第28章 ワイバーン
俺と一緒に、山猫族の族長と砂猫が宿泊所の部屋に通された。
まだクワンリたちには会えていない。
早く帰って安心させてあげたいのだけれど、ここは大人しくしていなければならない。
二人を連れてきたから、俺一人の勝手な行動で危険な目に遭わせたくはない。
二人とも緊張している。
無理もない。対立する側の族長と、これから久しぶりに顔を合わせるのだから。
ドアが開き、軍服のような制服を着た一団が入ってきた。
白い顎ひげのキリッとした老人を囲むようにしている。
白ひげが族長だろう。
「久しいな、山猫よ。砂猫も元気そうではないか。そう睨むな」
砂猫が何か言おうとしたが、山猫族の族長に制される。
「この度は勝手なことをした。山猫様に挨拶がしたかっただけのつもりだったのだが、騒ぎを大きくしてしまった」
「この通りだ。すまない」
山猫族の族長が、ワイバーン族の族長に頭を下げている。
俺の仲間たち、クワンリたちの身の安全のために、下げたくない頭を下げてくれている。
「わかった。お互い、この件は事務方で処理をするようにしようではないか。それで良いか?」
「承知した。こちらは砂猫を代表にさせていただく」
「それで、やはり、このお方が伝説の山猫様で間違いないのか?」
「カメムシ城が反応したと、そちらの砂猫から報告を聞いたが?」
山猫族の族長が、カメムシ城での一連の出来事を説明した。
ワイバーン側に動揺が走り、驚嘆の声が漏れる。
「動かすことができるのでしょうか? 山猫様?」
ワイバーン族長が俺に問いかける。
俺は素直に答えてやった。
「起動はしたようだ。しかし、どうすれば動くのか俺にもまだわからん。それより一つ聞いていいか?」
「なんでしょう? なんなりとお聞きください」
ワイバーン族長は少し落胆した顔をしたものの、気を取り直したのか、ぎこちない笑顔を作った。
椅子から腰をかがめ、俺の顔の高さに合わせてきた。
「俺の仲間たち、旅の同行者たちは皆無事か? 俺の無事をすぐに伝えたいのだが、お願いしてもいいか?」
「そして、その中に老婆がいる。その老婆は神託ができる。その者だけでもいいから、先に会わせてくれないか? 船を動かす手がかりがつかめるかもしれない」
ちょっと山猫様の威厳を醸し出しつつ、一番気になっていることをお願いしてみた。
「承知いたしました。今すぐに」
ワイバーン族長が部下に目配せをすると、二名の部下がドアを出ていった。
なんとも気まずい、居心地の悪い空気が部屋を包んでいる。
山猫族長は表情が硬い。砂猫とワイバーン族の取り巻きは睨み合っている。
いたたまれない。こういうのは本当に苦手だ。
そんな肩身の狭い思いをしていたら、廊下が騒がしくなってきた!
懐かしい声が聞こえる。
懐かしいって言っても、三日も経っていないが。
ドアが勢いよく開く。
「ここか! ノル!! 無事か!!」
クワンリだ!
ん?
左手には、
ワイバーン族の一人を引きずっていた……。
部屋にいたワイバーン族の取り巻きが身構える。
「やめろ!!! その女は馬鹿力女で方向音痴で、しかも強い! 手を出すな!」
「手を出すなら、俺は協力しない!!」
クワンリに走り寄って飛び移る。
オッサンに抱かれていたショックを、今癒してもらう。
ゴロゴロが勝手に出てくる。
恥ずかしいが、フゴフゴまで言ってしまっている。
クワンリの肩越しから廊下が見えた。
サルマとオババが、少し離れたところから小走りで近づいてきた。
皆無事で良かった。
フゴフゴ、ゴロゴロがやけにうるさいが、もう止まらない。




