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ENDESTALE  作者: 中尾 奏治
CHAPTER1:国立特練と勇者選抜祭
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Episode19:スペシャルスキル

この世界のTips18:スペシャルスキル

スペシャルスキルとは、すべての人が(発動できる可能性を)有するオリジナルスキルの派生技であり、かつ究極系である。

通常、オリジナルスキルというのは、一回発動したらそれで終わりである。たとえばオーディンのオリジナルスキルの場合、『一度未来を見て』それで終わり。さらに効果を得るためには再び発動せねばならず、当然ながらそれには負担がかかるし隙もできる。

スペシャルスキルは、いわばその発展型であり極端な強化型。特殊な手印や詠唱、その他諸々の要素を用いてそのオリジナルスキルを極端に強化し、周辺の一定範囲においてその効果を大半の発動条件やプロセスを省略し、常時発動化する。

すべての創作作品同様、この世界の固有能力にも切り札としての形が存在する。それがこのスペシャルスキルである。


「ちょちょちょちょいまち。」

「ん?」

今回の寸劇はカーリとヘルマンらしい。カーリがツッコミを入れるような(てい)で会話を切り出す。

「作者が国内に帰ってきたのって土曜の朝だよな?なんで投稿ここまで遅れてんだよ!?」

「ああそれね、土曜日は旅行の疲労で家に変えると同時に寝落ち、日曜日は親戚の見舞いに県境2つ超えたと思ったら帰ってくると同時に打ち上げに飛ばされ、月曜と火曜は原因不明の腹痛&発熱でdownさ。」

「あーもう、何もかもがクソだな。とりあえずこれ、あの馬鹿の代わりに俺等が誤ったほうがいい感じか?」

「さーね。僕としては、現実世界の謝罪をフィクションキャラにやらせるのってなんなんだって思うけどね。」

ごもっともです。本当にごめんなさい。






さて、少し時系列はずれ5月4日、夜の21時。みんな晩御飯を終え、就寝前の作業を終わらせていたりする時間帯。

場所は国立特練、その寮のコモンルーム。就寝前や暇な時間帯に学生たちが交流する主な場所。

天気は一応晴れ。大体雲が空の3割ぐらいを覆っており、ちょうどこの時期に見られる明るい星の数々が雲に覆い隠されている。






「ふわぁーあ。そろそろ寝ない?」

「バカ言ってんじゃないわよ健康優良児。夜はこれからに決まってるでしょ。」

模範的な生活を心がけ夜勤以外なるべく9~10時に寝ることを心がけているジークを、徹夜してても魔法学研究に没頭するルアンヌがその首根っこをつかんで引き止める。

三人は寮の中央辺りにある、複数の通路が合流するところにある広い空間で、そこにあるソファでだらけながらテレビを見ていた。魔法力を使って3Dとなっているテレビでは今、魔法学者たちが瞬間移動魔法を解説するビデオが流されている。

『では、魔法を光子エネルギーに変換するやりかたはこれでおしまいです。では次に……』

「あー、さっきから基礎内容しかやってないわね。ちょっとジーク、このビデオ30分ぐらいのとこにしてくんない?」

「ちょっとまってくれよ、俺まだみたい。」

「あんたが見たってどうしようもないでしょ。」

「いやいや、おれだっていい加減光魔法習得したいんだよ。ってか、もともと俺が武芸のチャンネルみたいって言ったの忘れたか?」

と、ここでジークが横槍を入れる。

「ああ、それなら僕の部屋の小型テレビで予約録画しておいたよ。3Dじゃないけど、オーディンなら2Dでも十分じゃないかな?」

「マジかよ、あざざます。」


ふと、ルアンヌは思い出したように言った。

「というか、大半の魔法は私が教えればいいだけの話じゃない?」

「いやてめーに教わっても一ミリもわかんねーよ。俺がシンプルに才能ないってのは知ってるけどな、それ以前にてめーは教える才能というのがないんだよ。例えば光魔法をビーム状にする方法を言ってみろ。」

