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3−25.最弱ウサギさん、改造三昧

肉を焼く。


そして肉を焼く。


雄牛の肉はなんとも絶品だった。


解体と準備、改造に食事。


牛と襲撃者の素材はどちらも変わった性能を与える素材だったので、どのように改造するか少し悩んだ。


しかしそれも少しの事。


自分とエリス、エイリちゃんの改造を終えて、今はひたすら肉を食らっているのである。


「いい食べっぷりねぇ…」


カルシャの前には肉のかたまり。


ギフトの炎で適度にミディアム、持ち込んだ岩塩が味を引き立てる。


「改造すると身体中のエネルギー使うのよ。正直食事じゃ補給が追いつかないくらいだわ」


食らいつつも喋る。


「特に今回は色々やりましたもんね」


「試してないのに、強い力が宿ったのを感じるっす」


同じく食べながら会話するワンココンビに比べても、カルシャの消費は凄まじい。


「ちなみに何をどうしたのか教えて貰っても?」


一番普通の食事量をつつくライナに問われ、カルシャは肉を口に運ぶ動作を止めた。


「…復讐されそうな奴に手の内晒せって?」


ライナは薄く笑うだけである。


「ま、それもそうね」


どちらでも関係ないと考えているのかなんなのか。


まぁ、改造内容は素材から推測出来る。


「…良いわよ、どうせ素材はバレてるし」


隠す必要もないだろう。


今回の改造内容はあくまでも補助に過ぎないし。


「カルシャ姉、太っ腹っすね」


エリスが言うほど有益でもないだろう。


っていうか、アンタいつのまにそんなに食べたの?


「そういうアンタは太鼓腹になってるわよ」


ぽっこーんと膨らんだエリスのお腹。


「事実だけどしどい!一応乙女なんですけど!」


抗議した直後にもゲフッなんて乙女らしくもない効果音だしちゃってまあ。


「(食い意地張った駄犬に乙女を語る資格は)ないです」


エイリちゃんの鋭利なツッコミで一刀両断である。


エイリちゃんもだいぶ食べているはずだが、こちらは外見に変化はない。


「くっ!狂犬にも罵倒されたけど、お腹が重くて動けないっす…!」


エリスはすでに置き物状態。


三人の呆れた視線を受けてもノーガード(キャントガードかもしれないが)だった。


(やっぱりアホの子だわ/ね/です)


