3−26.尖鉄都市、発見される
聖都アラスラクト。
東門街区の一神教施設。
特別司祭の執務室には、司祭らしからぬ風貌の男がいた。
分厚い筋肉のせいではち切れそうな法衣。
厳しく角張った顔つき。
何者をもくびり殺しそうな岩の手。
顔も手も大小様々な傷だらけ。
法衣で覆われていない部分は見えないが、恐らく他の部分と同じだろう。
暗い執務室の中で苛立ちながら待つ、その男。
ジノス・ギア。
一神教の中でも特殊な役職である特別司祭の一人である。
「ーーーー来たか」
ジノスのつぶやきとともに、彼の部下である配達人が入室してくる。
竜を模した仮面をつけた竜操人、いわゆる処刑配達人である。
「…奴らを見つけました」
彼らはジノスの性格をよく知っており、前置きもなく結果を告げる。
即ち、尖鉄都市グリムソルガを発見した、と。
それを聞いたジノスは表情ひとつ変えず、次の命令を下す。
「では、殲滅の仕度をせよ」
怒りに燃える。
ジノスを端的に表すとそうなる。
表面からは中々見えないが、ジノスはそういう男である。
少し前にカルシャが東門街区で騒動を起こして以来、このジノスという男は、自らの奉ずる神に仇なす存在である魔王アーデカルシャを討つべく、その拠点を探していたのだ。
「規模は最大。2日後に進軍する」
それを見つけたからには、後は行動するのみ。
ジノスの配下には、非転生者の僧兵と処刑配達人、改造された狂信者たち、そして新たな兵器・模造聖遺骸・量産がいる。
魔王アーデカルシャは、新興の魔王だ。
手勢も少なく、魔術の習得も無い。
叩くならば早いほうが良い。
僧兵はともかくとして、処刑配達人と狂信者、及び変質した地虫ならば、配下程度には十分だ。
本丸の魔王本人とて、部隊化された模造聖遺骸・量産ならば殺せる。
手段はあるのだ。
それならば討つべきだ。
同じく特別司祭であるエストは放置で良いと判断したようだが、ジノスの頭には魔王の殲滅しかなかった。
ジノスの考える通り、ウェアウルフでは地虫には勝てず、ケイオスビーストでは大量生産された模造聖遺骸・量産には数で負ける。
魔王と直属の臣下に関しても、数でかかれば問題ない。
新興魔王が生きながらえたのは、単に見つかりにくかっただけだからだ。
だが、今はもう見つかった。
神のため、理想のため、特別司祭の役を与えられたジノスは燃え上がる。
「ーーーー魔王は討ち滅ぼす。それが我が身に与えられた存在意義」
歴史は繰り返す。
魔王を駆逐してきた一神教は、また一つ、魔王を討滅しようとする。
人間の刃は今まさに、魔王の喉元に突きつけられつつあった。
*
「ツワブキ様!敵です!」
ツワブキが見張り役から報告を受けたのは、僧兵の軍勢がグリムソルガに近づきつつある頃だった。
人の行軍で半日ほどの距離。
見張り役でその4分の1程度の時間の距離。
迎撃を準備する時間はある。
ツワブキはすぐに臨戦態勢を指示、他の幹部たちを招集する。
一神教の軍勢は、カルシャ不在のグリムソルガに刻一刻と近付きつつあった。
*
刻限、遂に至る。
グリムソルガの城壁から視認出来る一神教の軍勢。
多数の僧兵にその10分の1程度のゴーレム。
対して、グリムソルガ側は戦闘人員で役70名。
転生者が30人、ケイオスビーストが10体、残りがウェアウルフの戦士たちだ。
そこに幹部たちーツワブキ、レイジ、グレインの三人、副官として筋肉ダルマ・リンドウと柔道熊・リョウが武装して立つ。
戦力差、数で見て10倍以上。
僧兵の実力は大した事もないが、それでもかなりの差だ。
それでも、ケイオスビーストや転生者のおかげで戦力差は埋まっている。
戦いの火蓋は切って落とされた。
後書きウサギ小話
シリアス回、編
「儂、こういう回って出番ないんよね」
「そりゃそうでしょうよ、この場に居ないんだもの」
「いや、そもそもこの空気感に耐えられないんや」
「まぁ、いつもボケ倒すからね」
「ボケたくて、ウズウズしちゃう・・・!」
圧倒的ギャグ要員!
完!




