6章 その5
。殺すと言っていた時とは違い、目の力がなく、すっかり死んでいた。
「…すまなかった。もう遅いかも知れんが…本当にすまなかった。許して欲しい。」
卜部は、頭を下げた。小位は、卜部をぼんやりと見つめたまま何も答えることはなかった。そして、警官に促されパトカーへと乗せられた。パトカーのドアが閉まると、サイレンを鳴らし卜部の家を去っていった。卜部は、何ともいえないすっきりとしない気持ちで、パトカーを見送っていた。
「…なんとも言えねえな」
馨は、煙草を取り出し火をつけた。馨の呟きに友里も小さくうなずいて同意する。馨の持っている煙草の白煙が寂しく舞い上がっていた。一同はその白煙を眺めながら、しばらく沈黙が流れていた。そして晴人は、一度出直してから、後日話をしようと考えていた。晴人が、その考えを卜部に伝えようとしたとき、卜部から話を切り出した。
「…ところで皆さんは、一体私にどんな用だったのですか?」
「あっ、いえそれは…」
晴人が口ごもる。深春の依頼の件だがどういう風に言いだせばいいのか晴人は悩んでいた。何でもありません、とは言えなかったしかといって無神経に依頼の話もできなかった。馨達は晴人の回答を待っていた。
「…こんなことになってしまいましたが、何でも言って下さい。私に出来ることなら協力しますよ。皆さんには、助けて頂いたんですから。」
「や、本当にたまたまで…」
「皆さんが訪ねてくれなければ私は、殺されていたかも知れない…」
「まさか俺達も、こんなことになってるとは思いませんでした。」
「私もですよ…」
卜部は苦笑しながら言った。表情はいくらか緩んでいたが、未だに緊張が全て解けたわけではないようだった。卜部の身体がほんの微かに小刻みに震えていて、手で軽く押さえつけていた。その様子を見て卜部の緊張がまだ完全に解けていないことを悟った晴人は、ここに来た理由を話すことにした。晴人達はまず自分の身分を明かし、深春が事務所に来たこと、依頼の事、元出版社だった間中から卜部の話を聞いてここに来た事を話した。
「なるほど、間中君に聞いたんですね…彼にも迷惑をかけてしまったな…」
「こちらも、勝手に家に入ってしまい申し訳ありません。」
「いやいや、私が間中君に伝えておいた事だ。間中君が、皆さんなら大丈夫と判断したのならきっとそうなんだろう…。」
晴人は、黙ったまま視線を下におろしていた。
「…依頼の話はわかりました。外ではなんですし、一先ず家へどうぞ。最も何もおもてなしは出来ませんが。」
「はあ、いやでも…」
「お入りください。来て頂いた上に助けて貰ったんです。このまま帰すなんてそんな事できないですよ…」
晴人達は、顔を見合わせた。そして一同が頷くと卜部の家に再び入ることにした。




