、蕭珊雅はようやく安心して窓を閉めた。彼女は再びベッドに戻り、部屋の隅々まで警戒しながら見渡し、異常がないことを確認すると、宙に浮かぶ魔法書を手に取り、ページを開いた。
「確か、このあたりだったはず……」と蕭珊雅は独りごちながらページをめくっていく。
ほどなくして目的のページを見つけた。そこにはいくつかの魔法が記されていた。彼女は内容をじっくりと読み進めていき、やがて「偵察守衛」を召喚する魔法の一行に目が留まった。
「この魔法は初めて使うから、うまくいくといいんだけどね」
そう言って、蕭珊雅は机の上の文具や本、ノートパソコンを片付け、ページに記された呪文を低く唱え始めた。すると、机の中央に淡い青色の魔法陣が浮かび上がり、その光が安定すると、陣の中から半透明の光球がゆっくりと立ち上がった。やがて、小さなフクロウの姿をした偵察守衛が結晶化する。
蕭珊雅が手のひらを差し出すと、フクロウの姿をした偵察守衛は軽やかにその上へと飛び乗り、くりっとした瞳で彼女を見つめた。
「今夜は頼むよ」と蕭珊雅は言った。
フクロウは命令を受け取ると、かすかな「クークー」という鳴き声を発し、翼を広げて部屋の中で最適な監視ポイントを探し始めた。まずはカーテンレールにとまり、しばらく様子を伺い、次に羽ばたいてタンスの天板へと移動し、最後にベッドサイドのナイトライトの上に腰を下ろした。
蕭珊雅はフクロウの守衛が落ち着いたのを見て、ようやく心が安らいだ。彼女は魔法書を閉じて引き出しにしまい、ベッドに戻って布団を被り、再び目を閉じて眠りについた。




