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5章 その5
「う、う」
「思い出したか?俺の名前を」
卜部は、まだぼんやりとしていて答える事ができなかった。中年男性は、その姿をみて舌打ちをした。
「まだ思い出せないのか…。あんたに取って俺は余程印象に無かったんだろうな。」
中年男性は、机の上にあった原稿を持ちながら呟く。その表情は、苛立ちの他に悲しそうで、寂しそうだった。原稿を机の上にそっと、置いて卜部に言った。
「俺は、あんたと会ったことがある。」
「なんだと?」
「俺の名前は、小位当男だ。」
「こぐらい…まさお」
「あんたは、分からないだろうがな。」
小位は、自嘲気味に言った。卜部は、小位を必死に思い出そうとしていたが、思い出すことができなかった。
「あんたにとっちゃそんなもんなんだな…」
小位は、そう言って卜部の口にガムテープを貼ってスタンガンで気絶させた。




