Episode18:クソみたいな虫によるクソみたいなクソの被害
この世界のTips18:この世界の食事事情①
人類の食の進化の行き着く先は同じらしい。この世界では一部モンスターを食材に使ってみたりと若干の差異を除けば、大まかな料理の種類は我々が今暮らす現代とあまり変わらない。
「失礼します。作者からメッセージです。」
唐突に第四の壁を破壊し、ジークがあなたが今見ている画面から身を乗り出して話し始めた。ルアンヌはそれを見て呆れたような目線を向ける。
「あんた何やってんのよ。」
「いやそれなんだけどね、ちょっと諸事情で国外にぶっ飛ばされた作者さんから連絡があったんだ。」
「あら?どこ行ってるのよ。」
「マレーシア。さっきホテルで、Wi-Fiは専用のサイトにログインしないと使えない←→ログインはブラウザだからWi-Fiがないと使えない、ってスパイラルになってた。」
「はーん。」
「では、『旅先からコンテンツをお届けしますが、パソコンに保存しているネタを出さないため短くなる上、おそらく普段と比べて執筆上でのミスが多発すると予想されますので、その時は暖かい目で見ていただくか、コメントで指摘していただくと幸いです』以上が作者からのメッセージに…」
「んなこと言ったって、普段からコメントどころk(ry
時は5月10日、朝の9時。
場所はベルギー東端、そこにある一つの村。
天候は晴れ。暑くこそないがしっかりと太陽は地面を照らし
今回の舞台である村には、腐臭が漂っていた。
「オrrrrrrrrrr……」
「大丈夫ですか?」
腐臭に当てられてテカテカと輝く粘性の液体を吐き出すエミルの背中をエルヴァがこする。
結局エルヴァ以外にもエミルもなぜか共同で動いてくれるAランク冒険者がいなかったらしく、途方に暮れていたところ、暇を持て余したカーリがたまたまそれを見つけ、特別に2人の試験管になった、というのがことの顛末だ。
さて、問題の腐臭だが……。
「今回のお前らの試験に使う任務はこいつだ。」
カーリが差し出した紙には、一匹の茶色い虫の写真が載っていた。
プーワーム。
和訳すると、文字通りの「クソ虫」。見た目も放つ臭いも文字通りのう◯ちなこの虫だが、人里に来た場合速やかに駆除しなくてはならない。それはなぜか?原因はこの悪臭にあるのだが、何も不快だからというわけでもない。問題はこの臭いにある。
「ぎゃぁぁぁぁーー!?僕の弁当がぁぁぁーー!!」
エミルが叫ぶ。
そう、こいつの悪臭は周辺の微生物の活動を超加速させ、周辺の食物全てを爆速で腐敗させるのだ。
「いやー、やっぱいつ見てもとんでもないね。せっかく朝6時に早起きして作ったお弁当が数分間で痛む通り越して汚物だ。早めに捨てなよ、次のステージは有害有機化合物だ。」
へらへらと笑いながら、カーリは先ほど煮沸消毒したペットボトルの水を飲み干す。とはいえこれも口をつけた途端唾液の中の雑菌がパーティーを開始するので、やはりこれも爆速で飲まねばならない。
「この臭いもだいぶひどいですね。過敏な人ならこれだけで気絶してもおかしくないレベルです。」
「ほんと、人里にいない分には有機廃棄物の分解による循環を促してくれる益虫なんだけどなぁー。」
「ちなみにこの虫は何を食べるんですか?」
「動物の糞。」
スカラベ亜種?
