ヴーク 其の二
ミダの工房は歯医者の待合室のようだった。
明るすぎて、消毒薬の匂いが鼻につく。だが、どれだけ洗っても落ちない染みもある。ヴークはそれをすべて知っていた――白いタイルに残る、あらゆる黒ずみを。
部屋の中央にある椅子は、本来は患者のためのものだ。だが実際には、ほとんどがタトゥーの施術に使われている。ヴークが来たときだけ、それは歯科用の椅子になる。
そして、ヴークのときにだけ、ミダは「歯科医」としての腕を本気で使うのだった。
ミダは自分の名前が嫌いだった。子どもの頃、父に別の名で呼んでほしいと頼んだことがある――「ダイダロス」とか、もっと大仰な名前で。だが彼らの共同体では、名前はそうやって簡単に選べるものではなかった。ある年齢に達するまでは、子どもはほとんど名前すら与えられず、「誰それの息子」と呼ばれるだけだった。
彼は奇妙な装置に囲まれて育った。スイッチや機械、果ては偽の永久機関のようなものまで。かつての夢の残骸。彼は発明家になりたかったのだ。
だが今は、つまらない現実を受け入れていたようだった。名前は人を高みへと引き上げるものではなく、むしろ、その人間を剥き出しにし、自分が何者であるかと向き合わせるものだと。
ヴークはミダの父のことをぼんやりと覚えている。痩せて頑固な男で、最後の最後まで病に屈することを拒んでいた。
「また、してしまった」ヴークは言った。
ミダは彼を見て、わずかに落胆したような表情を浮かべた。
頭上を列車が通り、工房全体が揺れた。幾重にも重なる高架の下――誰も探そうともしない場所に、それは隠されていた。
ミダの表情はほとんど変わらない。ほんの一瞬、片眉が下がり、それからまた穏やかな笑みに戻る。
年齢はヴークより数歳上なだけだが、その差はずっと大きく感じられた。ミダはいつも自分を制御しているように見え、ヴークはいつも失態をした側にいるように感じていた。
この関係は、ずっと昔に家同士で決められていた。ミダの前は、その父がヴークを「診て」いたのだ。
「座って」とミダは言った。
肘掛けにこびりついたパンくずや乾いた唾液を払い落とす。
部屋は雑多なもので溢れていた。ラバランプ、古い写真、スプーン、見慣れない小袋、さらには衣類まで。どれも本質から目を逸らさせ、彼が本当に使う道具を隠すための、目くらましのように思えた。
ミダは奇妙なフレームにぶら下がった小さな金属の輪を手に取り、それをヴークの顎の接合部に押し当てた。
いつもの音がする。
骨が金属を擦る音。
ヴークの下顎は本物ではない。置き換えられているのだ。皮膚のおかげで外からは気づかれにくいが、内側は明らかに異様だった。歯は鋭すぎる角度で並び、噛むたびにかすかな不自然な音が鳴る。
だから彼は、人前で食べることを避けていた。
ミダはそれに慣れることがなかった。診るたびに、その目にはどこか魅入られたような色が浮かぶ。時間だけが、その恐ろしさを和らげ、ヴークの顔をほとんど普通のものに見せていた。
上の構造物がまた揺れ、灯りが一瞬ちらつく。
彼らの共同体だと、普通なら、この種の症状は人生の終盤に現れるものだ――もはや何も差し出すものが残っていないときに。だがヴークの顎は、六歳のときに壊れた。
どうしてかは覚えていない。
というより、彼の幼少期の記憶はほとんど欠け落ちている。断片ばかりで、それを繋ぐ筋がない。
病院のベッド。
医師が、ヴークをなだめるために、「私のことを赤ずきんと思え!」と言ったこと。緑の服を着ていたくせに。
触れてはならない場所に触れる冷たい空気。
両親の顔――悲嘆と、どこか罪悪感のようなものに引きつっていた。涙はなかった。ただ、今にも泣き出しそうな張りつめた緊張だけがあった。
「客は何て言ってる?」ヴークは、部屋の奇妙な装置の一つに目をやりながら言った。
「何も」ミダは答えた。「飾りだと思ってる」
「こんなガラクタばかり増やしてたらな……」
ミダは微笑んだ。
長い黒髪が肩に落ちる。身を乗り出し、骨と金属の接点を指で確かめる。彼には一つ、子どもの頃からの癖が残っていた――役に立たない奇妙なものを、自分の美意識に合う限り集めるという癖だ。
