【029】働く車!
六時間後。
俺とエディナは疲れ切った表情をしていた。
それはそうだ。
本来であれば、泥川に直接入って川の中をさらうのだが、わざわざザルにロープを取り付けて川に入らないように川底の泥を引き上げていたのだ。
一回や二回ならまだしも、六時間もこの作業を続けていると、腕も痺れてくる。
それだけやって、みつかったガラットはビー玉ぐらいのサイズで五つだけとか……。
まだ水の冷たいこの時期に、誰もやろうとしないのも頷ける。
おまけに全身泥だらけだ。
しかもなんか臭いし。
因みにツクヨミはというと、衣を巨大なザルへと変形させて川底へ突き立てると、そのままゴリゴリ川底を削る音を立てながら川上へと走り去ってしまった。
「そろそろ終わりにしましょうか」
エディナの提案に俺は頷く。
「でも、ツクヨミが帰って来ないんだけど……」
「戻って来いって言ったら?」
「え? どうやって?」
「あー、そっか。それも知らないんだ。召喚モンスターは、所有者がカードに直接語りかければ、離れていても命令することが出来るのよ」
へー、そうなんだ。
俺は泥だらけの手をまだ無事な箇所で丁寧に拭って、カードを取り出した。
「ツクヨミー。ご飯食べに帰るから戻っておいでー」
俺がそう言って暫く待つと。
ゴゴゴと音立て、木々を薙ぎ倒しながら物凄い勢いで何かがやって来た。
まあ何かっていうかツクヨミなんだけどね。
しかし、どういうわけかツクヨミは、衣を何倍もの大きさに広げて黒い塊になっていた。
そして、キキキーと音を立てて俺とエディナの前に停車した。
そうなんです。
ツクヨミは真っ黒なブルドーザーになっていたのです。
何で川をさらっていた筈なのに、ブルドーザーなんだよ! つか、車の形にもなれんのかよ! 俺を簀巻きにして運ぶ必要なかったじゃねえか!
あと無意味に自然破壊すんな!
「……何これ」
エディナが変形したツクヨミに驚きの声を上げている。そうですよね。車とか知らないよね。
ツクヨミは衣をシュッと元のサイズに戻して、忍者の格好になると言った。
「ポーセージたくさんとって来た」
いや、集めていたのはガラットであってポーセージじゃないからね。
ツクヨミは再び衣を広げると、衣の中からバラバラと小さなガラットを地面に撒き散らした。
うおっ! すげー量!
両手どころか、両腕で抱えることも難しいほどの量にびっくり仰天である。
「あとこれ」
ツクヨミの衣が再び広がると、巨大な岩をドンドン! って三つ地面に取り出した。
見ればその岩には、赤黒い輝きを放つガラットの塊が埋まっている。
……嘘でしょ。
まさか山まで行って、採掘して来たの?
それであのブルドーザー?
俺がチラリとエディナに視線を向けると、エディナは引きつった顔をしていた。
ですよね。
これにはさすがの俺も驚いたわ。
「ポーセージ」
だああ、もう。
ポーセージの百や二百、いくらでも食わしてやるよ!
読んで頂きありがとう御座います。
採掘するのにブルドーザーになる必要があるのかと問われれば、ないだろうと答えるしかない。
なら、何故ツクヨミはブルドーザーになったのか?
そんなことは知らん!




