↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/33

25 怠惰な家畜の悲恋と獣たちの快楽


 恋凪円花は当時学園で五本の指に入る美少女である。


 恥ずかしがり屋で対人能力が低いが、小柄ながら顔は良く、小動物のようないじめてオーラと純愛で清純な性格。その魅力に男子中学生たちから「妹にしたい」「涙目の恋凪ちゃんを見てみたい」「恋人になったら体育館裏で……」などいろんな意味で注目の的であった。


 そんな彼女はなぜか岡崎麟之助に付きまとうようになった。


 理由は助けたお礼がしたいからというもの。


 これには岡崎麟之助は困惑した。彼にとってはあくまで、目の前に危険な目に合いそうになった者を助けたには過ぎない。

 なので恩返しの必要はない、と岡崎麟之助は一度断った。

 けれでも円花は彼の後ろを追いかけつづけた。


 恥ずかしがり屋で若干男性が苦手な彼女が頑なに自分に寄り添うことに岡崎麟之助は理解しがたいことであった。

 が、怠惰な彼はすぐさま冷静さを取り戻し、放置することにした。

 これ以上、彼女に関わることは面倒だと判断した結果だ。


 それかというもの、恋凪円花は岡崎麟之助の傍に居続けた。

 学校に出会えば、彼には雑談などで話しかけたり。

 食事を取ろうとすると一緒に食事をしたり。

 雑用をしていたら当番でもないのに自ら雑用を手伝ってり。

 不良に絡まれたときは怯えならも彼をかばったり。



 一見ストーカーのように見えたが、岡崎麟之助はいずれ飽きるだろうと高を括っていた。

 それでも岡崎麟之助の激務を共にこなし、疲労があっても常に彼に笑顔を向け続けた。

 それから、何日も、何か月も、彼女は岡崎麟之助に離れず、彼女を助けた日から半年が過ぎた頃、彼の心情に変化が起きた。

 

――『……クッキー。昨日焼いた残りだが食うか?』

――『あ、はい。いただきます……』


 ほぼ、無関心を貫いてきた岡崎麟之助は恋凪円花に話しかけたのだ。

 それは機械仕掛けの彼らしくもない、彼女の心身を心配しての情であった。

 以降、二人は学校だけでなく私生活でも交流するようになり、いつしか互いに信じあえる大切なパートナーになっていた。

 むしろ岡崎麟之助はすこしだけ恋凪円花に対し特別扱いしていた。


 のちにそれが恋心という感情だと理解するも、今の彼には自覚はなかった。


 なぜなら恋凪円花には当時付き合っていた彼氏がいた。


 彼氏は彼女と同じく学校においてナンバーワンのイケメンであり、文武両道、家は金持ちで、探偵のようにあらゆる事件に巻き込まれてはそれを解決してきたという、まるでゲームの主人公のような王道を歩む人物であった。

 そして、多くの女性と関係を持ち、ハーレムを築いていた。

 恋凪円花もそのハーレムの一員である。

 なんでも、ギャルゲーみたく攻略されて恋人になったと、彼女本人の口から語る。


 ゆえに、恋凪円花をナンパする男がいない。

 ちょっかいをかければ、主人公彼氏にボコられるからだ。


 だからこそ、岡崎麟之助は彼女を話さなかった。異性としてみなかった。

 彼氏の報復を恐れたのではない。ただ、自分の怠惰(へいおん)を守りたかったために、彼女との青春(こい)に目を背けた。


 彼女は他人の所有物であり、略奪愛はやってはいけないこと。


 なにより、こんなつまらない男のために身を尽くすなど間違っている。


 そう自分に言い聞かせた。

 だったのに――

 


――『私、岡崎君のことが好きです!』


 彼女の告白に岡崎麟之助の歯車(こころ)が軋む。


――『最初はあなたに恩返しをしたくて、あなたの傍にいましたが、献身に人助けをするあなたを見ているうちに……他人に道具のように使われるあなたを見ているうちに、憐憫を超えて好意を抱くようになりました』


 まるで己の真意を見抜いたような目で語る彼女。


――『今付き合っている彼氏とは別れます。こんなこという自分が最低な女なの十分承知です。ですが、これ以上、あなたに対する感情を抑えることができません!』


 いままで人見知りな少女であったとは思えないほど、自身の感情を暴露する彼女。

 そして、伝わってくる自身への好意。


――『おねがいします。どうか私と結婚前提の恋人同士になってください。そして、これを最後に誰かのために自身を犠牲にしないでください。自身の意思を放棄しないでください』


