Episode31:魚“人”
この世界のTips31:マーマン
この世界に存在するモンスターの一種。
早い話が魚人。基本的な体躯は人間と同じぐらいで、手足にはヒレ、脚部や背中にもヒレがあったりする。また、局部を始め身体の大半は鱗で覆われ、顔面が魚の頭に変換されている。皮膚呼吸と鰓呼吸を併せ持ち、水中が拠点だが陸上でもそれなりに活動可能。
実をいうと一括りにこう言っても二種類あり、人間から生まれたような哺乳類に近い系統と、普通に卵生の魚類系統もある。これらは外見だけでは区別がつきにくく、仕留めたそれを捌いて確認するより他ない。
「ムササビとフクロモモンガとか、アリクイとツチブタとか、見た目やや似てるけど遺伝子はぜんぜん違うやつあるだろ?あれだよ、あれの発展型。」
「まず、私のオリジナルスキルについて説明しておきましょう。一応把握しておいてください」
そう言い、目前の巨大な“マーマン”が反応するよりも速く肉薄したアメリオが、その脚に向かって木刀を叩きつける。だがそれが相手に傷を与えることはなく、代わりにマーマンの頭上に5桁の数字が表記された。ジークは首をかしげる。
「?」
「このように、私のオリジナルスキルを使った場合、私の攻撃は一時的に無効化され、その代わりにダメージを与えた相手に対しそのダメージに基づく数値が相手に加算され、頭上に表示されます。」
「Gyooohhheeeeeeeeehh!!」
わざわざ振り返り指を指しながら説明するアメリオ。当然それを見逃すほどモンスターが脳無しなわけもなく、“マーマン”はアメリオに向かって拳を振り下ろす。
「危ない!」
轟音。土煙。晴れた中から出てきたのは、頭上の数値が数千ほど減った“マーマン”
「そしてこちらがダメージを受けた場合、受けたダメージが与えた相手の数値から減算され、やはり無効化されます。」
そうして彼は再び“マーマン”を殴る。応戦とばかりに相手も殴る。両者ダメージ無効の殴り合いを続ける。
「端的に言ってしまえば、このスキルを使っている限り、相手に対しある程度のデバフや部位的なダメージなどを与えることができる代わりに……。」
相手の頭上の数字は確実に増えていった。そしてその数値がおよそ七桁に到達する直前……。
「Gyaaaoooohhhhhhhaaaa!!?」
“マーマン”の全身に大量の殴り傷が現れ、そのまま息絶えた。
「相手の出すダメージを上回ってさえいれば、たとえ技を使わずとも確実に勝つことができます。」
時刻は5月16日の朝10時30分。地上ではすでにみんなが仕事に勤しんでいる。
場所は街の地下下水道、高さだけで見れば地表からマイナス20メートル前後といったところ。
天候は晴れ。といっても地下なので関係ないか。
巨体が倒れる。と、その轟音でひきつけられたのか、はたまた最初からそこにいたのか、更にマーマンの大群が、その巨大な死体の後ろに現れる。
「ちなみに、こういった集団相手だとその数値が分散されることになるので、必然的にこのオリジナルスキルは不利な状況に陥ることになります。」
「いけしゃあしゃあとそんな自分の弱点まで語ります!?」
「いえ別に。」
ジークの至極真っ当なツッコミにたいし、アメリオは左腕のみ肩をすくめるような仕草をしながら、残った右腕で木刀を振るい、後ろから襲いかかろうとしていた“マーマン”の頭を打ち落として叩き潰した。以下同じ用に見向きもせずに“マーマン”の群れをさばきながら、彼は平然と言い放つ。
「一撃で仕留めることができるような雑魚がいくら群がったところで。そして一撃で仕留められないレベルは基本群れませんし。」
「(あ、そういえばこの人もXランクだった……。)」
遠い目をするジーク。すでにエルヴァを見ているので今更驚かない。
「Gggggghahhaaahhhha!!」
「うわっ!」
そんなジークに、彼と相対していた“マーマン”が三叉槍を突き出す。間一髪、彼はそれに気付き、あわてて剣で弾いた。気がつけば、ジークも複数の“マーマン”に囲まれていた。剣を構え直すジークにアメリオが声をかける。
「油断は禁物ですよ。」
「理不尽!」
「Gyao!!」
「ああもううるさいな!ちょっと黙ってて!『ゲフラッシュト・ザイン』!」
そう言って半ば逆ギレでジークが自身に襲いかかっていた“マーマン”を蹴り飛ばす。すぐさま相手も体勢を立て直し再び襲いかかるが、それに対し彼はすでに魔法力を掌に集中させ、そこから複数個の黒いシャボン玉のようなものを生成していた。