「何いってんの。そんなもん、ひゅーっとやってひょいっでしょ。ひゅーひょいっ。わかんない?センス」

「家入式で言ってもわかんないんじゃないかな?」

後ろから突然一人の声が飛んでくる。驚きで3人の胸から赤いハート型のなにかが飛び出した。

「ヘ、ヘルマンさん?こんなところで何して、」

「はい、今から課外授業な。」

「「「HUH?」」」

3人がヘルマンに唐突なセリフに疑問を呈するよりも前に、ヘルマンは3人を巻き込む瞬間移動の魔法を発動し、4人の姿はコモンルームから消滅した。


「どこですか?ここ。」

ヘルマンに引き連れられどことも知れない山林のある場所に連れ込まれたジークたち3人。未だに状況を飲み込めてすらおらず大根RUN……じゃなくて大混乱する他の二人に変わり、理解不能ではあれこそ状況判断だけは終わったジークが尋ねる。

「んーとね、だいたいベルリン西の郊外、そっからさらに数十キロってとこ。」

「ほぇー、まあ王都周辺でもそんだけ距離離れてりゃ流石にこんな鬱蒼とした感じになるのか。」

「正確に言えば、その中でも最近殺人事件が多発してる場所だね。」

「へぁ?」

さっきから意図が全く読み取れないオーディンが間抜けな声を出した。

「そういえば課外授業って言ってましたけど、何についてですか?」

「そうそう、今日君たちには“スペシャルスキル”ってのを学習してもらう。」


一行は森の中を進み始める。

「では聞こうじゃないか。スペシャルスキルの主な効果とは?」

「冒頭のTipsで話した通り、効果範囲内におけるオリジナルスキル効果の常時発動化です。」

「メタ発言はさておいて、そう、それだ。」

そう、この効果そのものを理解することは誰でもできるし、なんならこの世界の学校なら普通に教わる範囲だ。しかし実際のところ、あまりの難易度の高さが原因で習得に至っている者はほとんどいない。そのためジークたちも、知識として知っているだけで実際には見たことすらなかった。

「百聞は一見にしかずというが、実際体験というのは非常に強力な学習体験だ。そんじゃ、実演してみようか。」

「「「?」」」

いきなりの展開に首をかしげる三人と読者を置いてきぼりにして、ヘルマンは地面の石ころを拾うと、おもむろに近くの茂みに投げた。石は茂みの中に飛び込み、そしてしばらく静寂が訪れる。

数秒後、その茂みの中から先程投げた石ころと、右手にマチェットを手にした、およそ70歳ぐらいであろう白髪の背の縮んだ老人が姿を表す。

「さすが、勘は鋭いみたいじゃな。」

「勘というか感覚というか。それはそうと、誰だ君は?」

「ボーツ=ゴート・ペーター。今宵、貴様を殺すものじゃ。」

「「!?」」

ジークとルアンヌが驚愕する。だがオーディンはよくわからないらしい。

「誰だそれ?」

「知らないの!?Aランク危険人物、国内でも有数の暗殺者だよ!?」


この世界の指名手配システムには、ギルドと似たような基準でSS〜Gのランクが設定されている。Aランク危険人物といえばそれすなわち、Aランク冒険者と同等の実力を有するということだ。


「でも、最近はなりを潜めていたはずなのに、なんでこんなところに……。」

「なぁに、ちょいと仕事が入っただけじゃ。お前らと、この男を殺せとな。」

ボーツはその顔に邪悪な笑みを浮かべた。一方、そんな肩書を聞いたところでヘルマンも表情を崩さずにっこにこの間抜けな笑顔のままだ。

「へーえ。まぁ危険人物つってもSランク未満は全員きにも留めてないからAランクの君のことはぶっちゃけ全然しらないんだけどSA()。でも気になることは1つあるから聞いてもいいかな?いや2つかも……ま、とりあえず1つでいいや。」

