田中井薫の密かな愉しみ
今回は視点を少し変えて、所沢駅前店の受付・レセプトを担当する事務リーダー、田中井薫の視点をお届けします!
イケメンたちに囲まれながら、本人はまったく自覚なしで尊いリアクションを繰り返す天音ちゃんを、特等席で温かく(かつ面白がって)見守る田中井さん。
ツンデレエリア長をサラリと言い負かす大人の余裕と、最強の読者目線をお楽しみください!
私は田中井薫。
この『ドラッグラベール』所沢駅前店で、受付とレセプト(診療報酬請求)を担当している、いわゆる事務のリーダーというやつだ。
薬師寺薬局長は、現場の調剤だけでなくレセプト管理のスキルも完璧。それでいて、事務の私たちに対しても変に威張るような嫌味な感じが一切ない。私としても、彼女のことは本当に気に入っている。
何より彼女は、「無自覚のままハイスペックなイケメン達を手懐けているのに、自分の恋心や好意には全く気づかず、イケメンを見るたびに『尊い〜♡』と限界オタク化している」という、天然パーフェクトな乙女なのだ。これが可愛くないわけがない。
「おはようございます、田中井さん♪」
今日も今日とて、あの飾らない自然体な笑顔で彼女が出勤してきた。あぁ、今日も可愛い。
「おはようございます、薬局長! 今日も朝から元気いっぱいですね! ……って、あれ? 昨日の勉強会ですごく綺麗だったメイク、今日は続けなかったんですか?」
「っ……! た、田中井さん、からかっちゃダメ……っ!」
「ダメっ!」って、指を一本立てて頬を膨らませるその仕草が可愛すぎるでしょー!!
「そうですか〜? 患者さんからも昨日すごく好評だったじゃないですか。私も、あのオータム系のメイクすごく似合ってて素敵だと思いますよ?」
「もぅ……照れちゃうよぅ……」
……はぁ、目の保養とはまさにこのことだ。
私にはすでに小学生の子供もいて、学童も落ち着いて、すっかり生活感の染み付いた主婦だけど……こういう甘酸っぱい少女漫画の主人公みたいな光景は、若い頃に忘れていたトキメキを思い出させてくれる最高のエンタメだわ。
おや、自動ドアの向こうからシャープな足音が聞こえてきた。
「おはようございます、エリア長!」
「おっ、田中井さんおはよう。今日もレセプトの進み具合はバッチリだね」
「フフッ……お任せください、返礼はゼロです! 請求漏れなんて一切ありませんよ」
「素晴らしい。さすがだ、ありがとう田中井さん」
神楽坂エリア長が、仕事のモードからスッと視線を後ろに滑らせる。
そこには、昨日の激変メイクからいつもの「地味可憐な薬師寺先生」に戻った天音ちゃんが、こつこつと処方箋入力をしている姿があった。
(ふふ……エリア長の視線が一瞬で『あ、今日も可憐だ……』って蕩けたの、私見逃しませんでしたよ〜)
「いつもの薬師寺先生も……可憐だ……」
「フフッ、エリア長! 応援してますから、アプローチ頑張ってくださいね♪」
「なっ……! 何のことだ、田中井さんっ!!」
「ふふ、とぼけちゃって。私は王道派——『神楽坂エリア長』を推してますからね♪」
「だからなんの話だ、田中井さぁーーん!!」
図星を突かれて耳まで真っ赤にして慌てるエリア長を背中で流しつつ、私は心の中でガッツポーズをする。
フフッ、私に極上の少女漫画を見せてくれる薬師寺薬局長。
その物語がめでたく完結を迎える日まで、特等席でしっかりと見守らせていただきます♪
……まあ、あの本部のトゲトゲしい悪魔(神崎葵課長)が変な横やりを入れて邪魔してこないことだけを、心の底から祈るばかりだけど。
今日も今日とて、自分の無自覚な可愛さに気づかず、一生懸命お仕事に励む天音ちゃんなのだった。
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