表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/109

97羽目:パラディン試験の始まり

 「よし、仕事終わり! 今日こそやっとパラディン試験だ!」


 体調とも相談してゲームは数日お預けすることにしたから、試験を受注してから二日。ゲーム内では六日以上も経ったことになる。


 あの後、みぃに不合格になりかけた話をしたらちょっと同情された。


 同情するなら鳥もふを! ということで、ずぶ濡れになって、粟穂(ミルシード)を纏ったら大量のケッコーちゃん達に囲まれた。なんという羽毛天国……! みぃが回復してくれたおかげで、結構長いこと埋もれていられたから満足である。


 まぁ、数が多すぎて結局ポリったけどね。ギルドホームでログアウトするつもりだったし。死に戻って結果オーライ。


「ふぅ、ストレッチ終了。それにしても、もっふもふだったなぁ……次はマッスルダックの平たいクチバシで突かれて、モチモチされたい。ふふふっ。想像するだけで幸せ……おっと、そろそろ時間だ」



 ポッポイン



 瞼を開けると、いつものギルドハウスのベッドに身を沈めている。ノック音がしたので、ドアを開けようとしたら、銀髪エルフが先にひょこっと部屋に入ってきた。


「入ってもいい?」


「返事聞く前に入ってますがな」


「恋愛ゲームならお着換えイベントが発生する所よね。ちょっと脱いでおく?」


「脱がないから!」


 いつものじゃれ合いに頬が緩んでしまう。たった数日なのに、久々な感じがするなぁ。毎日連絡は取ってるけど、文字だけだったしね。アバターでもこうやって会えるのが嬉しい。


 さて、まずはご飯だ。甘いのは……まだ、やめておこう。激甘ドリンクを思い出してブルッと寒気がした。今日はコーンポタージュ風スープとボアベーコンサンドにしよう。そうだ、小粒のフルーツ飴も作っておくかな。赤のコアベリーと青いルーナベリーをコーティングして完成だ。


 ♦


「久々のルーイごはん美味しかった、ごちそうさま。このまま試験に向かうでしょ? 鳥追いかけて迷子にならないでね? あっ、ポーション類足りそう? 利息付きで渡せるわよ」


 子供じゃないんだけど。まぁ、こうやって弄りつつ心配してくれているから、嬉しいけどね。ただ、利息は辞めようか。今までの分も入れたら破産ってレベル超えちゃう。


「鳥は多分追いかけない……かな? ポーションも大丈夫、ありがとう。でも、ちょっと緊張してきた……こういうときは手のひらに鳥って三回書いて飲もう」


「色々突っ込まないでおくわ……とりあえず、落ちたら鳥もふ禁止だから頑張ってね」


「何がなんでも一発合格します!」


 教会につくと、セレナさんとユナさんが聖堂内を掃除していた。


「おはよー、かなりお待たせしちゃってごめん。準備整ったよ!」


「ん、気にするこったァねぇぞ。ユナはもう行けンだろ?」


 ユナさんは慌てふためきながら、木箱を被ってから「はい!」と力強く返事をしていた。それを見て、セレナさんは笑いを堪えながら肩を震わせている。


「ンンっ……! さて、ポータルだすぞ。いつもの定期浄化みてぇなもんだから、あまり力いれすぎんなよ。じゃ、精一杯やッてこい」


「うん、いってきます!」


「はい! 頑張ります!」


 光の輪に踏み入れると、全身がふわりと浮遊して足元から重力が戻ってきた。家が数十件ぽつぽつと並ぶ小さな村。石壁に木屋根の家々が並び、中世の田舎町のような景色が広がっている。


 さて、ここからどうしたらいいんだろう?


