1章 その5
1800年代のドイツで、書かれた絵本みたいですね。作者は、ヘルマン=ヒューストンという方だそうです。」
友里が、パソコンで調べ晴人に報告する。
晴人は、随分昔の絵本なんだなと言って驚いていた。
「…日本に、入って来たのは1800年代後半で、明治後半から大正の初め頃です。」
「…古本とかで扱ってないのか?」
「現在は、絶版状態だそうです。その上、作者も既に亡くなっていて、入手は非常に困難な状態ですね。」
「そう…ですよね。」
深春が肩を落とした。実のところ、深春に出来ることはやってきている。色々な書店に連絡をしてみたり、出版元に電話をかけて問い合わせたりしていた。しかし、絵本の手がかりは掴めず限界を感じていた。
「…すごく、大好きな絵本で、毎日、毎日、繰り返し読んでて、それこそ、本が擦り切れてボロボロになるくらい読んでいて、一生の宝物だったんですけど…」
「だった?どういう事だ?」
「大好きな絵本を、もっともっと色々な人に見せたくて持ち出したら、無くしてしまって…」
「親とか、警察には言わなかったのか?」
「祖父と母に話をして、一緒に探しに行ってもらったんですけど…全然見つからなくて 」
深春の悲しそうな言葉に、晴人達は心痛な面持ちをしていた。深春が本当に大切にしていたという気持ちがひしひしと、伝わってくる。
「後から、祖父に頼んで、出版元にも問い合わせてもらったりしたんですけど先程、仰られたように取り扱っていないと言われて…でも諦めることができなくて…」
「なるほどな…でも何で今頃また探そうと思ったんだ?」
馨が、鋭い疑問をぶつけた。馨の質問を聞いた深春の表情が沈む。
「実は、祖父が亡くなって…祖父の遺品を整理していたら、写真が出てきて。」
そう言って深春が、色褪せた一枚の写真を取り出した。写真には、白髪頭の男性と幼い頃の深春が写っていた。
「小さな頃の私と祖父です。祖父は本の読み聞かせるのが好きだったみたいで…」
「拝見してもよろしいでしょうか?」
「はい…。」
深春から写真を受け取る。そこには顔をくしゃくしゃにして優しく微笑んでいる白髪頭の男性と、男性の膝の上で楽しそうに絵本を見ている小さな女の子の姿があった。この写真を見ていると何か熱いものが、こみ上げてくる。晴人は何としてもこの依頼を解決してあげたいと思った。
「祖父との思い出なんです。だから…一目でもいいから、手に取ってもう一度読んでみたくて。でも、詳しい手がかりも何もなくて…」
深春の頬を涙が一筋伝う。
「なるほど…ね。ま。一筋縄ではいかなそうだけど俺達は、探偵だから。」
「えっ…?」
「ハッ、そりゃあそうだ。探偵が探せないんじゃおしまいだよな…」
「私達が、必ず探し出してみせます。」
「皆さん…」
「森山さん。ご依頼承りました。必ず、お爺様との思い出の絵本探してみせます。」




