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遅れて重なる 第26話

第26話


「出会いと決意」



赤色灯が断続的に瞬く。

警報音。

閉鎖されていく隔壁。

その中でギアだけが、 凍りついたように立ち尽くしていた。


『……やっと、会えた』


再び声が響く。

柔らかく、 どこか安堵したような声音。

だが博士の怒声が、それを裂いた。


『聞くな!』


通信に激しいノイズ。


『その機体は停止したはずだ! なぜ今になって――』


「博士」


ギアが静かに遮る。


「……知っていたんですね」


沈黙。

その沈黙こそが答えだった。

カレンが険しい目で通信端末を見る。


「博士……あなた何を隠してるの?」


返答は無い。

代わりに格納庫奥のシャッターが開き、 武装ドローン群が降下してきた。

自動防衛システム。

だが照準は侵入者ではなく――

ギアへ向いている。


「ッ、おい……!」


カレンが息を呑む。


〈危険因子確認〉

〈同期体コード:G-03〉

〈封鎖対象として再指定〉


ギアの脳裏で、 何かが繋がった。

“G-03”

それは型番ではない。

処分番号だ。

その瞬間。

記憶の断片が奔流のように流れ込む。


白い研究室。

ガラス越しの博士。

泣いているイリス。

そして

機械ベッドへ拘束された自分。


『成功すれば、この子は――』


『やめて!』

『同期率が限界を超えてる!』


頭痛。

視界が歪む。

ギアが膝をついた瞬間、 旧式フレームのコアが強く発光した。

次の瞬間。

ーー轟音。

衝撃波が格納庫を貫く。

ドローン群が一斉に吹き飛ばされた。

カレンが目を見開く。


「機体が……守った?」


旧式フレームは、 ゆっくりとギアの前へ歩み出る。

まるで盾のように。

そしてコクピット部が開いた。

暗い内部。

そこから伸びる、 白い光の粒子。

誘うように。

呼ぶように。


『来て』


イリスの声。


『全部、思い出して』


警報がさらに激しくなる。


〈中央炉心、出力異常〉

〈研究区画崩壊まで残り300秒〉


カレンがギアの肩を掴んだ。


「駄目! 行ったら戻れない気がする!」


だがギアは、 ゆっくり顔を上げる。

その瞳には、 迷いと同時に――

確信が宿っていた。


「……いや」


彼は静かに、 開いたコクピットを見つめる。


「最初から、ここへ戻るために俺は――」


その言葉の続きを、 誰も聞くことはできなかった。

格納庫全体を、 眩い白光が包み込んだからだ。






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