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遅れて重なる 第79話

第79話


「帰ってきた騒音」



「……ようこそ、外宇宙へ」


その声が消えた直後だった。

——ガシャーン!!

建物の外で、 盛大に何かが壊れる音が響いた。

三人が同時に振り向く。

沈黙。


カレンが嫌そうな顔をする。


「……嫌な予感」


直後。

階段を駆け上がる足音。

そして勢いよく扉が開いた。


「ギアァーーァ!!」


飛び込んできた影が、 そのままギアへ突撃する。


「ぐぇっ!?」


ベッドごと吹き飛んだ。

イリスが目を瞬く。

カレンが額を押さえる。


「……やっぱり」


銀髪ツインテール。

ボロボロのジャケット。

泣いているのか怒っているのか分からない顔。


リノだった。


「生きてたぁぁぁ!!」

「死だかと思ったんだからね!?」


「いや俺が死ぬ!! 肋骨!!」


その後ろから、 呆れ顔の少女がゆっくり入ってくる。

長い黒髪。

眠そうな目。

そして手には、 何故かコンビニ袋。

ユリは溜息をついた。


「だから飛び込むなって言ったのに」

「ギアまだ半壊状態でしょ」


リノが涙目で振り返る。


「だってぇぇ……!」

「世界終わるし空割れるし通信全部死ぬしギア消えるし!!」


「情緒が限界だったの!!」


「知らんわ!!」


ギアがツッコむ。

その瞬間。

部屋の空気が、 ようやく“日常”へ戻った。

イリスが小さく笑う。


「久しぶり」


ユリは軽く手を上げる。


「ん」


カレンが腕を組む。


「アンタ達、無事だったの」


「一応」


ユリがコンビニ袋を机へ置く。


「地下シェルターに避難してた」

「途中から世界崩壊し始めたけど」


「サラッと言う内容じゃねぇ」


ギアが呆れる。

リノはようやくギアから離れると、 今度は真顔になった。


「……でも、本当に戻ってきたんだね」


その一言だけ、 妙に静かだった。

ギアは少し目を逸らす。


「まあな」


リノは笑った。

泣きそうな顔のまま。


「バカ」


その時。

ユリが窓の外を見る。


「……で」


全員の視線が向く。

空。

そこにはまだ、 黒い船の残光が残っていた。

ユリが眉をひそめる。


「何アレ」


沈黙。

カレンが説明を始めようとして、 途中で諦めた。


「……長くなる」

「三行で」


「宇宙の外から来た」

「上位存在が襲ってきた」

「人類が同期して追い返した」


リノとユリが固まる。

数秒後。

リノが言った。


「熱?」

「正常」


ユリが即答する。

ギアが吹き出した。

イリスまで笑っている。

カレンだけが不機嫌そうだ。


「本当なんだけど」


「いや無理あるって」


リノが真顔で言う。

だが、その時。

窓の外を、 巨大な光が横切った。

全員が振り向く。

空の彼方。

朝焼けの向こう。

星みたいな巨大構造体が、 一瞬だけ姿を現して消える。

リノの顔から血の気が引く。


「……今の何」


ギアは苦笑した。


「俺も知りたい」


沈黙。

そしてユリが、 ぼそっと呟く。


「……めんどくさい世界になったね」


ギアは窓の外を見る。

壊れた世界。

変わってしまった宇宙。

だけど。

隣には仲間がいる。

泣き虫も。 無口も。 不機嫌も。 孤独だった少女も。

ちゃんと、 ここにいる。

ギアは小さく笑った。


「今さらだろ」


その時。

部屋のモニターが再び点灯する。

全員がそちらを見る。

画面中央。

新しい文字列。


《外宇宙航路:仮設接続完了》

《第一探索チーム 選定開始》


沈黙。

そしてリノが、 ものすごく嫌な顔をした。


「……絶対ロクなことにならないやつ」



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