「ほう、随分と舐めた男じゃの。冥土の土産にきかせてやっても良いぞ?」

ボーツがマチェットを構えて舌なめずりをする。それに対し、ヘルマンは体を構えることもせず、ことさらに相手を挑発してみせた。

「Aランク風情が、どうやってZランクたる僕に勝つつもりだ?」

「……フン、ランクだけが全てとは限らんぞ、小僧ぉ!」

ボーツが左手に持ちっぱなしだった先程の石ころを握りつぶすと同時に、その左手に魔法の業火が出現する。彼はその業火を、その勢いに任せてヘルマンに肉薄すると同時に直接叩きつけた。ヘルマンが抵抗することなくそのまま業火に呑み込まれる様子を見て、ボーツは鼻で嗤った。

「フン、この程度か。所詮は弱者からの過大評価、反吐が出そうだわい。」

ところがその時……。

「僕が……。」

炎の中から現れるは、その服にすら傷一つないヘルマンの姿。

「……なんだって?」

「……すこしはやるようじゃな。ならこれでどうじゃい!」

すかさずボーツは、空いていた左手から黒色の小さな玉を四発放つ。しかしヘルマンは、顔色ひとつ変えず、指の間に挟む形で四発全てキャッチしてしまった。

「これ、当たったらどうなんの?」

しかしボーツは計画通りと言わんばかりにニヤリと笑う。その直後黒い玉は爆発し、ヘルマンは再び爆炎に呑まれた。

「やはりこの程度か。それではさっさと仕事を済ませるとするか。」

そういい、ボーツはジークたちの方を向き、再びそのマチェットを構える。ジークたちは応戦しようとした。が、オーディンだけがそれをとめた。

「オーディン?」

「まだいい。」

確かによかった。ヘルマンは再び、先ほどと同じように爆炎の中から姿を表す。

「似たようなフラグでどうやって成功したって思ったわけ?」

「……なぜ生きてる。」

「というかさぁ、ここまでのこれどっかで見たパターンなんだよね。なんとなくだけどとりあえず君、活火山の噴火口に飛び込んできなよ。そうじゃないと罪を償……。」

「なぜ生きていると聞いているんだ!」

「ああ、ごめんごめん聞いてなかった。」

そう言うと、彼はポケットを弄りハンカチを取り出す。くっちゃくちゃで明らかに管理ががさつなやつ。

「例えばだけどさぁ、このハンカチを丸めて石にぶつけた場合、その石は壊れると思うか?」

「何が言いたい……。」

「おバカだなぁ。威力不足すぎだって話だよ。君の攻撃は僕に傷一つつけるのにすら足りないって話。」

「貴様ぁ!!」

唐突で単純な挑発に激昂するボーツの腹に、一瞬で肉薄したヘルマンは拳を叩き込む。ボーツは咄嗟に防御の姿勢を取ろうとするも、致命傷を避けただけでその勢いを殺しきれず、空に飛ばされていった。