 それはまるで岡崎麟之助の人生を否定する言葉の弾丸。


――『あなたの人生はあなたのモノです! 社会の家畜にならなくていいんです! 機械仕掛けの人形にはなれないんです! なぜならあなたは我儘な生き物(にんげんさま)です。好きに生きてもいいんです!』


 それはまるで岡崎麟之助は人間であると証明する道徳の首輪。


――『岡崎さん、私は、あなたと一緒に“人”として歩みたいです』


 彼女の想いが、岡崎麟之助の過去(じょうしき)(こわ)す。

 歯車(こころ)弾丸(あいじょう)で射抜かれ、家畜(くび)人間性(くびわ)を付けられたのだ。


 ゆえに、想像してしまった。


 彼女との人生を。


 機械仕掛けの人形でも、怠惰な家畜でもない、人として歩む幸せな人生を。


 そんな未来への希望を抱いてしまうのだが、



――『……すこし、考えさせて』


 岡崎麟之助は己の怠惰(へいおん)のため、逃げる選択をした。

 おそらく、一時的な感情によるものだ。

 時間が立てばお互い元の関係に戻るだろう。

 そう、信じていた。



 告白から翌日、恋凪円花は帰らぬ人となった。

 死因は主人公彼氏により横断歩道橋からの突き落としによる転落死。

 動機は、岡崎麟之助との浮気と自分を捨てたことに対する嫉妬と怒りであった。


 こうして、岡崎麟之助と恋凪円花の恋愛は残念な結末で幕を下ろした。



 ■■■■



「とまぁ、こんなことがあって以降、恋愛だけは絶対にしないって決めたんだ」

「「……」」


 説明し終えると花娘は「うわぁ……」と重たい空気のあまり口角を引きずって唖然。

 犬娘は無表情のまま俺を見つめていた。


「……何と言いますか、ピュアと思えたら中身はドロドロですわね」

「否定できないのが辛いな、ほんと……」


 初めての初恋が昼ドラ展開で、最後は悲恋という報われない物語に我ながら痛感する。

 性格がねじ曲がった花娘すら苦笑気味だ。さすがの彼女も俺の初恋の結末は予想外だったらしい。


「……オーズ」


 さっきから沈黙していた犬娘が言葉を発した。


「ん? なんだ姉よ」

「……オーズは、まだその娘のこと愛してる?」

「…………」


 その卑怯な質問に俺は途端、口を閉ざす。


 恋凪円花を未だ愛しているか?


 そう問いかけられたら、俺ははっきりと答えることができなかった。


 一度、彼女に恋心を抱いたことはあった。

 それなに、俺は彼女の好意を拒んでしまい……死なせてしまった。

 彼女への愛を受け入れなかった俺に彼女を愛する資格はないだろう。

 ――ないはずなのに……


「……そうかもしれないな」


 認めたくないが、俺は未だに恋凪円花ことを好きでいた。

 彼女が彼氏に殺された後、俺の人生は変わった。


 思考を放棄した機械仕掛けの家畜だったのに、今では自由奔放で傍若無人な家畜となった。


 周囲からの命令を無視し、飄々と動き続ける欠陥機械。

 自身の未来を放棄し、今の快楽を貪るケダモノ。


 人としてダメ人間と呼ばれたが、機械として歩んでいた俺にとっては人間らしい生き方だと思った。


「――とはいえ、あの娘がいう“人”としての人生は手に入らなかったけど」


 結局のところ、俺は平穏というなの怠惰を最後まで手放さなかった。というより手放すことができなった。

 俺は彼女との幸せな未来より、怠惰な現在(へいおん)を選択した。

 ならば、最後までその選択を貫こう。


 それこそ、俺の意思の証明であり、彼女を殺してしまった俺への罪の証。


 でなければ、俺はなんのために生きテイルノカワカラナクナッテシマウ。


「そういうわけだから、お前らの愛情は受けめられないんだ。ごめん」

「……わかった」


 犬娘はこっくりと頷く。

 ふぅ、分かってくれて幸い――って、なんで顔を近づけているんですか姉よ。


「オーズ……」

「ちょ、顔が近い」――


 ぶっちゅぅううううううううう!!!