「!!Gggyaaaaaaaoooooohhhhhhaaaaaaa!!!??」
「!」
壁によりかかって戦闘の様子を眺めていたアメリオが、若干驚いたように目を見開いてその様子を見る。黒いシャボン玉に接触した何体かの“マーマン”は、弾けた黒いシャボン玉から水を浴びせられたと思ったその時、突如襲いかかる雷属性ダメージに身悶えしたのであった。
空中をふわふわと無作為に飛び交う黒いシャボン玉、そのうちの一つがアメリオの目と鼻の先までやってくる。アメリオは近くにいたドブネズミ一匹を掴んでそれにぶつけ、結果くたばったネズミをつまむ。
「(……基礎となる水属性魔法力、それも電解質とするための溶質を生成するために地属性魔法力、そして感電のための電気属性魔法力。事実上の魔法3系統同時使用とは、器用な……。)」
「……よし、想定通り足止め程度の性能だな。嫌がらせには向いてるけど、結果的なダメージはそこまで高くなさそうだ。さて次、『ザイルシャフト』。」
しびれから復活した“マーマン”を見てジークはそういい、ジークは屈んで地面に手を置く。と、同時に、“マーマン”の足元から人間の腕ほどの太さがある蔓のような植物が複数本生え、“マーマン”を成長の勢いで、まるで支柱に絡まる朝顔のように拘束する。そしてそれはお互いの“マーマン”のそれをも巻き込み、あっという間に全体がまとめて拘束された。
「こっちは拘束用……ああ、だめだな。」
当然のごとく“マーマン”がじたばたとし、太さが控えめな先端部分がブチブチとちぎれ上半身だけ自由になっているのを見てジークがつぶやく。もちろん、剣を使って相手の突き出す三叉槍の攻撃を捌きながらだが。
「強度が足りないのかな。こんな雑魚相手に十数秒でこれなら、《あいつ》相手に数秒の時間稼ぎだな。あ、でも……。」
ぶつぶつと独り言で分析を行いながら、彼は“マーマン”に歩み寄る。近づいた彼に対し三叉槍を突き出すが、彼はそれを剣で弾いてから掴み、そして自分の方に“マーマン”の腕ごと引き寄せ、その腕に剣を刺した。
「Gggyooooohhhhhhhooohohoooo!!」
「えーっと次は魔法を流し込む……。『アウスヘーレン』!」
彼は剣を抜いてからその刺し傷に手を置き、そこに風属性魔法力を流し込む。器用なことに、風属性の斬撃が“マーマン”の皮膚を除く肉や骨全てを切り刻み、その腕はミンチの入った袋と化した。
「Gyaooohh!Gaaaaaaaahhhhhhh!!??」
「……よし、使えるな!あとは……っと!」
意味不明な左手の負傷にパニックになる“マーマン”を回し蹴りで蹴り飛ばし、
その様子を見て、アメリオはふと考える。
「(『παραλλαγή』の詠唱システムはどこへ……)おっと。」
“マーマン”たちのうち、後ろ側にいた十数体が、アメリオに向けて一斉に三叉槍を投げる。
「『έδαφοςδ・διάφραγμα』!」
素早く屈んだアメリオは地面に手をおいてそこを起点に隔壁を生成、その三叉槍が全て刺さったタイミングで身を乗り出し、前方にいたおよそ5体ほどの“マーマン”をまとめて薙ぎ払う。
「『アクティヴブレーク』!」
木刀を地面に打ち付け、前方の地面を伝って衝撃波が“マーマン”たちを襲う。揺れで一瞬硬直した“マーマン”のうちの一体に肉薄、その首をへし折ってからもぎ取り、そのまま力を込めて残りの“マーマン”たちに向かって投げつける。
一体の“マーマン”はそれをキャッチ。勝ち誇ったかのようにそれを見せようとするが、アメリオはそれに対し、指を鳴らす。
「『έκρηξηπαραλλαγή・Kleefbom』。」
投げつけた頭が爆発、周辺にいた“マーマン”を一掃し、いよいよ残る“マーマン”は最初の25%ほどとなっていた。残りはどう料理するか、そう考えていたところに、
「『ザイルシャフト』!」
ジークの先程の拘束攻撃が発動。アメリオの足元を通って“マーマン”の群れに接触した蔓が、一斉に“マーマン”たちに絡みつく……そして、細い蔓の一本が、ジークのもとへと伸びた。
「?」
意図がわからず首をかしげるアメリオ。だがしかし、ジークが引き寄せるように掴んだ蔓から魔法力、それも炎属性のそれを流し込んでいるのを見て、その意図を確信する。
「『イェマンデン・ミット・イン・デン・シットシュトーム・ツィーエン』!」
蔓の全てが、拘束した“マーマン”を巻き込んで一斉に燃え上がった。
