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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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21/66

19羽目:見た目と中身が違うことってよくある

投稿順間違ってました・・・こっちが先です

 「マッスルダックちゃああああん!!!」

 

 その羽毛なのか筋肉なのか、さーわらーせてぇえええ!!


 勢いよくスライディングキャッチで先頭のマッスルダックに突撃すると、後ろに続いていた筋肉部隊は、クモの子を散らすように四方八方へ逃げていった。

 (※現実は鳥獣保護法により禁止さr)


 ……うわぁ、見た目詐欺だぁ。

 ガチムチの筋肉模様に見えたけど、実際はただの羽毛だったらしい。しかもその毛、大福みたいにモチモチしていて、シルクのようにさらっとつるっとしている。手触り、最高。


 失礼して、顔をうずめる。

 くぅ……しみるぅ〜……。

 まるでビールを一口飲んだあとのような、謎の感動がこみ上げてくる。


「……マッスルダックが、豆鉄砲食らったみたいな顔してるよ……。人生で初めてみたよ……豆鉄砲食らった顔」


「やったね!一つ賢くなったね!ついでにマッスルダックの筋肉は見た目だけだったよ!実際はもちっ、さらっ、つるっとだった!あ、二つ賢くなったね!」

 

 羽毛に顔をうずめたまま、早口で感触レポートを続ける。


「うわぁ……いつ使えるんだろ、その水餃子の食レポみたいなトリビア……」


 後ろから聞こえる、たぶんドン引きとちょっと呆れた声。

 でも気にしない。今はこの羽毛を堪能する時間なのです。んふー。


 しばらく堪能したあと、マッスルダックさんにはさくっとポリゴンになってもらった。私の血肉(けいけんち)となって、生き続けてくれ。


 ちなみにインベントリに入ってきたドロップ品は『ちょっと硬いダック肉』だった。

 ……肉質は固いんかーい!


 さて、もう少しレベルを上げたら、ブルンヴァルトに向かいますか、と振り返ったそのとき。先ほどまで青々と茂っていた草原に、影が落ちた。


 ん?雲でも通ったのかな?


 ――刹那。


「左によけて!!!」

 

 みぃの叫び声が響く。


 咄嗟に言われた通り、左に転がるように避ける。

 直後、今しがた自分がいた場所には、灰色の拳が地面を抉り込んでいた。

 

【★オークリーダー】

 見た目こそオークと同じく二足歩行のイノシシ型だが、サイズは倍以上。全身は灰色の肌に覆われ、ただならぬ存在感を放っている。


「うわっ、危なっ!ありがとう、みぃ!てか何こいつ?!あと星マークって何?!」


 さっきまでマッスルダックを堪能していたとはいえ、ここは草原。

 周囲にモンスターの気配はなかったはずなのに、どこからともなく突然現れた。


「なんでリーダーのポップ場所がここなの?!いつもはもっと奥の方で出るのに!星マークは中ボスの印!こいつ、私でもきついかも!全力で攻撃するから、ルーイはタゲ取って!」


「オッケ!やーい、土管野郎!【挑発】!」

 

 上半身は裸……うん、たぶん野郎だよね?胸に鉄板の防具つけてるけど平たいし。

 腰を落とし、盾をしっかり構える。右手の短剣もいつでも攻撃できるよう盾の内側で握りしめる。

 

 上から叩きつけるように、左右交互に灰色の拳が唸りを上げて振り下ろされる。

 左、右。そのたびに盾の角度を微妙にずらし、衝撃が直撃しないように引きながら受け流す。

 

 「ぐっ……重っ!!」


 盾越しに伝わる衝撃が腕を通じて全身を揺らし、思わず片膝を地面につく。HPバーがじわじわと削られていくのが見えるが、同時に、減っていたはずのゲージがわずかに押し返すように戻っていく。


 片膝をついたこの姿勢も、システム上は【集中回復】の座位と判定されるらしい。削られながらも、わずかに回復が追いついている。ギリギリだが、まだ耐えられる。

 

 

「【ポーションボム】!」


 背後から、みぃの声とともにガラス瓶が飛んだ。

 瓶はオークリーダーの肩に命中した瞬間――


 ドォォオン!!


 激しい炸裂音とともに、爆煙が巻き上がる。


「ウガアァアアアアア!!」


 オークリーダーが怒声を上げ、体をのけぞらせた。

 肩口から煙が立ち上り、灰色の肌が一部焦げている。


 「ルーイ、このままヘイト維持して!」

 

 みぃはリーダーの注意を引かないよう、一定間隔時間を空けてから攻撃し、戦場を駆け回る。

 

 「ナイス!おけ!はいはーい、こっち注目〜!【挑発】!そして、足元がら空きだよ!」


 丸太のような太ももに短剣を突き立てる。

 再び怒声が響き、血走った目がギロリとこちらを捉える。絶対にみぃの方には行かせない。


 次の瞬間、リーダーが地面を蹴った。

 巨体とは思えないスピードで突進してくる!


 両手で盾を構えた瞬間、風を裂く音とともに拳が直撃。

 盾ごと弾き飛ばされ、HPが一気に半分以上削られ、体が宙を舞った。


 「ぐっ……!!」


 地面を転がりながらも、なんとか体勢を立て直そうとするが、すぐさま横薙ぎの拳が迫る。


 しまっ……構えが間に合わない――!


「【フレイムピッチャー】!」

「【アシッドボム】!」

 

 みぃの投げた瓶が立て続けに背中に命中。

 炎が巻き上がり、酸が皮膚を焼き、煙が立ちのぼる。


 「グガアァア!!」


 ひるんだ隙に、左へ回避して盾を構え直す。

 

「ナイス!助かった!」


 だが、オークリーダーはみぃを次のターゲットに定め、再び突進を開始する。その巨体が、怒りのままに拳を振り上げながら迫った。


「……いかせるか!【挑発】!」


 だが、オークリーダーの足が一歩早かった。

【挑発】が届く前に、巨体は範囲を抜け、拳を振り上げたままみぃへと突進する。


 「そんなっ……!」


 すぐにオークリーダーの背中を必死に追うが、距離が縮まらない。

 足の遅さが、今この瞬間だけは憎らしい。

 間に合え!!!

 

 心の中で何度も叫びながら、足を必死に動かす。

 だが、みぃとの距離がどんどん近づいていくのは、オークリーダーの方だった。

 

 このままでは間に合わない……!

 このままじゃ――!


 オークリーダーがあと数歩踏み込めば、みぃがいる。


 「みぃ!!!!」

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