第2部 10話
第10話 「守る理由」
地下格納庫。
薄暗い非常灯の中、四人は一時退避していた。
リノが床へ座り込む。
「いや待って情報量多すぎるって……」
「同感です」
珍しくカレンも疲れていた。
端末を持つ手が少し震えている。
ユリは入口警戒を続けていた。
銃を下ろさない。
その背中は、まるで壁だった。
ギアは黙っていた。
頭の中に、まだイリスの声が残っている。
《生きて》
あの言葉だけが離れない。
その時。
カレンが静かに言った。
「……私は、怖いんです」
リノが顔を上げる。
カレンは目を伏せたまま続けた。
「昔、部隊が壊滅しました」
空気が静かになる。
「助けられなかった」
声が弱い。
「だから私は、常に最善を選ぶようにしています」
ミスをしない。
感情で動かない。
冷静でいる。
そうやって生きてきた。
だが。
「でも今、あなたを中央へ渡したら」
カレンはギアを見る。
「きっと後悔する」
沈黙。
リノが立ち上がる。
「じゃあ決まりじゃん」
「リノ……」
「あたし、ギア見捨てる気ないし」
「あんたらも、そうでしょう」
真っ直ぐだった。
迷いがない。
その時。
ユリが低く言う。
「敵接近」
全員の顔が変わる。
重い足音。
複数。
規律正しい移動音。
中央制圧部隊。
ついに来た。
ユリは振り返らずに言う。
「ギア」
「……何だ」
「お前は死ぬな」
短い言葉。
だが重い。
「イリスが命を懸けた理由を、私は知っている」
ギアの目が揺れる。
「え……?」
ユリはそこで初めて振り返った。
静かな目。
「お前は、“最後の鍵”だからだ」
その瞬間。
格納庫隔壁が爆発した。