たまに神聖なものと扱われるスカラベと文字通りのクソ扱いな虫の差異はさておき。
「で、今回の駆除対象はどこにいるんですか?」
そういうエルヴァは、もうすでに答えなどわかっていると言わんばかりに地面を見つめている。彼はこの悪臭の発生源が地面であることにとうの昔に気づいていた。
「何言ってんだ。もうわかってんだろ?」
彼が手杖を地面に向け、展開した風魔法が地面を抉る。あたりにひどい臭いがたちこめると共に、体長およそ1メートルの虫が姿を現す。
「クソなんだから地面の中に埋まってるに決まってんだろ?」
「くぁwせdrftgyふじこlp」
エミルが言葉にならない悲鳴をあげる。
「(後の洗濯が面倒そうだ……。)」
エルヴァの心配する方向は確実に間違えていた。
「ふー、やれやれ。」
約30分後、あたり一体の魔法で探知できる範囲に存在する虫をあらかた始末した一行は、水魔法で生成した水を浴びて体を洗う。なお、エミルはすでに放心状態で泡を吹いて倒れている。
「おお、これはこれは冒険者の皆様、お仕事ご苦労様です。」
黒いローブを被った老婆が姿を現し、3人に話しかける。彼女がこの村の村長であり、この任務の依頼人である。
「どうも助かりました。お礼に是非お茶でも…」
「あのさ、ダーティープレイはもうやめようぜ?」
その一言で、場の空気が変わる。
「……なんですと?」
「われてんだよバーカ、てめえの顔はな。6年前のサンクトペテルブルクの殺人事件だったよな?」
「……。」
「推理漫画じゃあねえんだ、長々と推理を語る気も時間もネタもない。さっさと認めろ。」
「……よくぞわか…!」
老婆が返答を終えるよりも前に、瞬く間にその後ろに回り込んだエルヴァが勢いをつけてナイフを横から振り上げる。老婆は咄嗟に防御したものの、衝撃そのものを殺しきれずに約3メートルほど吹き飛ばされる。
唐突な展開についていけず狼狽するばかりのエミルをほったらかしに、カーリはすぐさま戦闘体制に入る。
それに対し、老婆も杖を構える。彼女の後方から、先ほどのクソ虫が大量に這い出る。
「うっえ、召喚する対象よりにもよってそいつかよ。」
「なんとでも言っておれ、若造が!」
老婆が杖を振るうと共に、それらのクソ虫共は一斉にカーリに襲いかかる。
「臭いから近寄んな!」
だがしかしカーリは自身の周辺に魔法で暴風を発生させ、それを弾き飛ばした。追加で召喚したクソ虫でそれをガードした老婆と元から反射神経がバグっているエルヴァはそれを回避することができたが、エミルだけは回避しきれずクソ虫をまたしても全身に浴びる羽目になった。
「さすがにきかんか。ではこれにて失れ……!」
その混乱に乗じてさっさと逃走しようとする老婆。しかし彼女の魔法で飛び上がらせた体は、見えない壁に衝突して後ろへひっくり返った。
行動主はエミルだった。かれは地面に手のひらを置きながら言う。
「結界を展開しました!5分なら確実に足止めできます。そのうちに仕留めてください!」
「(詠唱なしでの展開か!)やるねエミル君!」
「この、小賢しい小僧共が!」
体勢を立て直した老婆は両手を上へと掲げ、建物ほどの大きさはあろうワームを召喚し……。
「終わりじゃ!」
「させません!」
唐突にその演出に割り込んだエルヴァがワームを召喚していた魔法陣を斧で破壊、中途半端に終了されワームは体を中央で分断された状態で具現化し、そのまま悶え死んだ。
「…この若造が、空気を読…!」
「むのはお前だ老害、尺ないんだからさっさとくたばれ!」
風魔法によってズタズタにされた老婆の残骸をほったらかしに、カーリは成績発表へと移った。
「えー、まずエミル。お前はギリ合格ってとこだ。能力自体は追いついてるから、精神面をなるはやでどうにかしてこい。」
「……はい!」
よほど嬉しかったのであろう。彼は全身でガッツポーズを取っていた。
「次にエルヴァ、お前は諸事情によりA飛び越してSランクだ。」
「へあ?!」
先ほどまでAランク合格で喜んでいたエミルは、唐突な展開にとりあえず驚愕の声を上げた。
「はあ……?」
「お前、前回の試験で相手をボコリまくったろ?それが原因だ。」
カーリはやれやれと言ったジェスチャーをする。
「あの後抗議が殺到してな、つまるところAランクがあんな簡単にボコられるとはどういうことだってね。」
「なるほど。」
「そこで『お前は実はSランク試験を受けるはずが、手続きミスでAランクに飛ばされてました』ってことにしたんだ。」
「ダーティープレイ……。」
「んなこたーわかってんだよ。頼むから付き合ってくれ。」
カーリはそのまま、任務完了報告書と結果を書く紙に素早くサインを走らせた。
そして3人はそのままベルリン支部へと帰還し、
この老婆の正体を詮索しなかったことを、ひどく後悔することとなる。




