表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
微子の憂鬱  作者: 日和見


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/40

牧野の戦い決着

微子の憂鬱 第24話 圧倒的な兵力差を前にしてなお、牧野ぼやの荒野に踏み止まった一万五千のしょうの軍勢。その戦いは、誰の目から見てもただの哀れな足掻きであり、絶望的な玉砕突撃にすぎなかった。 だが――前線を死守する帝辛ていしんの親衛隊たちに、諦観の色は微塵もなかった。「俺たちが一刻粘れば、その分、朝歌ちょうかの民を救う敗戦処理が進むのだ!」「どうせ散る命ならば、天下の反乱軍どもに商の武の恐ろしさを骨の髄まで刻んでやれ!」 後退からの急転回、 突撃、そして猛烈な反撃。帝辛を中心に、剛力無双の豪傑たちが血飛沫の中で躍動する。 しかし、周軍七万に加え、微子びしの演説によって離反した諸侯軍や急造の徴兵軍が合わせて三万。計十万の敵に対し、まともに動ける商の戦力は親衛隊の五千のみ。幾ら鬼神のごとく奮戦しようとも、数の暴力の前に限界は刻一刻と近づいていた。「ガハハハハ! なんだ来ないのか! 情けない奴らめ!」 帝辛の傍らで血の嵐を巻き起こしていた猛将・悪来あくらいは、すでにその身体に無数の矢が刺さり、片腕を失う満身創痍の姿となっていた。だが、隻腕となった今なお、彼は大地を揺るがす咆哮をあげる。「親衛隊諸君! 相手は我らの勇姿に怖気付いて、近寄ることすら出来ぬらしい! ならば我らから出向き、戦の作法を徹底的に教えて差し上げようではないか! ――全軍、突★撃ィ〜ッ!!」 悪来の凄まじい奮戦。その猛打によって周軍の前衛は恐怖に叩き落とされ、敵陣に深い爪痕を残した。しかし、終わりは確実に近づいてくる。一人、また一人と盾が砕かれ、誇り高き親衛隊の数がついに五百を切ったその時。 返り血に濡れた帝辛が、静かに剣を引き、生き残った兵たちへ告げた。「皆……引け。十分に時間は稼げた。また、我らの力を天下の愚者どもに示せたと、思う」 帝辛はゆっくりと、傷だらけの戦士たち、 そして未だ闘志を失わぬ悪来を見渡した。「最初で最後だ。――諸君に、心からの感謝を。ありがとう。……私は、この首を反乱軍の奴らに大人しく渡すつもりは毛頭ない。あと少しだけ……朝歌の城まで、私を送ってくれ」 その言葉を聞いた瞬間、満身創痍の男たちの瞳に、凄まじい命の炎が再燃した。「応ッ!!」「応ォォッ!!」「応ォォォッ!!」 地響きのような叫び。彼らは死に物狂いで、行く手を遮る十万の敵陣を正面から強引に蹴散らし、血路を開いて朝歌へと撤退した。 王都へ辿り着いた時、その数は悪来を含めてわずか百人足らず。皆、いつ息絶えてもおかしくない傷を負っていたが、その顔は、一国の王を完璧に守り抜いた至高の誇りに満ちあふれていた。(嗚武……親衛隊諸君。良くぞ、こんな私のために最後まで……。彼らの誇りを胸に、私も最後を迎えられそうだ) 帝辛は内心で戦士たちを称え、静かに、ゆっくりと燃え盛る宮廷へ向かって歩き出した。 そこへ、投獄から解放され、すでに生き残るための投降準備を済ませた息子・武庚ぶこうが、家族や供回りを連れて近づき、深く頭を下げた。「父上。よくぞ、よくぞお帰りになられました……!」 帝辛は、これから周の過酷な監視下で苦難の道を歩むことになるであろう我が子を見つめ、厳かに告げた。「武庚よ。これからは、想像を絶する苦難の連続であろう。……全ては諸侯の離反を招き、この偉大なる国を潰した、私の政治の責任だ。私をどれほど恨んでくれても構わぬ。――だが、一つだけお願いだ。我が商の『祖霊』に恥じることだけは、断じてしてくれるなよ」 国を滅ぼした暴君の、しかし誰よりも国を愛した父親としての最期の遺言。(ああ……最後まで、この父上は、圧倒的な王のままだ) 武庚は涙を噛み殺し、胸を張って答えた。「――必ずや」「……良し」 帝辛は満足げに頷き、再び歩み出す。そこへ。「しん様……ッ!」 背後から、一人の女が狂おしいほどの愛を込めて抱きついてきた。東方の祖国へ逃がしたはずの寵姫――妲己だっきであった。 帝辛は一瞬驚いたものの、愛しいその身体をきつく抱きしめ、どこまでも優しく問いかけた。「妲己。其方が無事に祖国へ帰れるよう、丁重に手配したはずだが?」「辛様、すみません、お断りさせていただきました。どうか、最後のその時まで、辛様のお供をさせて頂きたく」 「嗚呼、困った娘だ、ではあと少しだけ歩こうか」と

次の話は、胸糞悪いです、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