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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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20/66

18羽目:天邪鬼と書いてネコと読む

 村を出てしばらく歩くと、道は森へと続いていた。木々の隙間から朝の陽射しが差し込み始め、足元の草はしっかりと根を張っている。

 間伐が行き届いているのか、森は整然としていて、自然の中にも人の手が感じられた。


 奥へ進むにつれ、昨日よりも少し手強いモンスターが姿を見せ始める。おなじみのスライムも現れたが、今回は見慣れた青いブルースライムではなく、マスタード色のイエロースライムだった。


 スライム系はコアを抜けば倒せる。手袋が壊れると面倒なので、いつも通り素手でコアを抜こうと右手を突っ込んだ――その瞬間、激しい痛みが走った。


 火傷なんて比じゃない。電流が走るような、痺れるような痛み。

 顔をしかめながらもなんとかコアを掴み抜くと、イエロースライムはポリゴン状に崩れて消えた。


「大丈夫?!今までと違って、めっちゃHP削られてるよ?!しかも火傷と痺れ、両方デバフついてるじゃない!これ使って!」


 みぃがインベントリから小瓶を取り出して割ると。

 スーッとしたハッカのような感覚が広がり、痛みと痺れがすぐに引いていく。


「イエロースライムって、ブルーより強烈な酸性で溶かすのかな……火傷と電気ショックを同時に受けた感じだったよ、ハブクラゲに刺されたときのこと思い出してびっくりしたー」


「それ、次刺されたらアナフィラキシー起こすやつじゃないの……。いやな記憶思い出したのなら、今日はもうログアウトして休む?」


 確かに、あの痛みはリアルを思い出すほど鮮烈だった。

 痛みだけで言えば、あの山での出来事が一番だった――そう思い出した瞬間、胸の奥にじわりと重さがのしかかる。

 鋭い痛みが、ちょっとだけ悲しい記憶を引っ張り出した。


「問題なっしんぐ!静電気みたいでびっくりしただけだよ!ほら、この通り!」


 ニカッと笑って、力こぶを作る様に見せる。いけないいけない、心配をかけてしまう。


「ルーイがそう言うなら……でも、無理はしないでよ?はい、お手!」


「わふっ!って犬じゃないわい!……ん?なにこれ?」


 みぃの手にお手をしたら、何かを渡された。

 確認すると、『異常状態回復』の小瓶だった。


「毎回私が駆け寄って使うの手間だから、自分で持っておいて。あと回復薬もね、他にも何かいるものあるかな……」


 インベントリと睨めっこしながら、みぃからアイテムが次々転送されてくる。

 転送できるんかい!まったく、素直じゃないネコみたいで、そういうところも可愛いんだけどねぇ。

 ついでにステータスを確認すると、さっきのイエロースライムでレベルが13に上がっていた。

 何も考えず、ひたすらVIT(硬さ)に数字を振っていく。むふふ、一石三鳥(いちVITさんちょう)計画「鳥を受け止め、羽毛に埋もれて、もふもふする」が順調に進んでおる。


「ねぇ、もらったアイテムって値段よくわからないけど、高いの?」


「んー?それ私が作った物だから、別に大したことないよ」


 さすが錬金術師!まぁ、みぃの場合はやばい液体が入った、でっかい釜をぐるぐるかき混ぜているのを楽しんでそうだけど。


「……なんか失礼な事考えてるでしょ」


「いやいやいや!さすがって思っただけ!嘘ついてない鳥に誓ってもいい!」


 本当にそう思ったもん、前半部分だけ。でも問い詰められたら困るので、こういう時は話題転換すべし!


「そういえばさ、特別経験値って言ってたけど、あれっていつまで貰えるの?」


「Lv40までよ。今のサーバーレベルの上限と同じね。次のアップデートで上限も引き上げられる予定だけど、後発組が先発組に追いつきやすいように、今はボーナスがついてるの」


「ほえー……なんて初心者に優しい世界……」


 しかも、戦うだけじゃなくて、みぃのような生産をメインにしている職業も、製作をしていると経験値が入るシステムになっているらしい。

 なのでサーバーのトップを走っている戦闘メイン勢はLv40の人ばかりだけど、生産勢も生産を沢山していれば追いつけるとのこと。みんなに優しい世界だった、ほろり。


 レベルが上がるたびに、少しずつ行動範囲が広がっていった。

 気づけば、かつてよくお世話になっていたモンスターたちの姿も、次第に見かけなくなっている。

 丘が幾重にも重なり、ところどころに木々が群れをなす草原地帯。

 そんな開けたフィールドに出ると、今度は人型に近いモンスターが目立つようになってきた。


 そして今は、もっぱら戦っているのが、緑色の肌をした二足歩行のイノシシ【オーク】だ。

 こちらのSTR(筋力)が足りなくて、オークを倒すのに時間がかかるようになってきたから、挑発スキルでターゲットを引きつけておいて、あとはレベルの高いみぃが仕留めるという連携スタイルにシフト中。


 力不足でみぃに頼りっきりなのが、ちょっと申し訳ない気持ちになりつつも、何体目かのオークを倒したとき、頭上で14回目のファンファーレが鳴り響いた。


「いつもは1人だと回復薬結構使うんだけど、ルーイがターゲット取ってくれるから、私でも倒しやすいよ。あと、Lv14おめでとう」


 え、褒められた!?

 うちでも役に立ってるってこと!?


「え?そう?うへ、うへへへへ」


「うわ、笑い方きもっ」


 きもくないわい!むしろ、もっと褒めてくれていいのよ!?


 そんな掛け合いをしていると、丘の向こうから白い点が規則正しく列をなして、こちらに向かってくるのが見えた。よく見ると、某保険の宣伝にでている、白いアヒルみたいなモンスター……なんだけど、すんごいムッキムキである。


【マッスルダック】


 その名に恥じぬ、まるでボディービルダーのような肉体。羽毛がムキムキしてる。うん、羽毛が。腹筋もシックスパックに割れているが、羽毛だ。


「鳥!でも羽毛がムキムキ?!それともムキムキだから羽毛もあれなの?!ちょっと触ってくる!」


「えぇ?!倒すじゃなくて触るなの?!」


「鳥がいたら触るか埋もれるかの二択でしょ?!」


「そんな二択いやよ!三択目の倒す選ぶよ!」


 まったくもう、みぃはバイオレンス脳なんだからぁ!

ちなみにマッスルダックの泣き声は「バルクワッ!バルクワッ!」

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