8章 その4
「もうじき、こちらに来ると思うんですけど。」
「はいよコーヒー、一丁。友里ちゃん。今日もべっぴんさんだねぇ。」
「ありがとうございます。」
淡々とお礼を言って、珈琲に口をつけた。
マスターは、その感じがたまらないらしく嬉しそうにカウンターの奥へ消えて行った。
「依頼か…久しぶりだな天宮」
「そうだね。一月振りくらいだったかな」
「正確には、三日と16時間です。」
「適当すぎんだろ天宮…」
えへっと言いながら晴人は舌を出した。二人は、そんな晴人をスルーして話を進める。
「今日の依頼ってのは、どんな依頼なんだ?」
「あ、今日はお客様といっても依頼ではなくて。」
「?依頼じゃないのか?」
「ええ。」
「そうなんか」
晴人はいささか退屈そうに、再びソファーに寝そべった。
「お客様は、高校生の女の子ですよ」
「って女子高生かよ…珍しいな。てっきり爺さんとか婆さんかと思ったぜ。」
寝そべって話を聞いていた晴人の顔がニヤリとする。お客様が嬉しかったのか、女子高生が良かったのかわからないが、どちらにしてもイケメンが台無しである。そして、二人の会話が止まりしばらく、沈黙が流れる。それから、少ししてカランカランと鈴が鳴りカフェの扉が開いた。
「へい!らっしゃい」
マスターが声をかける。それに、失礼しますと控えめな声で答え女の子が店の中へ入って来た。
「あ、あの。この間はお世話になりました。」
「ああ。あん時のお嬢ちゃんか。奥へ入んな。」
マスターは、読んでいた新聞をカウンターに置いて、事務所に案内する。女の子は事務所に向かったのを確認すると。マスターは、カウンターに戻って再び、新聞の続きを読み始めた。女の子は、ホワイトボードに書かれた簡素な看板の前に立ち止まり顔を覗かせた。
「あの、先日はありがとうございました。」「お待ちしていました森山さん。どうぞお入りください。」
深春は、事務所に入って来た。深春は晴人達を見るなり何となく嬉しそうな顔になった。深春は、友里に促されソファーに座った。
「皆さん三日ぶりですね。」
深春が、晴人達に挨拶をした。その声は依頼をした時とは、全然違っていて明るかった。




