羽
こころは教室に戻って授業を受けた。
ご飯の時間も終わりいつの間にか放課後だ。
クラスの全員は帰るか部活に行っていた。
部活で聖月に会う予定だったが、今日は部活がないことを思い出した。
「…聖月は受験の話をできたのかしら?」
こころはカバンに宿題やクリアファイルを入れた。
「ねえ」
こころは後ろから声をかけられた。
「誰」
「僕だよ。僕。」
「何よ…詐欺みたいに声をかけてきて…」
後ろには制服を着た男性が立っていた。
声は高く、身長は高い。
2年生くらいだろうか?
こころより高く、おそらく…165センチくらいだろうか?
高校生と言われたら信じるくらいだ。
「金髪の女の子は知らない?
髪は…肩くらいの長さの。
友達なんだ。中学生になってから会っていないんだ。」
小学生の頃からの友達なのだろうか。
「…そんな子、この学校では見たことないわね」
…この学校では、だ。
昨日バグと戦った後に助けてもらった女性は金髪で肩くらいまでの長さの髪だった。
しかし月雅中学校の制服ではなかった。
なのでこの人が探している人ではないだろう。
「ありがとう。」
その男性はお辞儀をして帰っていった。
こころはカバンを持ち、学校を出た。
部活がなくて帰る時間が早いのでいつもよりも空が明るい。
歩いて駅まで向かった。
月雅公園の方を見ると華がまた何かのジュースを飲んでいた。
「…また?」
こころは走って公園に向かう。
「華…次は何のジュースを飲んでるのよ」
「今……今は…いちごミルクだよ!」
そのいちごミルクのパッケージは白とピンクで可愛い。
こころも飲んだことがある。
昔から人気のあるいちごミルクだ。
「美味しいわよね、それ」
「そうだよね…!」
こころはそのいちごミルクが飲みたくなった。
金曜日だし…買っても…
「一緒に…帰らないかしら…?」
「いいよ」
華は立ち上がった。
膝からたくさんの鳥が落ちる。
今朝見た鳥だろうか?
どの鳥も辛そうに体を震わせている。
「ひ」
黒い羽が舞う。
カラスの羽のような綺麗な光の色をしていなかった。
この世界の闇を集めたような暗い色をしていた。
「何…」
公園の木漏れ日は華を不気味に照らした。
光を当てると瑠璃紺色になる綺麗な華の黒い髪の毛は心なしか烏羽色に見える。
「…何って何?」
華は笑った。
鳥を踏んだ。
とても可哀想だ。
こころはウエストポーチにゆっくりと手を伸ばした。
華はその手を掴む。
「こころ!帰ろうよ!」
華はそのまま手を引いた。
力が強くこころは一気に華の所へ引っ張られる。
こころは驚きと恐怖で声が出なかった。
漏れるのは小さな息だけ。
足はまともに動かず、膝にあまり力が入らない。
こころはこの華を偽物だと思った。
「華…やめてよ!」
こころは腕を左右に揺らして華が少し手の力を弱くした時に華に掴まれていた腕を離させた。
「何者…?」
こころはウエストポーチからハートを取り出した。
「私?私は橘華だよ?私達親友だよ?」
華は「冗談はやめて」と言うように笑った。




