表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微子の憂鬱  作者: 日和見


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/40

三監の乱

微子の憂鬱 第36話 ―ふは。ふはははは! ついに、ついに始まったぞ! 天下を真っ二つに叩き割る、空前絶後の大内戦が! 私が無位無官の身に落ちぶれてから、二年。 地をうような屈辱の中で積み重ねてきた、あの涙ぐましい努力が、ついに最高の果実を結んだのだ。 都(鎬京)では四男の周公旦しゅうこうたんに甘い独裁の毒を吹き込み、前線では三男の兄・管叔鮮かんしゅくせんや五男の弟・蔡叔度さいしゅくどらの恐怖と不信をあおり立てる。 限界を迎えた三監の兄弟たちは、ついに周の朝廷へ向けて反旗を翻し、しょうの遺民を率いる武庚ぶこうを『盟主』の神輿みこしに担ぎ上げて挙兵した。「歴史の教科書に刻むが良い。これこそが、この天才陰謀家である私が裏ですべてを仕組んだ『三監の乱』だ!」 暗い自室の中、私は溢れ出す愉悦を抑えきれず、狂ったように肩を震わせて高笑いした。 これで終わりだ。私を影から操り、用済みとして惨めに使い捨てにしたあの忌々しい呂望ろぼうも。そして、大王の長子という血統だけで商の後継者の地位を盗み取った、あの生意気な武庚の小童も、まとめて地獄へ叩き落としてやる。 勝負の盤面は、すでに私の計算通りに構築されている。 武庚の治めるいんより東方の地は、元々我が商王朝に深い忠誠を誓っていた諸侯がひしめき合う、新王朝にとっての絶対の敵地。いくら東方に追放された呂望が、現地で塩を作ろうが街道を整備しようが、所詮は孤立無援。あの化け物とて、周囲を囲まれれば手も足も出まい。 一方、前線で挙兵した殷の武庚や三監の軍勢は、都を護る周公旦の本隊と、北方の備えとして同盟者・召公奭しょうこうせきの息子が封じられた国――『えん』の強兵によって、完璧に挟み撃ちにされる形となる。 戦が長引けば長引くほど、敵地に孤立した彼らは補給を断たれ、じり貧になって自滅していくのは目に見えていた。「そうして愚か者どもが互いに殺し合い、共倒れになったその時……!」 周の朝廷は、暴動を起こした商の遺民たちを今度こそ完全に慰撫いぶしなければならなくなる。その時、周が頼れる『商の正統なる血統』であり、なおかつ周の摂政にこれほど尽くしてきた忠臣は――この天下に、私以外に誰が居るというのだ?「今度こそ、私が商の本当の後継者(王)として、君臨してやる。あはははは!」 机の上の竹簡をなぞりながら、私はうっとりと独りごちた。「踊れ、踊れ! 私のてのひらの上でな!」 ああ、そうだ。都で必死に戦うであろう、私の愛しき親友・周公旦。 貴方もこの大反乱を見事に鎮圧すれば、幼き成王を守り抜いた大功臣として、摂政の立場をそれこそ盤石なものにできるだろう。「何、私からのささやかな心配り(プレゼント)だ。反乱という極上の手柄、有難く受け取るが良いぞ、周公旦殿。フフ、フハハハハ!」 己が仕掛けた完璧な計略に陶酔し、私は最高に幸福な未来を確信していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