ヘルマンはそれを見てジークたちに歩み寄り、彼らが抵抗するよりも前に彼ら全員を抱き上げる。

「じゃ、追いかけるぞ。」

「え?」

「は?」

「ち、ちょっとま……。」

「問答無用!」

そう言い、ヘルマンは魔法を展開する。


次の瞬間、瞬間移動魔法により、4人と吹き飛ばされたボーツは平地へ到着した。周辺に重機があったり地面が茶色だったりするあたり、森を開拓している場所だろう。

彼らの来襲に気づいたボーツは血反吐を吐きつつもそれを拭い、いまだ敵意衰えぬ目つきでヘルマンを睨んだ。

「貴様ぁ、どこまで儂をこけにするか……!」

「やだなぁ、こけになんかしてないよ。」

ヘルマンは3人をおろし、そのまま相手に歩み寄る。

「弱い奴に弱いっていうのは「こけにする」とは言わないんだぜ?」

沈黙。次第にボーツの顔に大量の青筋が立ち、顔を真っ赤にする。怒りのあまりか、彼の全身から炎属性が付与された魔法エネルギーが溢れ出し、周辺が灼熱地獄となる。

「……舐めるなよ若造が!!そのにやけ面を今ここで切り落として覆面にしてくれるわ!首を洗っ……。」

「『動くな』。」

激昂して飛びかかるボーツに向かってヘルマンが言葉を発すると同時に、老人の動きはまるで見えないなにかにそうさせられたかのようにピタリととまった。

「「「……?」」」

「ああごめんごめん、説明忘れてたわ。これが僕のオリジナルスキルだよ。」


Anweisung(アンヴァイズン)』。それが彼のオリジナルスキル。

能力は命令の強制。彼が言葉としてスキルを使用し発した命令を、対象である相手に聞かせ強制的に行わせる。


「だが、そうはいかんぞ!貴様のスキルぐらいすでに対策済みじゃ!」

そう言い、スキル効果が切れ自由になったボーツはポーチから耳栓を取り出し耳に装着した。なるほど、命令そのものを聞かなければ効果は発揮されない。そのままボーツは両手を上に掲げ、魔法を展開し建物よりも大きい巨大な岩を召喚する。

一方ヘルマンは、そんなもの意に介さぬとでも言わんばかりの余裕っぷりで、振り返って三人に自分の口を指さしながら

「そう。これが僕のオリジナルスキルの弱点、それもすっごい間抜けなやつ。しかし、この次のステップではその弱点すらなくなる。お前ら覚悟はいいな?」

ヘルマンは後ろの3人に冗談めかして言うと、両腕を上げて直径数メートルの、いつのまにか火を纏っている岩の球を放とうとする相手に対し、余裕綽々の表情のまま右腕を顔ぐらいの高さまであげ、人差し指だけを指差すように上に向けた。

「それじゃあ実演してあげよう。この世界の戦い、その極地を。」

「肉片すら残さんぞ!これで終わ……。」

「スペシャルスキル『Diktatur(ディクタトゥール)』。」

彼を中心に、あたりの地形に無数の文字が浮かび上がった。


この文字の地獄に入ったボーツがまず思ったのはただ一つ。それは相手のこの技の分析でも、自身の対策の振り返りでもない。

「(う……動けん!なぜじゃ、なんじゃこいつの効果……。)」

「教えてあげようか。」

ヘルマンはポケットに両手をしまい、ゆうゆうとボーツに歩み寄る。ボーツは両手を上げて相手を睨んだまま、ただその姿勢を維持して固まっている。

いや、維持しているのではなく、()()()()()()()のだ。

「僕のこのスペシャルスキルは、先程のオリジナルスキルを範囲内の相手にフルタイムで発動させる。媒介が声そのものから命令を直接脳内に響かせるものになっているから、耳栓しようが鼓膜破ろうがまともに脳みそが存在する限り意味ないのさ。ちなみにすでに『動くな』って言ってるから、これを僕が解除しない限り君は絶対に動けないわけ。」

ヘルマンはボーツの後ろに回り込み、その肩に手をおいた。まるで、悪友が悪ふざけしながら友達の肩に手を置くように。

「ま、強いて言うなら弱点は味方も巻き込むことなんだけどね。だからやばいことは言えないんだけど、『その手の武器を落とせ』。」

ボーツと、先程剣を抜いていたジークが武器を手放す。各々の武器は音を立てて地面に転がり落ちた。

「こうやって相手の行動を阻害しちゃえば、大概僕が自分のパワーをストレートに振るうだけで仕留められるんだよね。じゃ、そういうわけだからさよなら。」

そう言ってヘルマンはその邪悪な笑顔をそのままに、ボーツの頭に手を置き……。



それをねじり千切った。



スペシャルスキルが解除され、ジークたちにも行動の自由が訪れる。今だ心臓だけは動くボーツの首から下の死体は首から血を吹き出し、ヘルマンは血が自分の服にかかるのを嫌がってその死体を蹴り倒した。

