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遅れて重なる 第37話

第37話


「残響」



爆炎が格納庫を飲み込む。

ギア達は崩落する通路を駆け抜けていた。

警報音。

赤色灯。

揺れる床。

背後では、 研究施設そのものが悲鳴を上げている。


「急いで!」


カレンが叫ぶ。

博士は肩で息をしながら、 古い端末を抱えていた、そこには、

同期システムの中枢データが保存されている。


「それ、まだ持って来たのか」


ギアが振り返る。

博士は苦く笑った。


「……全部終わらせるには必要だ」


その目には、 研究者としてではなく。

責任を背負った人間の覚悟があった。

直後。

背後で巨大な爆発。

熱風が通路を突き抜ける。

カレンがギアの腕を引いた。


「ぼーっとするな!」


「わ、分かってる!」


走る、ただ前へ。

だがギアの脳裏では、 まだ白い空間の残響が消えていなかった。

イリス。

オブザーバー。

何度も繰り返された自分。

そして


“未来予測不能”


あの言葉。

それは恐怖でもあり、 同時に初めて与えられた “自由” でもあった。

出口が見え始める。

崩れかけた隔壁の向こう。

夜だった。

冷たい外気。

雨。

その瞬間。

施設全体が大きく震えた。

博士が振り返る。


「炉心が逝く……!」


ギアが目を見開く。


「まだ中に!」


「もう間に合わん!」


博士が叫ぶ。

次の瞬間。

轟音。

白い閃光が、 地下施設を貫いた。

衝撃波。

ギア達は外へ投げ出される。

地面を転がり、 雨水と泥にまみれながら止まった。

しばらく、 誰も動かなかった。

ただ雨音だけが響く。

やがて。

カレンが小さく呟く。


「……終わった?」


博士は崩れ落ちた施設跡を見つめる。

燃え上がる炎。

崩壊した研究区画。

かつて人類の未来を夢見た場所。

その全てが、 今、瓦礫になっていた。


「終わったよ」


博士の声は静かだった。


「少なくとも……あの時代はな」


ギアは空を見上げる。

雨が頬を流れる。

その時だった。

耳の奥で、 微かな電子音が鳴る。

ピッ――

ギアが顔を下げる。

懐。

ポケットの中。

そこに、 淡く光る小さな結晶片があった。

青白い光。

旧式フレームのコアと、 同じ色。

カレンが目を丸くする。


「それ……いつの間に」


ギア自身にも分からなかった。

だが

結晶へ触れた瞬間。

微かに、 声が聞こえる。


『まだ……終わってないよ』


ギアの呼吸が止まる。

博士も気づいた。

その青い光を見て、 目を見開く。


「……まさか」


雨の中。

小さな結晶だけが、 静かに脈動を続けていた。



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