20羽目:何度でも立ち上がって見せる
投稿ミスして順番がおかしなことになったので今日は2羽分のせます!
叫びが喉を裂くように飛び出した。
拳が振り下ろされ、みぃは咄嗟に右へ転がって回避する。でも、拳がわずかに当たって赤いポリゴンが飛び散る。九割ものHPが一気に削られる。
地面に倒れ込んだみぃへ、再び拳が振り上げられる。
まだ敵との間に距離がある――もう、ダメなのか……! そう思った、その瞬間。
「っ……! 【アースウォール】!」
みぃがインベントリから羊皮紙を取り出して広げる。
光が魔法陣をなぞる様に黄色く輝き、地面がうねり、土の壁が勢いよくせり上がった。
オークリーダーの拳が土壁に直撃し、土塊が四方に飛び散る。壁はひび割れながらも、みぃを守りきった。手に持っていた羊皮紙は燃えるようにポリゴンとなって消えた。
よかった……!! だが、オークリーダーは執拗に土壁を殴り続けている。このままでは壁を突き破ってしまう。
盾を構えたまま、全力で地面を蹴り、オークリーダーの背後に向かって突進する。挑発がうまくいかないなら攻撃するしかない。でも、レベルの低い自分ではダメージが出せない。だけど、こっちを振り向く一撃さえあればいい。短剣で刺すよりも、もっと大きな物ならいけるかも。
「こんの……! 土管めがあぁぁあああ!」
渾身の力を込めて、盾を振りかぶり、膝裏に叩き込む。鈍い音とともに、オークリーダーの足から赤いポリゴンが飛び散った。
「グガァァアアア!!」
怒声を上げて振り返るオークリーダーと目が合う。ターゲットがうちに戻った! すると、ピコンと音と共に視界の隅にメッセージが現れる。
《スキル【シールドチャージ】獲得》
【シールドチャージ】アクティブ
獲得条件:盾を使用し、敵に一定以上の衝撃ダメージを与える。
効果:盾を利用して物理ダメージを与える。命中時、一定確率でスタンを付与。VITが高いほどダメージが増加。
流し読みだけど、VITで攻撃力が高くなることだけは理解した。
「やっと気づいた? 弱いからって、見くびるとこうなるんだよ!」
オークリーダーの筋肉質な灰色の肌に、隆々とした血管が浮かび上がる。全身から赤いオーラが立ち上り、湯気のように揺らめく。
背後の割れた壁に目を向けると、みぃが土壁を離れ、回復薬で傷を癒していた。視界の隅のパーティー画面で、みぃのHPが八割ほど回復したのを確認し、安堵する。
オークリーダーは、体勢を崩しかねないほどの大振りで両腕を振り回しながら、床をえぐりつつこちらへ迫ってくる。一撃でも受ければ、また吹き飛ばされる。でも、こんなに大振りなら、しっかり見極めれば避けられる!
右へ回避、左へ回避、もう一度右へ!
「【ポーションボム】!」
炸裂したポーションの衝撃に、オークリーダーは耐えられず地面へと倒れ込んだ。
顔が地面についた今なら、急所を狙える!
「【シールドチャージ】!」
全体重を盾に乗せ、オークリーダーの顔へと叩きつける。
「グオ!!」
唸り声とともに、星のエフェクトがくるくると舞った。なんか動かなくなったぞ?
「ナイススタン! 今の内に攻撃よ! 【ヒールピッチャー】【ポーションボム】!」
みぃがこちらへ緑の小瓶を投げつけると、さきほど削られたHPが回復する。彼女はそのまま爆発攻撃を放つ。今の内にダメージをできるだけ与えないと! うちは盾と短剣を交互に繰り出した。二人で休む間もなく、敵に打撃を重ねていく。
「グルゥァウ!!」
星のエフェクトが消えた――次の瞬間、砂を巻き上げるように左手を振りかぶる。
みぃの近くへと移動し、オークリーダーと距離を取りながら、二人を庇うように盾を構え直す。
「あと少しだと思うんだけど、まだダメね……。ちょっと、やばいかも。もうダメージの高いボムピッチャーが残りひとつ、低レベルの攻撃スクロールは数枚しかないわ……」
「結構使ったもんね。勘だけど、倒せると思う。ここまで来たら死に戻りせずにやりきっちゃおう。だから、みぃ。あとで瓶を投げるタイミングを合わせてくれない? ……やるから……そのときに……」
モンスターには言葉が通じないかもしれないが、肝心な部分は声を落として伝える。
「……! それ、一歩間違えたらルーイが!」
「大丈夫、あの感じだったら。うちの勘を信じて。勝てるよ多分、きっと……まぁ、なんとかなるでしょ」
「もう、最後まで自信もって言い切ってよ……バカっ。でもルーイの勘って当たるから、信じるわ。製造職とレベル差のあるタンクで倒すって考えたら、楽しくなってきたかも」
緊張の中で、思わずお互い微笑む。
しかし、よろめきながら立ち上がるオークリーダーの瞳からは、先ほどよりも強い殺気が放たれていた。体を覆う赤いオーラはさらに濃く、荒々しく揺らめく。
「グゥオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
大気が震えるほどの咆哮が響き渡り、全身がびりびりと痺れる。咄嗟に両手で耳を塞いだ。やばい、盾構えなきゃ。でも、体が強張って動かせない……! 今、攻撃されたら何もできない。
「くっ……!」
だが、リーダーからの攻撃はないまま、咆哮が収まった。でも、地響きのように、地面がかすかに揺れ動いていた。遠くの方から土煙を三本上げながら、何かがこちらへと走ってくるのが見える。額に深い傷を持ち大きな牙が生えている巨大な猪だった。
【トッコーボア】
「ここでトッコーボアを呼ぶなんて……! ルーイ、あれはぶつかるまで一直線にしか動けないわ! 盾で弾いて進路を変えればコースアウトするから! 木にぶつけて自滅させて!」
「猪のリーダーだから、仲間も猪なのねっ……と! みぃは作戦通りに!」
盾を構え、迫りくる一体目を右へ弾く。軌道が変わり、そのまま少し離れた木に激しく頭突きし、赤いポリゴンとなって弾け散る。名前の通り特攻専門だね! 残り二体!
もう一体が今度は左から突進してくる。左に今度は盾を往なして軌道を変えるとまた木にぶつかりポリゴンとなって散った。一体ずつなら余裕! バッチコーイ!
最後の一体が正面から走ってくる。
今度は右に軌道を変えればいい――そう、思った。
「ルーイ! 後ろ!!」
リーダーが攻撃してこないには理由があった。最後のトッコーボアとオークリーダーが連携したことにより、背中を無防備にさらす状況を作り出されてしまった。
――ハメられた……!




