24羽目:どこの世界にも論争はあるんだね
マルクスさんに借りた《森識鑑定鏡》を使って、素材の採取を進めていく。マルクスさんは付き添いなので、別の素材を探している間に、2人で目的のものを分担して集めることにした。
『素材リスト』
【マナスライムの核】×10
【マナリーフ】×50
【ルミナハーブ】×10
【セレスの根】×5
【エーテルモス】×50
【星鉄】×5
【透明石英】×10
「私は鑑定スキルもあるし、数が多いマナリーフと、ちょっと気になってたセレスの根を採るね」
「おっけ!じゃあうちはルミナハーブ担当だね!お互い見える範囲で探そうか。終わったらそっち手伝うよ!」
「うん、そうしよう。じゃ、またあとで」
ルミナハーブは木に絡まる蔦のような植物らしい。とりあえず、蔦が絡んでいる木を探してみよう。
「……お、この蔦かな?よし、森識鑑定鏡を装着っと」
左目にスコープを装着して蔦を覗くと、視界に情報が浮かび上がった。
【グリモヴァイン】
魔力に触れると葉の模様が動き出し、魔法の構造や流れを視覚的に表現する。
使い方:魔法陣や呪文の構造を可視化するために使用。魔導書に挟むと、使用者の魔力に反応して補足情報を表示する。
その他:食用可。魔力が強い者が調理すると葉が反応して苦味が増すことがある。
※「これを教科書に挟めば勉強しなくていい?甘いな。内容を理解してないと反応しないぞ。そしてカンニング、ダメ。絶対。」
なんだろ、最後の方は誰かの経験談みたいな一言コメントだね。
目的の物とは違うけど、いつか何かに使えるかもしれないしね!少しおすそ分けしてもらおう。
次の木の蔦をチェック。
【フェイリーフ】
自然魔力に敏感で、風がない場所でも葉が揺れたり、音を立てたりする。
使い方:森や自然の中で魔力の流れを探るために使用。妖精の通り道や精霊の気配を感じ取ることができる。
その他:食用可。精霊の加護を受けているとされ、無理に採取すると森の怒りを買う。仲良くなって分けてもらうのが良い。
※「どんな種族でも、女性に年齢や彼氏の有無を聞くのは絶対NG」
ねぇ、最後の絶対誰かの個人的感想だよね??しかも、やらかしましたね?
これはまたチャンスがあれば採るでいいかな?精霊さんとお話できるならゆっくり話したいしね!
そして、ようやく見つけたぞ!
【ルミナハーブ】
魔力が動くと、葉がそれに反応してお辞儀するように閉じる。
使い方:魔力の流れを可視化する補助剤として使用される。
その他:食用可。清涼感があるため味は賛否両論あり。
※否定派:「魔法薬の味がする」「口の中がスースーして落ち着かない」
※賛成派:「味が苦手? それは魔力の味に慣れてないだけよ。一度でも魔力眼がキマると、もう戻れないわ」
「確かに独特だ。でも、それがいいんだよ。魔力が舌の上で踊るような感覚……あれは他のハーブじゃ絶対に出せない」
……もはや、最後は完全にミント論争じゃない?これ、森の精霊のコメントなの?それともどこかの偏屈なおじいちゃんのコメント?まあいいや、これが目的の素材だし、多めに採っておこうっと。
さて、みぃの方はもう集まったかな?
「おーい、こっち終わったよー!そっちはどう?」
「ちょうど終わったところ」
「さすがみぃ!しかし、このスコープすごいね、なんか最後のコメントが個人の感想みたいで笑っちゃった。セレスの根とマナリーフには何て書いてあった?」
「えっとね、セレスの根は――『食べた者の魔力が安定し、心が落ち着く。一部の魔法学校では、試験前のお守り茶として学生に人気。酒精後の魔力の乱れによる頭痛や吐き気にも効果あり。』って書いてあったよ」
「……それ、完全に魔法世界の二日酔い対策じゃん」
「私も思った。あとマナリーフは――『軽く炙って塩で味付けするといい軽食になる。過剰摂取すると魔力が暴走する』って」
それもう、食べすぎて魔力暴走からのセレスの根で鎮静っていう、魔法世界の食生活あるあるみたいになってるじゃないの。ファンタジー世界の揚げ物と胃薬兼酔い止めみたいな関係かな?
「あとはマナスライムの核とエーテルモスだね。マルクスさんと合流して残りのも集めちゃおうか」
「だね!チャチャッと終わらせちゃお!」
「おやぁ、もう集まったんですかぁ?お二人とも、なかなかやりますねぇ」
どこからともなくマルクスさんが現れて、……ちょっとびっくりした。
「エーテルモスとマナスライムの核って、どこで採れるの?」
「マナスライムなら、この先の洞窟によく出ますぅ。洞窟内ではエーテルモスも採れますからぁ、まずはそちらからにしましょぉ」
森の奥へ進むと、いかにも何か出そうな洞窟が現れた。
中は暗くて、奥まで見通せない。
「……けっこう暗いね?」
「はいぃ、でもご安心を〜。この魔力石ランタンがあれば大丈夫ですぅ」
そう言ってマルクスさんがバッグから取り出したのは、キャンプ用のアルコールランタンに似たアイテムだった。魔力石が内蔵されていて、淡く青白い光を放っている。
しかし、おじいちゃんよ。必要な道具一式を人数分ちゃんと持たせてくれるって、優しさがダダ漏れじゃない?
ーーお店の中では。
お師匠様:「ぶえーくしょい!!!誰だぁ?噂してやがるのは。はっ、マリーか?!ふふっ・・・ふふふっ・・・」