さて、本題に戻ろうか。


「で、改造内容は?」


ライナに尋ねられ、カルシャは改造内容を明かす。


「まずエイリちゃんだけど」


「はぁい!」


先程までは茶色だった瞳は、既に色が変わっている。


「エイリちゃんには精神汚染効果のある雄牛の毛皮を使って魔眼だけ付与したわ」


雄牛の白い毛皮には、見たものに恐怖を与える効果があった。


「《恐慌の魔眼(フィアーゲイズ)》ですねー」


今やその瞳は紫色だ。


その毛皮を使って得た魔眼もまた、それに準じた効果を持つ。


常時発動型で、エイリちゃんの向ける敵意や害位の量に応じて恐怖を引き起こす。


「エイリちゃんには人間の姿のまま頑張ってもらうからそのつもりでよろしくね」


中身は既に上位者だが、姿形は人間そのままの方が色々と都合が良い。都市や遺跡は圧倒的に人間向けだし、装備などもそうだからだ。


「了解です、お姉さま♡」


この娘はなんなく使いこなすようになるだろう。


カルシャは視線を移した。


「次にエリス。アンタは既に改造済みで悩んだわ」


水竜などの素材であるためにひとつひとつは微力だが、エリスは満遍なく死ににくい改造を施されている。


「今でも骨格強化に外皮強化、魔眼、身体強化系諸々、属性防御、速度増加とか色々ついてるっすもんね」


総合力が底上げされており、ミスって死ぬ事が無いようにしようと考えたらこうなった。


「ものすごい改造人間、もとい改造ウルフじゃない…」


「えっへん」


褒めてねえ。


「多分褒めてないですぅ」


勝手に死なれたら困るからだよ、この駄犬め。


「アンタは雄牛とおなじで、敵対者の恐怖を煽る毛皮に改造したわ」


だから、結局エリスはそういう方向の延長にした。


「《恐怖の象徴(フィアーアイコン)》っすね」


エイリちゃんの魔眼と同じ効果だが、こちらの方が射程が短い。


その分効果は強いので、迎撃や強襲対策には適している。


「あとは、既存の骨格強化を、あの鎌の素材でさらに強化した」


「そっちは骨格強化から神造骨格に変わったっすね」


モンスターとしては雄牛と同格と言うことだ。


…普段の言動のせいで全くそんな風には見えないが。


「で、最後に私だけど」


私の改造は地味だ。


「私は主に神経増設と体内電荷制御器官を付与したわ」


普段使わない予備神経と、それを制御する第二の脳、のようなもの。


「貴女、自分の身体になかなかえげつない事するわね…」


具体的にどこにどのように増設されたかは言及しないけど、流石に痛みが無かったとは言わないわ。


改造のギフトに痛覚軽減がなかったら、かなりの苦痛だったでしょうね。


「えっと、何をどうしたんすか?」


エリスは改造内容含め理解出来ていないようだった。


「身体をギフトで動かす、みたいな感じですか?」


エイリちゃんの方はライナの言葉でだいたい察したらしい。


「だいたいそんな感じよ」


この改造の肝は、行動不能と限界突破にある。


「毒や麻痺で動けなくなっても、改造で作った神経や制御能力はギフト寄りだから影響がない。あとは身体の限界を意思だけで越えられる」


予備神経は毒や麻痺の効果をうけない。


ギフトによる行動阻害は受けるかもしれないが、それでも行動不能を回避しやすくなるのは確かだし、逃げるにも攻めるにも意表をつける。


「カルシャ姉、意外と根性論好きっすよね」


「死にたくないだけよ」


これは言わば保険だ。


エリスは根性論というが、死んでも死にたくないだけである。


「流石お姉さま、生き汚い」


エイリちゃんの言葉は褒め言葉として受け取っておこう。


「よく訓練された臣下たちじゃない」


「うっさいわね」


半笑いをやめろ、エセ聖女め。


「ところで、気になってたんだけど、ソレは?」


「あぁ…コレはステルス触手が持ってたのよ」


そう言って指差すのは、カルシャが脇に置いた一冊の本。


「魔導書?」


見た目は遺跡の取説に似ているが、表紙に刻まれた文字はこの世界のものではなく、転生者であるエイリちゃんやゲッコウにも読めないものだった。


「かもね。でも開けられない」


錠前もないのに開かない。


ギフトによって封印されているのかもしれない。


わかるのはその表紙に、星のような印と得体の知れない何者かが描かれていると言うことだけだ。


「そう…。ま、開かないものを気にしても仕方ないか」





アデルカ御陵。


最奥部、石櫃の間。


「ここが魔術師アデルカの墓…」


雄牛の後はなんの防衛機構もなく、カルシャたちは墓所の扉を開いた。


内部は荒らされる事なく保たれており、空気は淀んでわずかに黴の臭いがした。


「どうやら目的地に着いたみたいね」


広々とした部屋の中。


その中央には石櫃。


大人二人がゆうに入れるであろうサイズだ。


その蓋はきれいに閉められており、継ぎ目は漆喰かなにかで塗り固められていることから、今まで開けられたことはないのだろう。


「周りもすごいっすね…」


「大量の本棚、それとよくわからない素材?みたいなのが並んでますね」


エリスとエイリちゃんの言うとおり、石櫃以外は大量の本棚と作業台、諸々の実験道具(?)で埋め尽くされている。


ここは墓ではないのだろうか。


それとも、死後にも魔術師としてやっていけるように備えられた副葬品なのか?


疑問は尽きないが。


「とりあえず周囲のものから確認しましょうか」


ライナの提案に従って、各々本棚の中身や実験道具から見て回る。


「…物量がすごいな。でもまぁ、魔術の手がかりでも掴めりゃ御の字ね」


カルシャも同じように本棚を漁る。


本棚の中身は、殆どが異世界文字で書かれたものだった。

先程襲撃者がもっていた魔導書のように開けないものや、物理的に封印ー鎖やベルトで巻かれているーものも散見される。


黴と埃。


湿気った匂いがカルシャを誘う。


相当な年月、この空間は固定されたままで存在していたのだろう。


センテの街立図書館と同じ、とまではいかないものの、カルシャには馴染み深い雰囲気かもしれない。


ふぅむ…。


読めないやつが多すぎてだめね。


タイトルもないから、引き出して見ては戻すの繰り返し。


そんな時間がしばらく過ぎた頃。


「お?これは読めるわね…」


表紙をめくる。


黴と湿気のせいで、表紙とともに数枚が同時にめくれた。


タイトルが知りたい訳ではないから別にいい。


ちょうど章の始まりなのか、表題が太文字になっている。



「ーーーーーーーーーー《深淵覗き込む螺旋門(リ・イニシエーション)》」



それを読んだ瞬間。


深淵覗き込む螺旋門(アハハハハハハ)


嘲笑がカルシャの頭の中に響き渡った。


そして、意識が急速に闇に飲み込まれていく。


「カルシャ姉?!」

「お姉さま…!」

「ちょっと、どうしたのよ!?」


霞に消えゆく意識と三人の声。


声が消えた時。


カルシャは闇に飲まれていた。

後書きウサギ小話

物見遊山?編



「ここが魔術師アデルカの墓…」


「よぅし!記念撮影するっすよ!」


「並んで下さーい」


「皆でピースする?」


「観光地か!」


女子校修学旅行!


完!


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