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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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27羽目:師の想い、弟子の決意

 腕を組み、じろりと見下ろすように睨んでいるお師匠。

 けれど、その目の奥には、どこか試すような光が宿っていた。


「まずは、やることやってからじゃねぇのか?マリーに眼鏡を届ける。それが済んでねぇうちに『教えてください』だぁ?順番も守れねぇ奴に、俺の技術なんざ教えられるかっての!」


 そして、そっぽを向きながら、ぽつりと付け加える。


「……戻ってきたら、話ぐらいは聞いてやらぁ。だから、さっさと行ってこい」


「はい!!すぐ戻ってきます!」


 みぃの表情がぱっと明るくなる。

 その笑顔を見て、うちもうれしくなった。


 よーし、まずはファウストの街に戻って、マリーさんに眼鏡を届けよう!


 転送クリスタルを使い、ファウストの街へと戻ってきた。

 本当に一瞬で着いてしまって、思わず「おおっ」と声が出そうになる。


 騎士団ギルドに向かうと、受付にはマリーさんがいた。

 テキパキと仕事をこなしながらも、ホール全体に目を配っている。さすがだ。


 受付台に近づくと、彼女もこちらに気づき、目を細めて微笑みながら、深々とお辞儀をして出迎えてくれた。


「ルーイ様、みぃ様、おかえりなさいませ。おじ……親方様は、いかがでしたか?」


「ただいま!いやー、マリーさんのおじいちゃん、ほんとすごかったよ!あ、これ、頼まれてた眼鏡。ちゃんと直してもらったから、つけてみて?」


 カウンターの上に眼鏡をそっと置いた。

 マリーさんは今かけていた眼鏡を外し、修復されたものを手に取ってかけ直す。

 そして、ゆっくりと周囲を見渡した。


「……なんと申し上げて良いのか……。お願いを聞いていただき、本当にありがとうございました、どの様にご恩をお返しすればいいのか……」


 彼女は深く頭を下げ、丁寧に礼を述べた。


「直ってよかったよ!これからまたブルンヴァルトに戻って、お師匠に弟子入りをお願いするところなんだけど、マリーさんにすごく会いたがってたみたいだから……恩返しついでに、推薦も含めたお手紙書いてもらえるかな?届けておくからさ」


「まさか……おじい様が……マルクス以外にも……。やはり、ルーイ様とみぃ様にお願いして正解でした。お手紙、すぐにご用意いたしますので、少々お待ちください」


 

 数分後、丁寧に封をされた1通の手紙を手に戻ってきた。

 封筒には、彼女の繊細な筆跡で「おじい様へ」と書かれている。


「こちら、おじい様へのお手紙です。どうか、よろしくお伝えくださいませ。そして、お二人の成功を祈っております」


「うん、任せて!きっと喜ぶと思うよ!」


 私は手紙を受け取り、みぃと顔を見合わせて頷いた。

 さて、またブルンヴァルトにとんぼ返りだ!


 再び転送クリスタルを使い、ブルンヴァルトに戻った。いやぁ、これ本当に便利すぎる。鳥の聖地に設置して毎回そこに転送したいんだけど?


 工房の扉を開けると、お師匠は作業台の前で何やら細かい部品をいじっていた。


「戻ったか。……で、ちゃんと届けてきたんだろうなぁ?」


「もちろん!マリーさん、すごく喜んでたよ。これ、手紙も預かってきた!」


 封筒を差し出すと、お師匠はちらりとこちらを見てから、それを無言で受け取り、封を切ることなくポケットにしまった。


「俺ぁ忙しいからよ、あとで時間が出来たら読む」


 本当は読みたくて仕方がないだろうに、もう相変わらずツンデレなんだから!読んだら絶対ニヤけるんだろうなぁ、お師匠。


「で、錬金術の嬢ちゃんよぉ。おめぇ、本気で俺の技を学びてぇんだな?」


 お師匠が改めてみぃに向き直る。

 みぃは一歩前に出て、真っ直ぐに彼の目を見つめた。


「はい。あの術式を見て、心が震えました。私も、誰かのために、あんなふうに力になれる技術を身につけたいんです。弟子にしてください!」


「……ふん。だったら、明日の朝5時に裏口に来い。1秒でも遅れたら破門だ!剣士の嬢ちゃんは別にどっちでもいい、だが邪魔したら錬金窯に閉じ込めっからな!」


「「はい!」」




 《森の泉》にまたチェックインをして、ゲーム内の空腹と給水を満たしてから、お互い夕飯の為に一度ログアウトする。



 

 再び目を覚まし、上体を起こすと、みぃもちょうど目を覚ましたところだった。

 ゲーム内時間は朝の4時半。空腹も水分も問題なし。チェックアウトを済ませ、まだ薄暗い町を抜けて、工房の裏口へと向かう。


 人々がまだ活動を始める前の、静けさに包まれた朝。

 時刻は朝4時55分。裏口の扉を控えめにノックすると、「おはようございますぅ~」とマルクスさんが間延びした挨拶で出迎えてくれた。

 中へ通され、作業部屋の椅子に腰を下ろすと、すでに向かいに座っていたお師匠が、こちらを睨んで口を開く。


「……おめぇら、逃げずにちゃんと来たな」


 睨まれているのに、つい口元が緩む。だって、ちゃんと来るか心配で窓から見ていたってマルクスさんに聞いちゃったからね。


「俺が昨日使ったのとはちげぇが、基本は錬金術スキルの【魔力転写術式エンチャント・インスクリプション】だ。ま、嬢ちゃんは錬金術師だし、やりゃわかんだろ。とりあえずこの紙にやれ、マルクスは紙が無駄にならねぇよう見とけ」


 その間、うちはどうすればいいんだろう?とそわそわしていると、お師匠がちらりとこちらを見て、ぶっきらぼうに言い放つ。


「おめぇは邪魔だから、昨日の素材をもっかい取ってこい。これ持ってさっさと行け!目障りだ!」


 みぃはマルクスさんの指導のもと、【魔力転写術式エンチャント・インスクリプション】を紙に書き込む練習に取りかかっていた。

 慣れてきたら、いよいよレンズへの書き込みに進むらしい。


 よーし、みぃがいっぱい練習できるように、ハーブ取って、苔むしって、コア抜いて素材、がっつり集めてきますか!

マルクス:(気になるなら素直になればいいのになぁ)


お師匠:(あいつら朝飯食ってから来る、よな・・・?台所に食えるものがあるのかわからん・・・)

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