パチパチと魚が焼け脂が弾ける音をバックミュージックに、突き刺した剣についた血を拭うジークをアメリオは考え込みながら見つめる。
「(人間以外の相手に対し、普段と極端に思考と人物が変わることがあるとはヘルマンに言われてましたが、ここまでとは……?)」
「あ、失礼しました。」
拭い終わったのか、ジークが剣を鞘に戻してこちらに駆け寄る。アメリオはここに来た道を指さした。
「君は一度外に出て、地下の下水道にモンスターがいたという報告をしておいてください。少数で人通りがあるわけでもない場所とはいえ、人の居住地がある区域内にモンスターが野放しになっているというのは見逃せる話ではありません。」
「……わかりました。アメリオ……先生?はどうするんですか?」
「呼びやすい呼び方でかまいませんよ。私はこのまま調査を続行します。そもそもなぜこんな場所にモンスターがいるのか気になりますので。」
「わかりました。アメリオさんもお気をつけて。」
そうしてジークが立ち去る。
「……さて。」
ジークの姿が見えなくなって少し後、アメリオはジークが先程焼き殺した“マーマン”の死体を見る。数秒間それを眺める。ふと手をとり、眺める。
「……さっさと出てきたらどうですか?」
全身から殺気を放ちながら、ゆっくりと彼は顔を上げ、通路を見る。そこから、長めの黒髪の上紫色のキャップを目が隠れるほどに被り、濃い緑色の服を着た少女が姿を表す。
「あれ?バレてたんだ?」
「バレるもなにも、先程から麻酔銃の類でこちらを狙っているのに気が付かないわけがないでしょう。」
「えー?そんなんでばれるの?」
頬を可愛らしくふくらませる少女に対し、アメリオは淡々と尋ねる。
「これはあなたの仕業と考えてよろしいでしょうか?」
そう言いながらアメリオはナイフを使って焼け焦げた“マーマン”の死体から手首を切り落とし、その鱗を剥ぐ。鱗の下から出てきた、まるで人間のような手、それには《左薬指に指輪がはまっていた。》
「えー?なんでバレるの?」
「挙動が人間に近かったというのもありますが、純粋な“マーマン”なら雷属性攻撃なんて初級魔法レベルで即死します。それが即死しないということは、何らかの改造を施されていると考えるほうがむしろ自然です。」
アメリオは手首を拾って“マーマン”の左手があった場所にそっと置いた後、説明を続ける。
「そしてこの場所で殺意を持ちながらやってきて、なおかつこの|“マーマン”《市街地にいるモンスター》を見ても驚く素振りを見せないあなたを、無関係と捉える方が不自然です。」
「あははは、おじさんすごいね!そうよ、これはわたしが作った……」
「いえ、手法などはどうでもいいです。」
「むうー、けち。喋らせてくれたっていいじゃん。」
「犯罪者の犯行手段に耳を貸すのは探偵だけですよ。」
「ま、いっか。」
少女は頬を膨らませて不満そうな表情をみせたが、すぐにそれを引っ込めた。そうして彼女は腰のポケットのポーチに手を滑らせ、そこから彼女の身長をも上回る長さのマグロ包丁のようなものを取り出す。
「ところで、ふつーの人をお魚さんにしたらそれぐらいなんだけど、おじさんみたいなつよい人をお魚さんにしたらどうなるのかな?」
「……12時にシャワーの予約があります。そして現在時刻が11時ちょうど……。」
彼女の言葉に耳を貸さず、彼はネクタイを締め直し、木刀を振るった。
「30分以内にあがります。」
「こんなところまでわざわざ読んでくださりありがとうございます。」
コメントください
現在、この作品は、作者一人で半分以上思いつきだけで書いているようなものであり、文法の添削者さえいない状況です。これはこれで一つの楽しみ方かも知れませんが、知っての通りわかりやすく初心者である作者はその辺に一切の自信等ありませんので、この状況だと皆さんにより質の良いエンターテイメントはお届けできません。
赤ペン先生でも構いませんし、アンチの類でも運営規定に触れなければ構いません。もうなんでもいいんです。皆さんの反応が、正確に言えばこの作品に対しどんな考えを持っているのかが知りたいんです。
高評価よろしくなんておこがましいことはいいません。
おねがいします。感想をください。
それともしよろしければ、より多くの人の目にふれてもらいたいので拡散などもお願いします。この作品にそんな価値がないと思うのでしたら、嫌いな奴にでも送っておいてください。たくさんの人に見てもらいたいんです。




