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VRゲームで鳥をもふもふしたいだけ!  作者: 音夢


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95羽目:聖騎士への試練でまさかのダメだし

 えっ、一緒に行きたくないとかじゃないよね……? 少しだけ、不安になった。


「……行きたくないとかじゃないからね? 試験って、PT組んでいても別フィールドに飛ばされるから行けないのよ」


 なんだ、拒否じゃなくてよかった。

 でも、そういう風になってるのかぁ。確かに、他の職業なのに試験会場に入れたら変だもんね。だけど、一緒にできないなら試験は一人の時に受けようかな。


「……一人のときにやろうとか思わないでよ。転職したの一番に見たいから事後報告は嫌だからね。試験自体は長く見積もって、一時間もかからないと思うけど……まだ本調子じゃないでしょ? 一旦受注だけして、後日進めてもいいんじゃない?」


 何でバレたの!?

 おかしい、さっきから心の声が全部読まれてる。考え事をしているときのハシビロコウみたいなキリッと顔は完璧なはずなのに。でも、みぃが楽しみにしてくれているように、うちも一番に見せたい。


「わかった……。とりあえず、受注だけしてくる」


「うん、待ってるわね。ちなみに、合格しなかったらもふもふの禁止期間伸びるから、体調万全の時にやるように」


 みぃの期待もあるからね、一発合格してみせますよ。鳥もふ禁止は……絶対に避けたい!

 心の炎を燃やし、教会まで猛ダッシュした。


「お、ルーイ早かッたじゃねェか。って……やる気が漲ってンな」


「絶対に合格しなきゃいけない理由があるからね……ふふっ。禁止になんてさせないぞ……」


「お、おぅ……何かすごい悪の化身みたいな顔になってんゾ……見習いが怯えてッから、普通の顔に戻ろうか……」


 見習い? 辺りを見渡すと、長椅子の影でツートンカラーのおかっぱ頭が震えているのが見えた。


「ユナ。怯えてねェでこっち来い。まだ何もしてねェのに、今からそれでどーすんだよ。本当にやれンのか?」


「だ……だいじょぶ、です!! ぜ、ぜったいに成功して……み、みせますから!」


 なんだろ、バンビー君を思い出すようなあがり症の子だなぁ。

 隠れていた椅子から猛ダッシュしたと思ったら、今度はセレナさんの背中にまた隠れた。しかし、白と黒がきれいに左右半分ずつに分かれている髪色って初めて見るかも。


「は、はじめましてぇ……ゆ、ユナ……で、ひゅぅっ……。いひゃい……」


 舌、噛むと痛いよね……。背が低めなのもあってちょっと幼く見えるけど、高校生くらいなのかな。淡いピンクの服に白いスカート、そして肩には短めの白いケープを羽織っている。緊張をほぐすのと、仲良くなるためにおやつ作戦と行こう。


「初めまして! ルーイだよ。甘い物好きかな? これ、お近づきの印にどうぞ!」


 インベントリから真っ赤なアプリル(リンゴ)飴を取り出すと、彼女の目がキラキラと輝いた。掌ほどのサイズの飴を渡すと、ためらいもなくパクッと口に放り込んだ。よくひと口で入ったね……ほっぺがハムスターみたいになってる。


 さっきは隠れてたから見えなかったけど、この子の瞳も、髪と同じ白黒のオッドアイだ。このゲームで見てきた住民(NPC)たちはどちらかというと西洋顔が多かったけど、ユナさんは東洋よりの雰囲気だった。珍しいけど……じろじろ見るのも悪いし、視線を逸らした。


「おまっ! はぁ……しゃーねェな……。とりあえず、試験内容の説明すンぞ。闇の力を封じた石碑があってヨ、それをユナが浄化していくから、その護衛をするだけだ」


 えっ、護衛だけ? 長時間滝に打たれて耐え続けろ! とか、大岩を砕くまで帰るな! とか言われると思ってた。


「なんで? って顔してンな。こいつはお前の祈りの力を図るもンだ。聖騎士ってのはな、祈りの力で仲間を守る職だから護衛試験はピッタリってわけよ。とりあえず、試験は別フィールドで行うが、まずは加護を授かっておく必要がある。あたいについてきナ」


 祈りの力で守る、か。ふっと、みぃの姿が浮かんできて頬が緩んだ。よしっ、頑張ろう。


 ついて行くと、前に開けることのできなかった部屋のひとつが入れるようになっていた。そういえば、特殊クエストでまたエリア解放されてたし、この部屋のことだったのかな。


 祈祷室みたいな部屋の奥には、大盾が祀られるように置かれていた。その前に、団長と同じ鎧を纏った門番が一人、静かに佇んでいる。


「コイツが受験者のルーイだ。加護を付与してやッてくれ。じゃ、あたいらは聖堂の入口で待ってるからナ」


「うん、わかった。ユナさん、またあとでね」


 口をモゴモゴさせながら、首を縦に大きく動かしているからOKってことかな。その隣でセレナさんはため息を漏らし二人は部屋を出ていった。おどおどしなくなったし、お近づき作戦成功?


 扉が閉まると、青年から話しかけられた。


「受験者ルーイよ。この、伝説の大盾『アイギス』が汝の覚悟を問う。盾に認められし者は加護として力の一部を授かることができる。だが、邪悪なる心が触れると裁きが下る。……足を進め、大盾に触れるがよい」


 ここでダメだったら不合格ってことなのかな。鳥に対してはピュアハートだから、そこで認められますように……。早まる鼓動を感じながら足を前に進める。目の前の大盾は鏡のように磨かれていて、真ん中には女性の顔が装飾されていた。


 ……でかい。 師匠が持っても全身隠れそう。これ、どこ触ればいいんだろ。うーん、この女性の頬あたりにしておこうかな。


 ひんやりとした頬を撫でるようにそっと触れると、盾に反射する光が揺らぎ、部屋の空気が変わった。


「いやん。妾、こんな優しい触れ方されたの久々じゃ。もう、えっちぃ」


 ん? 今この門番の人がしゃべった? でも、話し方と声が全然違ったけど……。


「はぁ……アイギス様……受験者が驚いてますよ。今のはこちらの盾、アイギス様のお声だ」


「妾が伝説の大盾アイギスじゃ。盾じゃから乱暴に扱われることも悪くないのじゃが、優しいのもたまにはいいのぉ。ほれ、ルーイもっと妾を優しく、もっと愛でるように触れよ!」


 盾が……しゃべった?

 真ん中に装飾された表情は動くことなく、言葉を発している。


「え、あっ、こ、こうですか?」


「そんな堅苦しくせずに。ほれ、反対の頬も。さぁ!」


「ンンッ! アイギス様、ちょっとお戯れがすぎますぞ。この者の素質はいかがでしたか?」


「……お主は相変わらず真面目よのぉ、つまらん。ルーイの素質はもう見抜いてあるわぃ」


 思わず返事に困ってしまったから、助かったけど、アイギスさんは、某魔法学校の分類帽子みたいな感じ? それなら、鷲がシンボルのレイブ〇クローでお願いします。そう、心の中で祈るとアイギスさんから衝撃の一言が放たれた。


「ルーイよ。お主、パラディンとしては非常にまずいのぉ」


 ……えっ?


 頭の中で真っ先に浮かんだのは――


「鳥もふ禁止」の三文字だった。

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