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Grim Reaper  作者: Y A


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3/7

契約

  目の前に突如として現れた少年。それはマリエラ。彼女が捜し求めていた存在。死神だった。

「あ、あの…」

 彼女が喋ろうとすると、ケルベロスは咆哮を上げた。影とはいえ自分の首を落とされたのだ。心中穏やかなものではない。

「吠えるな。犬ころ。すぐ終わらせてやるよ」

 少年はそう言い影の中からもう一本剣を取り出した。まさにこれが人知を超えた力「ゼノ」の持つ力「魔法」であった。

「オオオオォオォオ――――ン!!!!」

 凄まじい雄叫びと共に残った影と本体で突撃してくるケルベロス。しかし人間の動きではない身体能力で捌き。あっという間にケルベロスの背後を少年は飛んでいた。

「消えろ……」

 静かな声とは裏腹に二本の双剣による斬撃、轟音の末瞬く間に少年はケルベロスの首を切り落とした。

 その余りの速さにマリエラは驚き言葉が出なかった。それゆえ少年が、闇に消えていくのに少し遅れて気づき慌てて追いかけた。

「ま、待ってください!」

 マリエラの声掛けに少年は応答せず森の中を歩く。マリエラも負けじと走り、改めて少年に声を掛けた。

「あの…まずはお礼を…助けてくれてありがとうございました…」

「別に礼なんて要らないさ。俺はあんたを助けたつもりは無い」

 彼女の感謝の言葉を被せるように少年は冷たく言った。

「魔物が居たから殺した。それだけだ。」

「……そうですか。それでも助けてくださってありがとうございました。ところで貴方は…」

 また被せるように少年は言った。

「俺は死神。あんたが探してる者だ。だが残念だったな、俺は人間の争いに興味なんて無い。魔物を殺す。それが俺の、死神の存在理由だ。」

 そう言った彼の言葉に、マリエラは違和感を感じた。それは少しの前の会話からすこしずつ感じていたものだ。

「ち、ちょっと待ってください。私まだ貴方にそのお話をした覚えはありません。いつから居たのですか?」

 マリエラは彼に対して少し憤りを感じていた。彼の答えがマリエラの想像している通りならそれは感じて当たり前の感情だ。事実その憶測は当たっていた。

「最初からだ。あんたが酒場に入って来た時俺は酒場にいた。俺を森の中で探していた時、俺はあんたの影に居た。」

「影の中に…!?」

「ああ、俺はゼノだ。俺の核はシャドーって魔物の力を使う事ができる。その力で影の中に空間を作り、入ったり、物を取り出したりできるのさ。」

 人知を超えた力。魔法それを操る魔物の核をゼノは産まれた時から持っているという。それゆえその魔物と同じ魔法を操ることが出来る。シャドーはケルベロスより低級の魔物であり、力自体は劣るが同じく影の力を扱う。

「それであんたらの事を影から見ていた。」

「何故?いえそれならなんで…」

 マリエラは憤りを抑えられずぶつけた。

「何故、彼を見殺しにしたのですか!貴方ならばホークさんを助けられたのではないですか!!」

「助ける必要があったか?」

 彼はまた冷静……いや冷酷に発言した。

「な!?」

「あんた達は自分の意思でこの森をさまよっていた。この世界は弱肉強食だ。自分の身を守れなかったのはこの槍の持ち主の力不足だ。」

 影からホークの形見である槍を取りだし。マリエラを一瞥し、続けた。

「いや…もっと言うならあんたのせいだろ。無力で守ってもらう事しか出来なかった弱者のせいで槍の持ち主は死んだ。それだけだ。」

 彼の言葉は確かに正論だった。実際彼女に力があればホークは生きていただろう。死神探しは自分の目的であり、それに彼を付き合わせてしまった。その事実にマリエラは激しい後悔を抑えられず、八つ当たりしてしまったのだ。

「っっ!なら!なぜ私を助けたのですか!」

「言ったはずだ。あんたを助けたつもりは無い。知ってるか?人間が一番油断する瞬間は勝利した時ではなく、勝利を確信した時だ。それはあいつら魔物も例外じゃ無い、だからあんたが助かったのはたまたまだ。」

「そんな……」

「ともかく、俺は魔物を殺すこと以外興味は無い。メリットも無しに手伝う気は無い。他を当たりな。」

 雨がまた降り始めた。

 マリエラは俯き表情は分からない。きっと泣いてるのだろうと少年は思った。闇の森の中に消えようとした。が……マリエラは突如声を上げた。

「メリットがあれば…力を貸してくれますか?」

「なに?」

 少年はマリエラの発言を聞き振り向いた。先程までの彼女は綺麗な翡翠の瞳をしていたがそれはまだ人の範疇だった。だが今の彼女はどうだろうか。白く光るその瞳は少年の魔物のような赤く光る瞳とはまた違うが人ではない人外のものを感じさせる瞳をしていた。

