8章 その5
「今日は、天宮さん達にお礼を言おうと思って。」
「お礼?」
そう言って、深春は紙袋の中から菓子折りをだした。この菓子折りは、この辺じゃ有名などら焼きで結構お高い値段らしい…。茶色っぽい紙にが目印である。
「これ、錦堂のどら焼きじゃん!」
「良かったら、皆さんで食べて下さい。」
「マジで!?やった!」
「天宮、もうちょい丁寧に開けろよ。」
晴人は、茶色っぽい紙をバリバリと剥がして箱を開けていた。中には六つどら焼きが入っていた。晴人達はめいめいにどら焼きを手に取っていく。
「マスター、珈琲おかわり!」
「あいよ!」
店の方からマスターの威勢の良い声が聞こえた。ほどなくして珈琲の良い香りが漂ってくる。四人は、珈琲の香りを楽しみながらどら焼きを齧っていた。深春は、マスターの分のどら焼きを持っていくと、マスターは嬉しそうに笑った。そして、珈琲が入るまで、お菓子を用意してくれた。深春は、ありがとうございますと言って事務所に戻った。
「マスターさんからお菓子を頂きましたよ。」
「へぇ、どれどれ?」
馨は、左手に煙草を持ちながら、お菓子を物色した。馨に習って晴人達もお菓子を選んでいく。
「ところで森山さん、絵本は読んでる?」
晴人は、お菓子をつまみながら、深春に質問した。実は、晴人が一番気にしていた部分であり、基本的には、依頼を解決した後の事は関与したりしないように心掛けているが、解決後の事はやはり気になるものだ。
「はい!毎日欠かさず読んでいます。」
「どでかいプレッシャー貰っちまったからな…」
「でも、森山さんならやり遂げそうな気がします。今のうちから、サインを貰っておいた方がいいかも、知れませんね。」
「ちょっ、友里さん!気が早すぎです!」
深春が、顔を赤面させて友里に抗議した。しかし、深春なら絵本作家としてデビュー出来るのかもしれない、晴人はそう思っていた。たとえ、少し時間がかかったとしても。店内には、珈琲の香ばしくて良い香りが漂っていた。




