7章 その3
「卜部さん…その本ってまさか…?」
卜部は、晴人に本を見せた。その本のタイトルには夜の虹ときらきら姫と書かれていた。本は、綺麗に手入れをされており、古い本とは思えない程だった。この絵本は、書斎の本棚に保管していなかったらしく、別の部屋に置いてあった。
「まさか…この本をこんなに愛してくれる人がいたなんて。」
卜部は、感慨深そうに言った。この本の作者は生前、あまり多くの作品を残していなかった。作品も当時はほとんど売れなかったようで、少なく発行していた。作者の死後、日本にも入って来て古書コレクターやマニアには売れたそうだが、一般では売れ行きが芳しくなかった。やがて、絶版となり姿を消した…という話だった。
「この本は、若い頃に手に入れた本でしてね。私がこの作者の中で最も好きな作品です。」
深春は、卜部の持っている絵本に気づく様子もなくずっと本棚を探していた。その真剣さを改めて確認した卜部は、深春に声をかけた。
「森山さん…でしたね。少し手を止めて頂けますか?」
「はい…?」
深春は、持っていた本を本棚に戻して卜部の方に注目した。深春の手は本によって黒くなっていた。
「貴女が、探している絵本はこちらですね。」
卜部は、深春に絵本を見せた。それは深春がずっと探していた。絵本…夜の虹ときらきら姫だった。深春は、絵本を見るなりあまりの衝撃に声も出せず、両手で口元を抑えながら、へなへなと座り込んでしまった。そして、目に涙を浮かべていた。




