32羽目:転写の光、心に灯る / 好きが重なる場所
今日はそれぞれの視点でのお話
「その発想はなかったわ……。それ、試してみよう。うそ……成功率100%に跳ね上がったんだけど……!」
驚きの声を上げた瞬間、自身の周囲に淡い光の粒が舞い上がり視界の隅のシステムに表示が現れる。
《【魔力転写術式】がLv.3に到達しました》
《新たなサブスキルが開放されました》
《【即席転写術式】獲得》
「……今、スキルがレベル3になって。新しいサブスキル獲得した」
「えっ、おめでとう!?どんなの?」
ルーイは目を輝かせて、まるで自分のことのように嬉しそうに声を弾ませる。その無邪気な反応に、思わず口元が緩んだ。スキル画面を開き、彼女に見せる。
【即席転写術式】アクティブ
獲得条件:魔力転写術式のスキルレベルが一定以上に達し、術式を展開する実験に成功する。
効果:戦闘中、味方の武器・防具に術式を即時転写し、属性付与やバフ効果を展開する。
付与される効果は状況に応じて選択可能で、効果時間は術者のINTとDEXに依存。
※武器・防具1つにつき、同時に転写できる術式は1つまで。
※同じ術式の再使用にはクールタイムが発生する。
※同一装備への術式の重複は不可。
お使いクエストのときもそうだったけど……。
この子は、どうしてこうも次々と、私には思いつかないようなものを引き出してくるのだろう。
「戦闘中に、味方の装備に直接効果を付与できるってこと……?それ、めっちゃ便利じゃん!」
ルーイが目を輝かせて声を上げる。
その反応に、私もつい笑ってしまう。
「うん。今まではポーションみたいに事前の準備が必要だったけど、これは即時展開できる。しかも、属性やバフを状況に応じて切り替えられるのが強い。この術式も、もっと研究すれば新しい効果が見つかるかもしれない」
半年も続けているのに、ルーイはたった数日で私の知らないことをどんどん見つけてくる。まるで現実と同じだ。
大学で彼女と出会ってから、私はたくさんの知らなかった世界を知ることができた。
もしルーイと出会っていなければ、きっと今までの学生時代と同じように、孤独なままだったと思う。
私の趣味を否定せず、楽しそうに聞いてくれた。
「できなくても、見てるだけで楽しいよ」って、いつも笑ってくれた。
そういえば、あのときも彼女が隠し部屋を見つけてくれたっけ。
鳥みたいな生き物が入っていったから、きっと何かある!って、攻略サイトにも載ってない場所を、あっさり見つけてしまった。
鳥の話を聞いているうちに、私もアウトドアに興味が湧いて、連れて行ってもらった。
そうして、世界が、少しずつ広がっていった。
碧い瞳でまっすぐに見つめられて、思わず胸が高鳴る。
「これは……次の封樹探索が楽しみになってきたね!」
私も、あなたみたいに、もっと楽しいを見せてあげたいな。
* * * 好きが重なる場所 * * *
レベルアップのときとは違い、淡い光の粒がふわりと彼女の周囲に舞い上がった。
「……今、スキルがレベル3になって。新しいサブスキル獲得した」
少し戸惑いながらも、どこか嬉しそうに呟くみぃ。
「えっ、おめでとう!?どんなの?」
思わず声が弾んだ。まるで自分のことのように嬉しくて、胸が高鳴る。
みぃはスキルウィンドウを開いて見せてくれた。
【即席転写術式】アクティブ
獲得条件:魔力転写術式のスキルレベルが一定以上に達し、術式を展開する実験に成功する。
効果:戦闘中、味方の武器・防具に術式を即時転写し、属性付与やバフ効果を展開する。
付与される効果は状況に応じて選択可能で、効果時間は術者のINTとDEXに依存。
※武器・防具1つにつき、同時に転写できる術式は1つまで。
※同じ術式の再使用にはクールタイムが発生する。
※同一装備への術式の重複は不可。
うわぁ、相変わらずみぃのやつは説明がいっぱいだなぁ!
錬金術師になると、スキルの説明まで専門的になるのかな?
「戦闘中に、味方の装備に直接効果を付与できるってこと……?それ、めっちゃ便利じゃん!」
「うん、今まではポーションみたいに前準備が必要だったけど、これは即時展開できる。しかも、属性やバフを状況に応じて切り替えられるのが強い。この術式も研究していけばいろんな効果が見つけられるかもしれない」
みぃの表情が、ふわっと明るくなった。
その表情好きだなぁ。出会った頃は、周りに無表情でちょっと怖いって言われてたのを気にしてたっけ。
でも、みぃって、意外と顔にも態度にも、感情が出やすいタイプだと思うんだよなぁ。
鳥の話ばかりして、周りに飽きられていた頃「能天気でいいよね、いい加減大人になりなよ」なんて言われて、ちょっとだけ傷ついてた。好きなことに夢中になるのって、そんなに悪いことかな?そう思っていたとき、大学でみぃと出会った。
みぃは、人の好きを否定しない。
まっすぐに受け入れてくれて、誰かを喜ばせようと、いつも陰で努力してる。そのぶん、自分の好きはちょっと後回しにしちゃうんだけど。
これまでも、うちらは好きを共有してきた。鳥とゲーム、まるで違う趣味だったけど、それぞれの世界を尊重し合っていた。
でも今は違う。
同じ世界の中で、同じ好きを一緒に感じている。
それが、すごく嬉しくて胸が高鳴る。
みぃを正面から見つめて、笑いかけた。
「これは……次の封樹探索が楽しみになってきたね!」
もっと、一緒に楽しいを半分こしたい!