と、そこで、彼は少しばかりふらつく。

「ふう……やっぱ慣れててもこいつはつかれるな。」

そう、オリジナルスキルというのは本来、「発動条件を満たす対象にピンポイントで発動する」というもの。それをスペシャルスキルの場合「発動条件という面倒なものすべてを取り払って周囲に常に撒き散らす」ものであり、いうなれば通常のパンチを全方位に絶え間なく出し続けているようなもの。その上、長距離走などを経験してみればわかるが、運動中しかり戦闘中しかりスタミナというのは行動中もある程度回復するものであり、それにより人間は疲労をおさえる。しかし、いうなればスペシャルスキルは「長距離走の距離を肉体に極端なブーストをかけて一瞬で走り抜く」ようなものであり、当然ながらエネルギー保存の法則と、その「過度なブースト」分の負担が同時にかつ一瞬にしてやってくるこの技の負担は計り知れないものとなる。

科学的な実験により筋肉と同じ乳酸由来の疲労ではないことは証明されているが、すくなくとも使用後の異常な疲労感というのは、スペシャルスキルの大きな弱点の一つである。

さて、ふらついて直角から5°ほど傾いた彼はそれをなおし、続いて3人に向き直る。

「そんなわけで、だ。君たちに今から習得してもらうのはAランクに匹敵するだけの力、これの対抗手段、あわよくば君たちにもスペシャルスキルを習得してもらう。覚悟しろよ?」

「……いやでも俺ら、対策ならすでに習得してるぜ?デグレードスペシャル。」

「マジか。」

オーディンの何気ない一言に、ヘルマンはちょっと面食らった顔になった。


デグレードスペシャル

通常オリジナルスキルを効果として運用するスペシャルスキルに対し、それとは別の通常攻撃やオリジナル以外の通常スキルを効果として付与するスペシャルスキルの亜種、またはスペシャルスキルを相殺する効果を持ったスキルの総称。基本的に自分の半径数メートルほどに展開し、相手のスペシャルスキルを相殺する。

本物のスペシャルスキルに比べ効果も威力も出力も劣る完全劣化版だが、実際のスペシャルスキルに比べ制限などを設けることでかなり簡単に習得でき、かつスペシャルスキル相手に時間稼ぎ程度とはいえその効果を相殺することができる上、性能面だけで言えば通常のスキルよりも強力だ。また、スペシャルスキル使用後に本来かかるはずの負担が降りかかることを避けることができ、上級者にも使用されることがある。

スペシャルスキルよりも簡単で、スペシャルスキルへの対抗手段となる。それがデグレードスペシャル。





その後、学校に戻ってから。

ヘルマンのスペシャルスキルを実験台に、三人のデグレードスペシャルを彼は実際に見せてもらった。正直言って両者のレベル差が圧倒的すぎてろくな抵抗もできていなかったが。


あまり長い間抵抗できない分デグレードスペシャルを連発し、そしてヘルマンの遊び気分につきあわされて追加で『踊れ』命令を喰らい、結果疲労で体育館の床にぜーはーと息を荒げながら寝そべる3人。オーディンは自分らがこれを習得できていると話してしまったことを後悔した。

彼らを横目に、ヘルマンはおやつのキッシュをくわえながらノートに三人の特徴を書き加える。


なるほど。三人のこれらの実態はおおよそ把握できた。

ジークのデグレードスペシャル「」は、自身の意識を一時的に抹消し、効果範囲内に侵入した相手のスペシャルスキルの効果を脊髄反射的にフルオートで迎撃するもののようだ。今回は相手(ヘルマン)が継続的に効果を発揮してくる相手故に相性が悪かったが、必中効果が一撃必殺の強力なものの場合いかんなくその真価を発揮できるだろうし、何より持続性は非常に高い。

