表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/81

第2部  7話

第2部  


 第7話   「盾の居ない前線」



 赤い警告灯が、通路を血のように染めていた。

 金属床を蹴り、リノが先頭を走る。


「右ルート!異型反応三!」


カレンが、捕捉、解析、立案する


「待ちなさいリノ、突出し過ぎです!」


 カレンが鋭く言う。

 だが本人は既に前へ飛び出していた。


「細けぇ事は後!!」


 ギアは小さく息を吐く。


「……言うと思った」


 その直後。

 通路天井が、爆ぜた。

 黒い塊が落ちてくる。

 異型。

 四足。

 だが関節が異常に長い。

 昆虫みたいに壁へ張り付き、赤い眼だけが光っていた。


《Threat detected》

(脅威確認)


 カレンの端末が鳴る。


「旧地下階層型……っ」


 異型が跳ぶ。

 速い、だが。


「おせぇ!!」


 リノの槍が真横から叩き込まれた。

 火花。

 衝撃。

 異型の身体が壁へ吹き飛ぶ。

 そのままリノが追撃へ走る。

「リノ待っ――」


 ギアが、止める前に。

 壁の奥から、さらに二体。

 リノの顔色が変わる。


「っ、しま――」


 囲まれる。

 異型の爪が振り下ろされた。

 瞬間。

 銀線が空気を裂く。

 カレンのワイヤーブレード。

 二体の脚部が切断される。

 リノが転がりながら離脱した。


「ナイス!」


「あなたは本当に反省しませんね!?」


 怒鳴りながらも、カレンの動きは正確だった。

 回転。

 跳躍。

 細い身体が舞うように宙を流れる。

 まるで演舞。

 新体操みたいな戦い方だった。

 だが。

 一瞬。

 カレンの動きが止まる。

 通路奥。

 潰れた防壁。

 そこに、人影が見えた。

 倒れている。

 整備員。

 既に動かない。

 カレンの瞳が揺れた。


「……また」


 小さな声。

 次の瞬間。

 異型が背後へ回り込む。


「カレン!!」


 ギアが叫ぶ。

 反応が遅れた。

 完全に死角。

 爪が振り下ろされる。

 ――その時。

 轟音。

 重低音と共に、異型の上半身が消し飛んだ。

 衝撃波。

 熱風。

 全員の髪が揺れる。


「……は?」


 リノが固まる。

 通路の奥。

 煙の向こうから、一人の女が歩いてきた。

 長身、コマンド体型、都市迷彩柄の戦闘コート。

 肩には巨大火器、ジャングルブーツ。

 片手には装填式ブレット銃。

 無表情。

 だが視線だけは、ずっとギアを見ている。

 重いブーツ音。

 一歩。

 また一歩。

 彼女はギアの前で止まった。


「無事か」


 低い声。

 ギアが目を細める。


「……ユリ」


 リノが目を丸くする。


「え、知り合い!?」


 ユリは答えない。

 代わりに、周囲へ視線を走らせる。

 異型位置。

 逃走経路。

 破損壁。

 全部を秒で確認していた。

 その後。

 彼女は自然な動作で、ギアの前へ立つ。

 まるで盾。

 完全に“守る位置”だった。


「ここから先は私が出る」


 静かな声。

 だが、圧がある。

 カレンが息を整えながら言う。


「あなたは……いったい」


「分からないか、護衛担当だ」


 ユリは短く答える。

 そして次の瞬間。

 通路奥から、巨大な咆哮が響いた。

 空気が震える。

 リノが笑う。


「っは、デカいの来た!」


 だがユリは笑わなかった。

 銃を構える。

 視線は前。

 ただ一言。


「ギアから離れるな」


 その声だけが、不思議なくらい安心が出来た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