第7話 覚醒の兆候
続きになります。
ここからが本番なんです。
何処を見ても一面の暗闇。
「久しぶり」
私の足元からは聞き覚えのある幼い声がする。
視線を落とせばあの少女が立っていた。
こんな感じの光景いつの日かの夢で見た様な気がする。
「もう少しだね」
少女はまた意味深な事を呟くといきなり私の腰回りに抱きついてきた。
私は困惑する。
「ちょっと離れてくれないか」
すると少女は渋々私から離れ寂しそうな顔をする。
「感極まっちゃった」
本当にこの子は少女なのだろうか。
年齢の割に難しい言葉をよく知っているなと感心する。
「でも大丈夫、あと少しの辛抱だから。」
すると少しずつ真っ暗だった周囲が光……ではなく雪に覆われていく。
「 」
そして少女の姿はホワイトアウトし消えていった。
***
目が覚める。
いつも見ている天井。
もう身体に痛みや辛さは無かった。
だがいつもは感じない程の魔力が私の中に存在するのを感じた。
私はゆっくりと身体を起こす。
身体は問題なく動かすことができる様だ。
すると部屋の隅から視線を感じた。
目線を向けるが誰もいない。
だがそんな事を気にしている場合では無い。
私は部屋を出てユウの元へ向かった。
彼が眠っているであろう寝室の部屋をノックするが返事はない。
嫌な予感がし私は部屋を開けようと扉に手をかける。
「涼香起きていたのですか。」
すると背後から声をかけられる。
振り返るとそこにはモーヴィが立っていた。
「はい先程目覚めました。
ですがそんなことよりもユウ様はご無事ですか。」
わたしがそう返すとモーヴィは答える。
「一時は生死の境を彷徨いましたが今は容体も安定しています。」
私は安心したのか身体に無意識に入っていた力が抜けていく。
「本当に良かった……。」
「このままの格好では流石にいけませんね。
一度身なりを整えてきてください。」
私の姿を見た彼は私に身支度をする様促す。
そういえば急いでここに向かって来てしまった為、寝巻きのままだった事を思い出し恥ずかしくなる。
私は一度着替える為部屋へと戻って行った。
「……。」
モーエヴィンから向けられる怪訝な視線など気にも止めず。
***
あの日私はユウ様に涼香を見ている様に言われていた。
恐らくあの日ヴァーミリアン家の敷居を勝手に跨いだ無礼者の男の動向を探る為だろう。
その日は凍える程の寒さでおまけに生憎の曇り空だった。
何なら門の辺りで揉める二つの人影が見えた。
涼香と例の男だった。
何を言われたのだろうか涼香は男に手を引かれ屋敷を離れてしまった。
私は急いでユウ様にその事を報告した。
もうすぐ日が沈む。
外が暗くなってから涼香を探すのはマズい。
あの付近の森には時折魔獣が出没するのだ。
故に今日雲がかかっていてくれた事が幸いした。
ユウ様は日光が苦手なのだ。
私はユウ様と手分けして涼香の捜索にあたる。
捜索をしていると私の来た逆方向の森から叫び声がした。
私は急いで声のした場所へ向かう。
するとそこには背中を深く刺され倒れるユウ様と胴体と泣き別れた頭、そして苦しみ悶える涼香の姿を発見した。
この辺りは積雪が多く雪も春までは溶けづらい。
そして屋敷からは数kmは離れている。
このまま放置すればどちらも危うい状況だった。
私はまずユウ様に治癒の魔法をかける。
幸い早い段階で処置がされていた様で命に別状は無かった。
しかし涼香はどうしようもない状況だった。
自身の体内から溢れ出る魔力が暴走し悶え苦しんでいる。
そんな人には治癒魔法は意味を成さない。
私は涼香とユウ様を担ぎ屋敷へひき返す。
彼女が無事山場を超えてくれる事を祈りながら。
to be continued……