オーディンのデグレードスペシャル「留刃迎禍」は、目に見えぬ超高速で刃を振るい、射程範囲の縁あたりに斬撃を滞留させる技だ。スペシャルスキルの効果はじめありとあらゆる干渉を攻撃とみなし、斬撃が叩き落として相殺するのだろう。刀を振るいまくる都合上他の人をかばえない上に休めないが、持続性と総裁能力をある程度両立させている。

ルアンヌのデグレードスペシャル「サテュラシオン」は、自身から彼女の膨大な魔法力をそのまま放出することで、波紋をかき消す巨大な波のごとく必中効果すべてをかき消すもの。これならついでにそこらの魔法も太刀打ちできないぐらいにかき消す事ができ、防御性能自体はかなり高いが、ある程度地面を伝って回収しているとはいえ持続性には期待できない。


「(面白いぐらいに性能が分化してやがる。)」

ヘルマンは面白げな顔で考えた。持続性に優れたジーク、迎撃性能に優れたルアンヌ、そしてその両方を適度に両立させているオーディン。なかなかどうして、相当の間仲間として一緒にいないとこうはならない。ってあれ?少なくともルアンヌはそこそこ前からフランスの学校いってたんだよな?

しかしこれは長所であり短所、それぞれが単独でいる間はそれぞれ弱点が浮き彫りとなり、その弱点を貫かれる可能性が派手に……おっと。


と、その時、体育館の扉が開き、疲れたサラリーマンのような雰囲気を醸し出す黒髪の痩せた男が姿を表した。

「失礼します。例の書類を持ってきました。」

「ああ、ご苦労さん。」

男はヘルマンに書類を渡し、そのまま逃げるように扉から出ていった。

「なんですか?それ。」

「君たちには修行ついでに、こっちであらかじめ取り寄せておいたギルドの任務を受けてもらう。実戦経験だ、覚悟しろよ?」


そう言い、ヘルマンはオーディンに書類のうちの一枚を渡す。

「まずオーディン、君にはDランク対応のスライム掃討に向かってもらう。経験値稼ぎになっていいと思うぜ?」

「ちょっとSTAY(待てや)。ってことは、俺にスライムの相手しろと?」

「そうだよ?」

「スライムというただでさえ物理攻撃が効きにくいモンスター相手に、ゴリゴリの戦士タイプの俺?」

「うん。」

「なんで?」

「不利な相手に挑む力を養えってのが3割、他のやつとの采配を考えた結果の消去法が1割、あとはもうテキトーさ、話の展開を考えるうえでの。」

プーさん蹴るな(ふざけるなぁ)!!」




「次にルアンヌ、お前にはエスケープゴートっていう生物を捕獲してこいって任務。」

「どっかで聞いたことある名前ね……まさか」

「ああ心配しないで、著作権の範囲にはいらない『ただの誰でも思いつくアイデアの混合』って言ってたから、作者が。多分その辺で偶然被っただけだってさ。本人もどこの作品かは調べてきてないらしいけど。」

「心配しているポイントそこじゃないし、てか原因そこなのね。」

「ああ。最近のなろう系は名称をまともに考えないものばかりだからなぁ。」

なお、今のところモンスターの名前においては、この作者も言えた話ではない。


「最後にジーク君。」

ヘルマンは残った書類をジークにわたす。このためだけに体育館の端っこにある水道で手を洗っていたジークは疲れた体に鞭打って彼の元までおよそ50mタイムアタックをする羽目になった。

その依頼書に目を通すと同時に彼の目から光が消え、同時に彼から放たれた、まるで重圧のような立つことすら耐え難くなってしまうような雰囲気に一同は大なり小なり戦慄する。

「場所はある遠方の都市。()()()()()()()()、その真偽の調査だ。」

【今回のエピソードにおける他作品からの引用・オマージュ・パロディなど】

『ひゅーっとやってひょいっ~』→©️芥見下々『呪術廻戦』の登場人物、家入硝子のセリフより

『大根RUN』→©️衛藤ヒロユキ『魔法人グルグル』より

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