7羽目:はい、よろこんで!
のそりと顔をあげるが未だにうーんと悩んで自分のパネルを出して何やら色々検索をしている。
「んー……このアイテム聞いたことがないし、掲示板見てもそれらしい物が該当しない……のと、SSS装備って数えるほどしかまだ見つかっていないんだよね」
「そのSSSって何?要注意(仮)テロリスト的な??」
いや、逆に何それって質問された。
みぃはインベントリから羊皮紙と羽ペンを取り出して書きながら説明を始める。
羊皮紙と羽ペンで説明とか、とてもファンタジー!そして、リアルと同じ筆跡じゃん、すごっ。
SSS(ユニーク・激レア)
SS
S(高級)
A(中級)
B(下級)
SS辺りまではモンスターを倒したドロップ運や製造スキルの高い人などから手に入りやすいらしいが、SSS以上はボスやレアイベントからしかでないとのこと。
そして、まだ数えるほどしかないSSSの内の1つがこの指輪なんですってよ奥さん、アラヤダびっくり。
「と、いうことでファウストでも街中NPCイベントで依頼やクエストはあるけれども、ルーイのやつは特徴から聞いておそらくランダムエンカウントのイベントNPCなんじゃないかと、思う」
ランダムエンカウントイベントは運もしくは何かしらの隠し要素が反応して発生するイベントらしく、検証がしづらい為あまり掲示板にも情報がないんだとか。でも白いカラスだったり、黒いローブの占い師はよくイベントNPCとして掲示板にも出てくるため、うちのやつもそうなんじゃないかと。
うちの場合は指輪の効果から見ると低レベルの状態でステータス半減していた為なのか、はたまた耐性や回復なども獲得していた事によるイベント発生だったのでは?とのことだ。へぇ、ゲーマスAIさんが色々やっちゃうってやつがこういう物なのかな?
仕事で頼んでいた案件はしっかりやっているけど、ついでに新しい案件と仕様を作成して実装しちゃいました!とか言われたら……そりゃ、泣いちゃうね?
「ラッキー?ってことみたいだし、(仮)テロリストじゃないから安心した!」
「まぁ……ルーイらしくていっか、昔からよくわからない運の良さ発動してたもんね」
過去にはウミ鵜が餌として魚群を狙って飛び込んでくる水中バードウォッチングにいったはずが、リュウグウノツカイが浮上してきて体に巻き付かれた事があったなぁ。
オーマイガッ!!奇跡だ!!今世紀最大の発見だ!って周りに騒がれたけど、目当ては水中ダイブする鳥なのだから、あー深海魚で有名だもんねぇと軽く流して終わらせた。
だって、水中バードダイブが見られなくてショックの方が大きかったんだもん。他のチームは全員水中ダイブが見られたと聞いてさらにショックを受けたものだ。
後は森の中でバードウォッチングしながら何かこっちからほのかにいい香りがするような?と適当な場所を掘っていたら手の平サイズの白トリュフが出てきた事もあったなぁ。
キノコハンターであるおじいちゃん友達がアリエナイ……人間が……?アリエナイ……って頭抱えてた事もあった。訓練されたブタか犬じゃないと探せないんですって。
おじいちゃんが連れていたトリュフドッグにはお主やるな!やるではないか!ってめちゃくちゃ懐かれたし、人間より豚好きだからこんなに懐いているの初めてみたってさ。
だからか、おじいちゃんに瑠衣ちゃんの前世はブタかブタの守護霊でも憑いているのかい?と聞かれた。
誰がメス豚だ、失礼な!私はドMじゃないぞ!そして、メスでもオスでも鳥(希望)に決まっているだろっ!
