ズッキュン!!一ノ瀬薬局長と、大人の魔法
受付の田中井さんに図星を突かれ、図星を指されて悶絶しながらも、天音ちゃんの「いつもと違うメイク姿」に我慢できず見に行ってしまった一ノ瀬蓮。
橘君に施されたオータム系メイク(コッパーラメ&血色リップ)で大人の魅力全開になった天音ちゃんの破壊力はすさまじく、思わず「なっ……可愛い……」と零してしまった一ノ瀬くんは…
ズッキュン……!!
今日も今日とて、情報共有という名の愛の巡回(?)を果たすべく、俺は資料を抱えて所沢駅前店へとやってきた。
だが——。
あれ? 調剤室に、お目当ての姿がない。
なっ……どこに行ったんだ? 昼休憩のシフトでも取っているのか……?
幸い、待合室に患者の姿はない。俺は受付の田中井さんに声をかけた。
「どうしたんだ、薬師寺先生や橘の姿が見えないが」
「あ、一ノ瀬薬局長! お疲れ様です。今日は『光星化粧品』様のビューティー勉強会があって、橘先生と薬師寺先生は受講中なんですよ。何かあったら患者様をお呼びするように言われてます♪」
「そっ、そうか……。ありがとう」
「それにしても……」
田中井さんは、どこか面白がるような、からかうような含み笑いを浮かべた。
「一ノ瀬薬局長も、橘先生も本当に熱心ですよねぇ。あーあ、私も薬師寺薬局長が本気で羨ましいなぁ……。周囲があんなに分かりやすくアピールしてるのに、なんであの人、あんなに鈍感で気づかないんだろ!」
「なっ……! 俺は真剣に、学会に向けた症例検討の打ち合わせのためにだな……っ!」
「私はただの素人ですけど、見てればわかりますよ〜。明らかに毎回何かと理由をつけて、薬師寺薬局長の顔を見に来てるじゃないですかぁ。いいなー、あんなイケメン達に執着されて」
「か、からかうんじゃない!!」
「はいはい、分かりましたよ〜。……あ、そうそう。今日の勉強会、プロパーさんにしっかりメイクしてもらってるから、ひょっとすると薬師寺薬局長、いつもよりめちゃくちゃ綺麗になっちゃってますよ? 見に行ったらどうですか? ほら、足のつま先が完全に薬師寺薬局長のいる方向いてますよ! ちょうど患者様もはけてるし、今がチャンス、チャンスです!」
「〜〜〜ッ!!」
くっ……田中井め、すっかり俺の行動パターンを見抜いておちょくりやがって……!
だが……!
「いつもと違う化粧をした天音ちゃん」なんて言われたら、見に行かずにいられるわけがないだろーーが!!
我慢できずに勉強会の会場となっているスペースへそっと足を向けると、そこに広がっていた光景に、俺の息は完全に止まった。
そこには、いつも少しだけ隠そうとしているソバカスや青みを抑え、オータム系の落ち着いたベージュと温かみのある血色感が絶妙に引き出された天音ちゃんがいた。
目元には上品なコッパーラメがきらめき、リップは大人っぽい絶妙なツヤのあるカラー。
いつもの「地味で素朴な可愛い女の子」という印象から一変して、息をのむほど洗練された「大人の魅力」に溢れていた。
「なっ……、かわい……っ」
思わず、心の声がそのまま口から零れ落ちていた。
「「!!?」」
あまりの至近距離での呟きに、天音ちゃんがびくっと肩を震わせてこちらを振り返る。
(えっ……いま、一ノ瀬薬局長……「可愛い」って言った……の……!?)
瞳をぱちくりとさせ、真っ赤な顔で固まっている天音ちゃん。
「い、一ノ瀬薬局長……?」
「っ……! あ、あぁっ……!」
やばい。耐えられない。
今日の天音ちゃんは、破壊力が高すぎて反則だ。こんな姿を見せられたら、脳内の思考回路がすべてショートして、学会の症例報告会のことなんて一ミリも集中できちまう……!
「……き、今日のところは、資料を置いていくだけだ! またあとでな……っ!」
完全に骨抜きにされ、顔を真っ赤に染めた俺は、それ以上彼女の顔を見ることができず、ただ持ってきた資料をカウンターにポンと置くだけで、その場から逃げるように去っていくのだった。
(くそっ……! あの姿は反則だろ……惚れ直すどころか、今すぐ抱きしめたくなったじゃねえか……っ!!)
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