「あんた…ゼノなのか?」

「いいえ。私はゼノではありません。レガトゥスです。」

 レガトゥスそれは光の神が滅びた時、最後の力で作り出した人類だ。その者は世界に一人しか存在せず。その者が死ねばまた新たなレガトゥスが生まれるという。まさに神の使者「レガトゥス」という訳だ。そしてレガトゥスは光の神の力「創造の魔法」を持つと言われてる。

 マリエラは手をかざし創造の魔法を発動した。それは一瞬ホークの槍を再現した。しかし瞬く間に灰となって消えた。

「私は…この力を使いこなすことが出来ない…あなたの言う通り私は弱い!だから誰も守れない」

 マリエラは己の想いを全て吐き出すように叫んだ。力を持って生まれたがその力を上手く使えない葛藤を彼女は抱えていた。

「だからこの力も、私の全て貴方に捧げます!だから私に力を!争いから民を守る力を!優しい人を救える力を私に貸してください!!」

 雨はマリエラの思いに答えるよう激しさをましていった。雨の音は森の中で激しく響き渡る。がそれをかき消すほど痛烈な叫びが森に響き渡った。少しの沈黙の後。少年は口を開いた。

「その力どうやって譲渡するんだ?渡せるものなのか?」

「わかりません。しかしレガトゥスは世界に一人必ず存在すると言われてます。私が死ねば新たなレガトゥスが生まれると思います。」

 マリエラの言葉に少年は呆れたような顔をした。

「それはメリットにならないな」

「ですが、世界には様々な知識、魔法、神秘があります。この力を譲渡できる方法が必ずあると思います。ですから…!」

 彼女は発言に被せるように言った。それは鬼気迫る迫力だった。彼女の決意は本物だった。少年はまた少し沈黙したあとまた口を開いた。

「ひとつ聞く。父親を止めると言ったな。具体的にはどうするつもりなんだ。」

「お父様は今、他国に戦争を仕掛けてるのは知ってますよね?」

「ああ」

「お父様は闇の神を復活させるため、封印をとく「神器」を集めようとしています。正確な場所は分かりませんが代々国王が一つ持ってるとされ、全部で七つあり。それを集めるため戦争を仕掛けてます。」

「それで?…どうするつもりなんだ」

「お父様が戦争を仕掛けるのは神器が他国にあるからです。なので神器をお父様より先に集め、戦争を止めたいのです。」

「集めて。その後は?」

「まずはお父様の真意を問いただします。」

「話し合いが上手くいかない場合はどうするんだ?俺に殺して欲しいってことか?」

 冷酷に彼はマリエラの覚悟を試すような発言をした。少年の予想とは裏腹にマリエラは真っ直ぐ彼の目を見てすぐさま言った。

「いえ…お父様が戦争を辞めない場合は…」

「私がお父様を殺します」

 雷鳴が光った。その光に映された彼女の顔をは先程までの魔物に怯え自分の非力さを後悔していた少女ではなかった。

「…レオ」

「?」

「レオ・ダーク。それが俺の名だ、あんたの名前は?」

 その覚悟にレオは手を差し伸ばした。勿論それは同情、憐れみではなく冷酷な死神として利用価値があると踏んだからだ。だがマリエラは手を差し伸べてくれたことに笑みを浮かべた。

「―――――――――――――――です。」

「……なに?」

 一瞬。ほんの一瞬、彼の顔が驚いたような表情をしたがすぐ、平静を取り戻し呆れながらこれまでと同じく冷静に言った。

「あんた…それ本名だろ。仮にも姫で追われる立場なら偽名を使うべきだ。それであんたもあの男にはそうしていたんだろう。そっちを教えてくれ」

「あ!……そうですね。では改めてマリエラ・フェルスティーゼ…それが私の名前です。」

「おーけ。ならフェルスティーゼ。契約だ。」

先程の雷鳴が嘘のように雨は止んでいた。

 月明かりが漆黒の森の中にいる二人を照らした。それは闇の道を歩み出した。マリエラにとってはまるで、希望の光に見えた。目の前に居るのが己の命を利用価値のある道具としか思ってない死神だとしても、彼女にとっては唯一の光に見えたのだった。

「俺はあんたの父親を止める旅に付き合う。が、その目的が果たされた時、あんたの命、力、その全て俺が貰い受ける。これは死の契約だ……誓うか?…今ならまだ辞めてもいいが…」

「いえ。それで構いません。私は帝国の姫として死神と契約してでも民を守る義務がありますから」

「ふっ。なら契約成立だ。」

 そう言うとレオは手を差し出した。

「俺はあんたの主で、あんたも俺の主だ。」

 月明かりに照らされ、不敵な笑顔で彼は言う。

「よろしくマスター」

「はい。こちらこそお願い致します。マスター」

 そうして二人は漆黒の森の中歩き出した。その道にはきっと無数の屍が転がるだろう。そしてその中にはきっと彼女。マリエラの屍も転がるのだろう。

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