ミニ番外編:盾と精霊王の約束
ルーイが出ていくと、部屋に静寂が戻った。
「アイギス様」
傍らに控えていた聖騎士が、静かに問うた。
「あの者は……精霊王の想いを受け継げるでしょうか?」
妾はしばし沈黙し、揺れる光の奥にある記憶を辿った。
……遠い昔。「失われし光の戦い」と呼ばれた大戦があった。今では昔話に過ぎぬがな。
その戦いから世界を救った英雄。すべての根源を封じたのが精霊王。
『アイギス、お主は盾だが守られる覚悟はあるか?』
記憶の中にある、穏やかで温かな声。磨かれる音。掌の体温。
『余はある。今まで多くの者に守られてきた。その想いを力に変え、この世界を守りたい。だから――余にも守らせてくれ。その想いを力に変えよ。そして……余を守ってくれるか?』
妾は盾だ。守るのが務め。
なのに――なぜ守らせてくれなどと言うのか。
『妾を何だと思っておるのですか。盾が守らず、誰が主様を守ると言うのです』
妾には理解できぬお方だった。
それでも主様は、いつも優しく微笑みながら、ゴツゴツとした手で妾を丁寧に磨いてくれた。
だが、妾は守れなかった。
『すまない、アイギス。余の力が及ばなかった。残りのすべてを使い世界を切り離す』
『主様! ならば妾もお供致します! どうか、共に――』
『ならぬ。お主には余の意思を継いでほしい。この先、何百年もかけて世界は必ず変わる。だが、余はおらぬ。だから、お主が世界を繋ぐのだ。余の願いを守ってくれるか……? この世界が再び動くその時まで』
永遠に等しい別れ。
託された想い。
主様は……嘘つきじゃ。結局、妾に守らせてはくれなんだ。
――主様が守ろうとした多くの者の中に。せめて……ご自身も、入れてほしかった。
だからこそ――ルーイよ。
お主ならば、きっと。
「……あぁ、きっと受け継ぐじゃろう」
想いを託すように、光が静かに揺れた。




