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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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21/108

19羽目:見た目と中身が違うことってよくある

投稿順間違ってました・・・こっちが先です

「マッスルダックちゃああああん!!!」


 その羽毛なのか、筋肉なのかをさーわらーせてぇえええ!!


 勢いよくスライディングキャッチで先頭のマッスルダックに突撃すると、後ろに続いていた筋肉部隊は、クモの子を散らすように四方八方へ逃げていった。 


 ……うわぁ、見た目詐欺だぁ。


 ガチムチの筋肉模様に見えたけど、実際はただの羽毛だったらしい。しかもその毛、大福みたいにモチモチしていて、シルクのようにさらっとつるっとしている。手触り、最高。(※現実は鳥獣保護法により禁止されている)


 失礼して、顔をうずめる。

 くぅ……しみるぅ〜……。

 まるでビールを一口飲んだあとのような、謎の感動がこみ上げてきた。


「……マッスルダックが、豆鉄砲食らったみたいな顔してるわよ……。人生で初めてみたわ……豆鉄砲食らった顔」


「やったね! ひとつ賢くなったね! ついでにマッスルダックの筋肉は見た目だけだったよ! 実際はもちっ、さらっ、つるっとだった! あ、ふたつ賢くなったね!」


 羽毛に顔をうずめたまま、早口で感触レポートを続ける。口の中に入ってくる羽毛もとてもリアル。

 あひるくちゃい。天国すぎる。


「うわぁ……いつ使えるのかしら、その水餃子の食レポみたいなトリビア……」


 後ろから聞こえる、たぶんドン引きとちょっと呆れた声。でも気にしない。今はこのもっふもふを堪能する時間なのです。んふー。


 しばらく堪能したあと、マッスルダックさんにはさくっとポリゴンになってもらった。うちの血肉(けいけんち)となって、生き続けてくれ。


 ちなみにインベントリに入ってきたドロップ品は『ちょっと硬いダック肉』だった。

 ……肉質は固いんかーい!


 さて、もう少しレベルを上げたら、ブルンヴァルトに向かえそうだ、と振り返ろうとした。先ほどまで、青々と茂っていた草原に、影が落ちる。


 ん? 暗くなったぞ。大きな雲でも通ったのかな?


「左によけて!!!」


 背後から、みぃの叫び声が響く。


 咄嗟に言われた通り、左に転がるように避けた。風を切る音が耳元で聞こえたが、ダメージはない。慌てて立ち上がって、先ほどまで立っていたところを見ると、そこには、灰色の拳が地面に抉り込んでいた。


【★オークリーダー】


 見た目こそオークと同じく二足歩行のイノシシ型だが、サイズは倍以上。全身灰色の肌で、ただならぬ存在感を放っている。


 地面にめり込んでいた腕を振り上げて、殴りかかってきた。今度は、盾でガードする。


「うわっ! 何こいつ?! 星マークって何?!」


 思わず質問攻めになってしまう。さっきまでマッスルダックを堪能していたとはいえ、ここは草原。見える範囲にモンスターはいなかったはずなのに、どこからともなく突然現れた。


「なんでリーダーのポップ場所がここなの?! いつもはもっと奥の方で出るのに! 星マークは中ボスの印! こいつ、私でもきついかも! 全力で攻撃するから、ルーイはそのままタゲ取って!」


「オッケ! やーい、土管野郎! 【挑発】!」


 上半身は裸だし……たぶん野郎だよね? 胸に鉄板の防具つけてるけど平たい。腰を落とし、盾をしっかり構える。いつでも攻撃できるよう、短剣も握りしめた。


「グオ! ブモッ!」


 上から叩きつけるように、左右交互に灰色の拳が唸りを上げて振り下ろされる。左、右。そのたびに盾の角度を微妙にずらし、衝撃が直撃しないように引きながら受け流す。


「ぐっ……重っ!!」


 盾越しに伝わる衝撃が腕を通じて全身を揺らし、思わず片膝を地面につく。HPバーがじわじわと削られていくのが見えるが、同時に、減っていたはずのゲージがわずかに押し返すように戻っていく。


 どうやら、片膝をついたこの姿勢も、システム上は【集中回復】の座位と判定されるらしい。おかげで削られながらも、わずかに回復が追いついている。ギリギリだが、まだ耐えられる。


「【ポーションボム】!」


 背後から、みぃの声とともにガラス瓶が飛んだ。赤い液体の入った瓶がオークリーダーの肩に命中した。


 ドォォオン!! と、激しい炸裂音とともに、爆煙が巻き上がる。


「ウガアァアアアアア!!」


 オークリーダーが怒声を上げ、体をのけぞらせた。肩口から煙が立ち上り、灰色の肌が一部焦げている。


「ルーイ、ヘイト切れるかも! 維持して!」


 みぃはリーダーの注意を引かないよう、一定間隔時間を空けてから攻撃し、戦場を駆け回る。そうしないと、敵視する相手が移ってしまう。だから、タンクは定期的にスキルを使って注意を引き続けないといけないと教わった。


「おけ! はいはーい、こっち注目〜! 【挑発】! そして、足元がら空きだよ!」


 丸太のような太ももに短剣を突き立てる。

 再び怒声が響き、血走った目がギロリとこちらを捉えた。絶対にみぃの方には行かせないよ!


 次の瞬間、リーダーが地面を蹴った。巨体とは思えないスピードで突進してくる。両手で盾を構えた瞬間、風を裂く音とともに拳が直撃し、盾ごと弾き飛ばされた。HPが一気に半分以上削られ、後ろに体ごと吹き飛ばされる。


「ぐっ……!!」


 足に力を入れるが、ワンテンポ動き出しが遅れる。なんとか体勢を立て直そうとするが、すぐさま横薙ぎの拳が飛んできた。


 しまっ……構えが間に合わない――!


「【フレイムピッチャー】! 【アシッドボム】!」


 みぃの投げた瓶が立て続けに背中へ命中した。炎が巻き上がり、酸が皮膚を焼き、煙が立ちのぼる。


「グガアァア!!」


 ひるんだ隙に、左へ回避して盾を構え直す。インベントリから回復薬を取り出して割ると、体力が八割戻った。


「ナイス! 助かった!」


 だが、オークリーダーはみぃを次のターゲットに定め、再び突進を開始する。その巨体が、怒りのままに拳を振り上げながら迫った。


「……いかせるか! 【挑発】!」


 だが、オークリーダーの足が一歩早かった。

【挑発】が届く前に、巨体は範囲を抜け、拳を振り上げたままみぃへと突進する。


「そんなっ……!」


 すぐにオークリーダーの背中を必死に追うが、距離が縮まらない。

 足の遅さが、今この瞬間だけは憎らしい。

 間に合え!!!


 心の中で何度も叫びながら、足を必死に動かす。

 だが、みぃとの距離がどんどん近づいていくのは、オークリーダーの方だった。


「くっ……【挑発】!」


 スキルは届かなかった。なんで、反応しないの!? どうしたら!


 このままでは間に合わない……!

 このままじゃ――!


 オークリーダーがあと数歩踏み込めば、みぃがいる。


「みぃ!!!!」

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