そのタトゥーも同じだった。見ていると、終わりのない循環に囚われるような感覚になる――どこまでも続く階段のように。
「今は何て名乗ってる?」ヴークが尋ねた。
「デヤンが多いかな。マリンは目立ちすぎた。ある大臣が娼婦をここに送りつけてきてさ。引っ越す羽目になった」
彼はノミのような道具を手に取る。金属に触れると、かすかに火花が散った。
皮膚と筋肉の抵抗を探りながら、体が内部の金属を拒絶しないように、慎重に作業を進める。背後の棚には、失敗作が並んでいた――古い義顎、うまくいかなかった実験の残骸。
根本的な解決には、何一つなっていない。
ただ他人の血だけが助けになる。関節を覆い、動きを滑らかにする。
「だから言ってるだろう」ミダは低く言った。「感じたら、すぐ来いって」
その目には、苛立ちだけではない何かが宿っていた。
「それが問題なんだ」ヴークは言った。「だんだん感じなくなってる。いつ来るのか分からない。前は、一日か二日は余裕があった。今は……」
無意識に顎に力が入る。ミダはすぐに手袋をはめた手でそれを押さえ、緩めさせた。
「このままじゃ、もたないぞ」
ヴークにもわかっていた。
彼は振り返らず、ただ前へ進むように生きていた。顎が何度修復をされても、それはただ避けられない終わりを先延ばしにするだけだった。
ミダの処置のあとには、必ず熱が出る。それも回を追うごとにひどくなっていく。
彼には、根本的な治療法などない。
それなのに、なんという皮肉な名前を、親はつけたのだ。
「ヴーク」。狼。
あまりにもしっくりきすぎる名。暴力の象徴。突然の死をもたらす存在。社会が抑え込もうとするもの。
彼は他者を喰らうことで生き延びている。
そしてそのたびに、自分自身の破滅へと近づいていく。
だが、やめることはできない。
ある意味では、誰もがそうなのかもしれない、と彼は思う。少しずつ自分を壊していく。意識的であれ無意識であれ、時間や肉体を通して。少なくとも自分は、それを自覚している。
だがミダは、決して諦めなかった。
「顎顔面外科っていうのがある」彼は言った。「顔そのものを作り替えることだってできるんだ。お前だって、救えるかもしれない」
汗のしずくが一つ、彼の顔から落ちて、ヴークにかけられた布に染みた。
「またあいつらの本を読んでるのか」ヴークは言った。
近くに積まれた、粗末に綴じられたコピー本に目をやる。
「言っただろ。あいつらに顎を触らせる気はない」
「触らせる必要はない」ミダは言った。「俺がやる」
ほとんど勝ち誇ったように笑う。
「どうやって? 道具も薬も全部盗むつもりか。それにもう目をつけられてるんだろ。現実を見ろよ」
「現実を見てないのはお前だ」ミダは言った。「こんな死に方をするはずの人間じゃない」
「連中の科学に毒されすぎだ」
「その科学は、お前が思ってるより先まで行ってる」
「月に行ったなんて、いまだに信じてない」
「もっと本を読め」
ミダは楽しんでいた。ヴークが椅子に縛りつけられているこの時間は、彼にとって優位に立てる数少ない瞬間だった。何年も前から、彼をこちら側に引き込もうとしている。
「なんでそこまで気にする」ヴークは言った。「“俺たち”とか“あいつら”とか。お前にはもう関係ないと思ってた」
父親のせいで、ミダは昔から、同族の中ですら異端だった。最初はそれを憎んでいたが、やがて受け入れた。
それが、二人を結びつけた理由の一つでもあった。
ヴークは病によって印をつけられている。彼らの共同体の人間――普通の生を重んじない者たちでさえ、距離を置いた。恐れているのだ。彼が自滅するのを、待ちながら見ている。
「だが、方法はある」ミダはついに言った。
彼は血をヴークの顎に塗りつけ、ヴークには理解できない言葉で何かを呟いた。
ヴークの病気の結末が一つしかないという事実を、どうしても受け入れようとしなかった。
彼が立ち去るのを、ミダは読み取れない表情のまま見送っていた。