「むっぐ!?」

「ぢゅうるぶぅぢゅ……」


 犬娘の口が俺の口を凌辱――つまりディープキッスした。

 犬の舌が俺の舌と口内を舐めまわし、涎がぐちゅぐちゅと音を立てて隙間からこぼれだす。

 

 咄嗟の行動に硬直してしまい、押し返すことができずただ受け身をとるしかなかった。


 一分くらいたつと、犬娘は俺の口から離れる。すると涎の端が出来上がり、すぐさま切れる。なんとも卑猥だろうか――じゃなくてっ!?

 


「ぷっは!? 犬娘、おまえなにを――」

「ようするにオーズは想い人を死なせてしまった罪悪感から私たちを愛せない。だったら――」


 犬娘が立ち上がると、着ていたスケスケのネグリジェを脱ぎ捨てる。

 コボルドであるため、全身が毛深いがグラビアアイドル以上のプロポーションである裸体を実に美しく、性的に興奮するだろう。

 しかし、俺を見下ろす光が無い瞳と荒い息使いが俺の性的興奮を霧散させた。


 というか、まじで怖いだけど。


 例えるならレイプ魔に襲われそうになる女子高生の心境。

 もしくは、年上の痴女に襲われるショタの気持ち。

 イメージ的には後者だな、うん。


「私があなたの一番になれば、その娘への愛情を奪えるだけでなく、あなたは罪から解放される。同時に、私も幸せになって一石三鳥。我ながら名案」

「なにその暴論!? 名案というより迷案なんですけど!? って、ラウラさん? なにさりげなく人の服脱がしてるわけ!?」

「ぎっししし、あなたさま、ひとついいこと教えてあげましょう」


 触手で俺の服を脱がす花娘。

 彼女は愉悦な笑みを浮かべなら俺の耳元でささやく。


「女の子は障害があればあるほど恋に燃える生き物なのですわ」


 ――“たとえ、略奪愛と蔑まれようとも、ね”




 ■■■■




 窓から差し込む朝日を浴びながら俺を目を覚まし起き上がる。


「…………やってしまった」


 右には布団の中に包まって寝ている犬娘。

 まるで布団にもぐりこんだ子犬みたいで可愛い。


 左には緑の裸体を晒し、俺の手を掴んだまま眠る花娘。

 下半身が触手だがロリ巨乳の上半身が淫らでエロい。


 そして、周囲には息を荒くして、床の上で気絶している全裸の雌犬たち。

 彼女たちの濃密な色気と獣臭さに俺の息子がビンビンだ。


「童貞卒業ですぐに乱交って、エロゲーかよ。しかも、ジャンルがケモナーってマニアックすぎるだろ、おい。オタクどもが知ったら妬まれそうだよ、ほんと」


 夢であってほしいと願うも、小屋中にこびりついた白濁した液体に透明な液体、そして、血痕が現実を物語っていた。

 ばっちり、朝チュンである。


「……うぅん、オーズ、おはよう」


 俺が放心していると布団がうごめき、中から犬娘が出てきた。


「あぁ、おはよう、義姉よ。少女から大人になった気分はどうですかこのや……ろ……」

「ふはぁ~~、どうしましたかあなたさ……ま……はっ?」


 犬娘を見た瞬間、俺と起き上がった花娘は同時に硬直し、唖然した。

 なぜなら――


「「義姉/シャルロットさんが人間になってるぅぅうううううううう!?」」

「……へ?」


 そこにはいたのは首をかしげるいつもの犬頭の義姉ではなく“獣耳の美女”だった。


 一体、どういうことだこれッ!?


 どうも、作者ことアダム三世です。

 今回はあとがきの場所を借りて今回の話についてすこし捕捉させていただきます。

 まず、冒頭である主人公の失恋についてですか、初恋の少女が死んだことにより恋愛に対するトラウマができてしまいましたが、実のところ彼の話にはまだ続きがあり、今の主人公の人格を形成するエピソードがあるのですが長くなるので省略しました。

 まぁ、不本意で寝取りをした主人公にも原因がありますが、それで初恋の人を殺されて、はい終わりとかそんな簡単にはいきませんよねー(笑)。

 彼の失恋の続きは後々の物語で明かされていきます。あと、今回登場した恋凪円花とその彼氏、ついでにハーレムたちも登場させる予定です。ネタバレ防止のため今は言いませんが、主人公たちと絡めていく予定です。踏みたいキャラ50%、重要人物50%で。

 そして、オチとして犬娘ことシャルロットが人間(獣耳)になったことについては次回、説明していくのでみなさま期待してくださいませ。

 それでは次回、お会いしましょう。グットラック!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。