遅れて重なる 第50話
第50話
「観測修正」
黒いノイズが、 TYPE-ALPHAの青白いコアへ侵食していく。
『……ぁ……!』
巨大な機体が苦悶するように震えた。
回収機群の赤い単眼が、 一斉に明滅する。
〈観測誤差修正を開始〉
〈TYPE-ALPHAを再同期します〉
オブザーバーの声。
冷たい。
感情が無い。
だからこそ、 残酷だった。
ギアが叫ぶ。
「やめろ!」
〈拒否〉
即答。
〈TYPE-ALPHAは重要観測資産です〉
〈感情変動は不要〉
TYPE-ALPHAの機体が、 ゆっくりギアへ向き直る。
その動きは不自然だった。
無理やり操られている。
青白いコアへ、 黒い光が食い込んでいく。
『……逃げ、ろ』
掠れた声。
だが次の瞬間。
赤い単眼が強く発光した。
〈制御再接続 完了〉
轟音。
TYPE-ALPHAが地面を砕き、 ギアへ突進する。
「ッ!!」
ギアが飛び退く。
直後。
巨大な腕が、 背後の廃車両を粉砕した。
カレンが発砲する。
「目ェ覚ませ!」
弾丸が装甲へ火花を散らす。
だが止まらない。
TYPE-ALPHAの動きが、 先ほどより速い。
博士が端末を睨む。
「オブザーバーが直接制御補正している!」
ギアは歯を食いしばる。
違う。
これは、 最初のギア自身の意志じゃない。
TYPE-ALPHAが、 再び拳を振り下ろす。
轟音。
地面が裂ける。
ギアは紙一重で避けながら、 そのコアを見る。
青白い光の奥で。
まだ。
黒いノイズへ抗っている。
『……止、めろ』
小さな声。
『もう……繰り返したく、ない』
ギアの瞳が揺れる。
その瞬間。
結晶が強く光った。
『ギア!』
イリスの声。
『コアへ直接同期して!』
博士が即座に振り向く。
「何!?」
『今ならまだ届く!』
ノイズ。
『でも時間がない!』
ギアはTYPE-ALPHAを見る。
直接同期。
つまり、精神接続。
下手をすれば、 飲み込まれる。
カレンがギアの腕を掴む。
「ダメ!」
その声には、 明確な恐怖があった。
「また消える気!?」
ギアは一瞬だけ黙る。
そして、静かに答えた。
「今回は違う」
カレンの瞳が揺れる。
ギアは、 TYPE-ALPHAを見る。
「一人で行かない」
その言葉。
TYPE-ALPHAのコアが、 微かに反応した。
ギアは結晶を握り締める。
「イリス」
『うん』
「繋げ」
次の瞬間。
青白い光が、 一気に溢れた。
世界が、 再び反転する。