まぁ、こういう運は爆発しているが、肝心の鳥に関する運は?と言いますと……床ドンしてそのままゴロゴロ転がりまわってしまいたい程皆無なのだ。
自分1人だと鳥の遭遇率がすこぶる低迷する上、何でか避けられるのよ。どうして?こんなにも愛しているのに!ただ、もふもふしている君たちを愛でたいだけなのに……。あと、あわよくば埋もれたい、そしてついでに突かれたい。
「他にも色々ゆっくりと全部説明したいけど、さすがに情報量多いから、やりながら覚えていこうか」
「賛成!頭使うより筋肉が覚えるまで反復するのがいいとおもいます!」
「……脳筋」
そんなジト目で見ないの、筋肉と鳥は大体の事を解決できるって古事記にも書いてあるよ!
それ誤事記ってパチモンなんじゃない?ってバッサリ切り捨てられた、ひどし。
嗚呼、われ痛みを覚えぬ。あの輝けるスワロフスキーに例えし、われが心もとなし。今は砕け散りぬ、もろき玉のごとく。
(※嗚呼、傷ついたよ、私のスワロフスキーのような繊細な心が割れてしまうほどに。)
「え、ココロある……の?」
「これがニンゲンのココロ……ってちがうわ!どこの感情が芽生えたロボットだ!大変繊細なハートがここに!ありマッスル!」
ボディービルダーのようなポージングで自分の胸を指さす。
「うけるーww」
うけません!音声だけじゃなくて、あえてわかりやすく”w”までタイピングしてるんじゃないよ!傷ついて削がれてハツくらい小さくなっちゃったじゃん。こらこら、塩振って焼こうとしないの!ハツ串2本(塩)じゃないのよ!でも、焼き鳥はうちも塩派なので、その注文はナイスではある。
「バカなやりとりは置いといて……まぁ、うちのギルドにとりあえず入ってみない?私が居ない時でも質問できるし」
「バカじゃないやい鳥バカだけど!って、いいの?!それは助かる!」
「鳥バカは燃えるゴミに捨ててきなさい、ギルマスには変態が来ますって話してあるから安心して」
誰が燃えるゴミじゃい!ってか、どんな紹介しとんねんこの子はぁ!安心できるわきゃないがな!
「まてぃ!変態ってどゆこと?!無難に友達って紹介しませんか?!」
「いや、普通とか無難だとツマラナイと思って……ね?」
「ね?じゃないのよ……あなた、変態が来ますって人に紹介されたらどうよ?」
「……とりあえず挨拶した瞬間に通報すると思う?」
何そのこんにちは!(社会的に)死ね!みたいな殺意高い通報のやり方。
* * *
バカ騒ぎはさておき、みぃに案内されながらステータス等の説明を受けつつ歩いていると、目的の場所が見えてきた。
街の東端、石畳の通りを抜けるとそこに建っていたのは、森の入り口に寄り添うように佇む、ログハウスのような木造のギルドハウス。丸太を組んで造られたその建物の屋根には苔がうっすらと生え、煙突からは細く白い煙が立ちのぼっていた。
ギルドハウスの横が庭らしく、そこには畑もありポーション用の薬草なんかを育てているらしい、隅々まで管理が行き届いているのが見てわかるほどきれいに整えられている。
「さっきギルドチャットで聞いたらギルマスとサブマスが待ってるって言ってたから入ろうか」
銀色の羽模様が描かれている丸いステンドグラスがついた木の扉を開けて入るみぃに続いてドアをくぐる。
「お、みぃちゃん。その子が言ってた子か」
「みぃちゃん、おかえりなさい!待ってましたぁ~うふふっ」
クールに両腕を組んでいるお兄さんと手を胸の前でそっと重ねるように祈りのポーズをとっているお姉さんが出迎えてくれた。
「「ギルドSilver Feathersへようこそ」」
歓迎の言葉と共に木の香りと温かな空気がふわりと流れ、薪のはぜる音がする。前にいたみぃがくるりと振り返って、にこっと笑った。
「ようこそ、ギルドへ。ご新規1名様よろこんでご案内致しまぁす」
居酒屋かよ。
とりあえず、鳥おねがいしまーす。
 