「ルーイさん、まずは村長さんの所に向かいましょう」


「おっけー。そういえば、定期浄化って言ってたけど、決まった時期があるとかじゃないんだね」


「ええ。瘴気が発生した場所に派遣される形です」


「瘴気って、放っておくとどうなるの?」


「触れた生き物は自我を失い、見境なく襲ってくるようになります」


「うわっ、それってユナさんも危ないじゃん」


「聖職者は神のご加護があるので大丈夫ですよ。あと、新世界人(ニュービー)も同じように守られているので、凶暴化することはありません」


 へぇ、そういう風になってるんだ。本当に作り込んでるなぁ、このゲーム。説明を聞いていたら、いつの間にか目的の家にたどり着いていた。木の扉を叩くと中から声がして、しばらく待つとドアが開く。


「はーい! お待た……えっ――ど、どちら様でしょうか?」


 出てきた中年の女性はこちらを見て狼狽えている。まぁ、目の前に木箱を被った人がいたらそうなるよね。あれ、これ下手したら門前払いの可能性ってない?


「教会から派遣されました、巡礼者のユナです。こちらは護衛のルーイさんになります」


「あら……教会の方でしたか。村長は中にいますので、どうぞ」


 なんとかなりそうでよかった。しかし、ユナさんは木箱で視線を克服できたみたいで、堂々と受け応えしている。案内された部屋に入ると、初老の男性が書類を読んでいた。こちらを見て一瞬ギョッとしたけど、すぐに気を取り直して対応してくれた。


「村長のウォルターです。急なお願いにも関わらず、対応していただいて、本当にありがとうございます。お二人の訪問があと数か月遅ければ危ないところでした……今年は例年より瘴気が早く強くなっていて……」


「ええ、聖女様から伺っております。皆さま、不安でしたよね。ですが、浄化さえすればすべて元通りになりますのでご安心ください。早速、ご案内頂いてもよろしいでしょうか?」


 その言葉を聞いて、ウォルターさんは安堵するように胸を撫でおろした。そのまま案内されたのは、村はずれの森の奥にある洞窟。


「こちらが、石碑が祀られている洞窟になります。お二人には加護があるので、瘴気は大丈夫かと思いますが……いつ凶暴化したモンスターが出現するかわからないので、お気をつけください」


 瘴気って目に見えるのかな? とりあえず、モンスターに気を付ければいいか。

 洞窟内は村の人が管理しているおかげもあって、奥に続くように照明クリスタルが施されている。魔力石ランタンがあるとはいえ、暗いのは苦手だからよかった。でも、足元がゴツゴツしてるから、気を付けないとね。


「ユナさん、足元に気を――」


 盛大に転んだ。

 そして、被っていた木箱から『バキッ』と音がする。


「ひゃぅ! いひゃい……あ、は、箱が……!」


 顔の部分が壊れてしまったことに気が付いて、何とか隠そうとして、木箱の向きをくるっと回す。それ、目が見えないんじゃ……?


 ——そう思った瞬間。

 ウォルターさんがユナさんを見てわずかに声を上げた。


「そ、その髪! まさか……忌み色……」


 彼は、恐ろしいものを見たかのように、一歩だけ後ずさる。

 うわずった声を聞いて、ユナさんは慌てて後頭部を手で隠そうとしたが、箱が落ちて頭が完全にさらけ出された。


 忌み色? ……どういうこと?


「ぁ……ごめんなさい……ごめんなさい……」


 ウォルターさんは、一瞬だけ言葉を探すように視線を彷徨わせた。


「いえ、責めているわけでは……。ただ……この村にも、二色持ちは穢れを引き寄せると信じている人もおりまして……。なので……村の者の前では、あまり目立たぬようになさってください。それでは、私はこれで失礼します……」


 ウォルターさんの声が洞窟の壁に吸い込まれるように消え、重苦しい空気だけがその場に取り残された。


 もしかして、過去にもこういうことがあったから、視線が怖いのかな。……でも、すぐに去ってくれてよかった。これ以上ユナさんが傷つくところは見たくない。


 彼女は地面に落ちている箱を見つめたまま動かない。そっと肩に手を置くと、一瞬ビクリと体が跳ねる。その小さな体は、わずかに震えていた。


 穢れを引き寄せる忌み色……。


 二色ってことは髪だけじゃなく、瞳もだろうか。……ただ、色が違うだけなのに、どうしてこんなに傷つかないといけないんだろう。でも、聞いたら心の傷を抉ってしまうんじゃないかと不安になる。


 突如、何かに気が付いた彼女が洞窟の奥を見て呟いた。


「っ……来ます」


「え?」


 ――洞窟の奥で、何かが動いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