↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫魔族の異世界社会見学【改稿版】黒猫になった俺がポンコツ魔王の娘を人間社会で教育してたら、世界を救う羽目になってしまった  作者: 5414


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/30

第27章 カメムシ城


全然着かない。めちゃくちゃ遠い……。

もう疲れた……。


今は、人化した族長に抱きかかえられ移動中だ。


いつもはクワンリに抱いてもらっている。

というか、クワンリ以外の腕の中にいるのは初めてだ。


ああ……なんか嫌だ。

オッサンに抱かれていると思うと寒気が走る……。


しかし、贅沢も言っていられない。何しろ遠いのだ。

悔しいが、いつの間にかオッサンの腕の中で寝てしまっていた。


「山猫様、着きましたよ。ここがカメムシ城の入り口です」


やっと着いた時には、辺りは朝日に照らされていた。


族長の腕からスルリと地面に降りて伸びをする。


見上げると、朝もやの中、オレンジ色の光に照らされたカメムシ城の湾曲した壁がそびえていた。

全体像が分からないくらいデカかった。


俺は城へと続く、長い石組みの階段の下まで行く。

まるでピラミッドだ。


「もう嫌だ!

こんな長い階段、登れるわけがないだろう!」


俺がうんざりしてそう言うと、族長は両腕を広げ、ゆっくりと瞬きをした。


またオッサンに抱かれなきゃならないんだな。



入り口の門番に見送られ、俺と族長はコンテナほどの大きさの開口部から城の中へ入った。


魔道具の明かりが灯る城内では隔壁の扉が開放されており、その先には半円状の通路が続いていた。


族長の腕から通路へ降りた瞬間、足元に誘導灯のような光がともった。

まるで俺を導くかのように、通路の奥へ向かって次々と光り始める。


「何ということだ! 何千年もの間、このような光がついたという記録はありません。

やはり、あなたは伝説の山猫様……」


族長を見上げると、驚きと喜びの入り混じった顔で涙を流していた。


そして俺自身も、なぜだか分からないが、どこへ行けばいいのかがなんとなく分かる。


やばいやばい。

これは本当にやばい。


もう俺自身も疑う余地がなくなった。

もう諦めよう。

きっと、そういうことなんだろう。


なんでこの世界に転生してきたのか。

俺はこの時、なんとなく分かってしまったような気がした。


俺の好奇心が不安を上回る。

ズンズン進む。


族長は静かに俺の後をついてくる。

金属のようなトンネルを、誘導灯に従って進む。


階段を登ったり、降りたり、角をいくつも曲がる。


建物というより、もうこれは船の中だな。



大きなホールへ出た。


その中央には、七色に光り輝く球体があった。


前世で見たミラーボール。

異世界で、こんな形で出会うとは……。


族長は腰が砕けたように座り込み、呆然と球体を見つめている。


球体の光がモザイクのように部屋中へ反射していた。

この部屋も、大きな半球体のような構造になっている。


呼ばれた気がした。


俺は球体へ近づいた。



一緒になろう。


帰ろう。


元に戻ろう。



頭の中に、心の中に、そんな声が聞こえた。


思念でもない。

言葉でもない。

不思議な感覚だ。


自分の心の中から発せられているような、球体から話しかけられているような。


真下まで行き、まぶしいミラーボールを見上げる。


なんだか、とても懐かしい。


そう思った途端、急に眠たくなってきた。

俺はその場で、暗い闇の中へ引きずり込まれてしまった。


黒い霧とともに、自分の体が溶けていくような、そんな感覚だった。



夢を見た。


宇宙から地球を見ている?


青く美しい惑星が近づいてくる。


一瞬、白く強烈な炎に包まれた。

まぶしくて目を閉じる。


地上に大きなクレーターが見えてきた。

そこへ向かって、どんどん降下していく。


遠くの海が光っている。

山の緑が鮮やかだ。


俺の心が喜んでいる。


ふと横を見ると、もう一つのカメムシ城が俺の隣を飛んでいた。



気がつくと、そこは族長の家のようだった。


俺は祭壇に寝かされていた。


またオッサンに抱かれて連れて帰ってきたんだと思い、体の匂いを嗅いでみた。


オッサンの匂いがついていないことに安堵してから、周りを確認する。


祭壇の下では、たくさんの猫たちがアンモナイトのようになって寝ていた。


前世では、アンモニャイトって確か言ってたな。


それどころではない。

どれくらい寝ていたのだろう。


窓の外は真っ暗だ。


早く帰らなければ、クワンリたちが心配していることだろう。


族長はこの部屋にはいないようだったので、俺はゆっくりと祭壇を降り、猫たちを起こさないよう、その間を抜けて扉へ向かった。



隣の部屋へ行くと、大きなテーブルを挟んで、人化した族長とすらりとした女性が話していた。


「おお! 山猫様、気がつかれましたか!」


「よかった。急に眠ってしまわれて、なかなか起きないので、皆で祭壇に祈りを捧げていたのです」


隣のすらりとした女性が、笑顔でそう言いながら近づいてきた。


ずいぶん馴れ馴れしいと思っていたら、女性は頭を下げた。


「失礼しました。先日お迎えにあがりました、砂猫です」


こんな綺麗な女の人だったんだ。

砂漠の天使、砂猫……。


「俺の仲間が心配してるんじゃないかと思って。ここに来てから、どれくらい時間が経ってるのかな?」


「早く帰りたいんだけど」


「二日間経っています。ワイバーン側が今、大騒ぎして山猫様の行方を探しています。僕が案内した道で帰ることは、もうできません。警戒が強まり、宿泊所へ近寄ることもできなくなってしまいました」


「マジか……それは困ったことになったね。俺の仲間は大丈夫なのだろうか?」


「申し訳ございません。お仲間のことも、今は正確な情報を得られておりません」



困ったことになった。

二日間も寝ていたとは。


とりあえず食事を出してもらおう。

腹が減って、今は何も考えられない……。



ミルクの甘い匂いがしてきた。


やはり、この世界の猫まんまはミルク粥が定番らしい。


この匂いを嗅ぐと、クワンリが急に恋しくなってしまう。


そういえば、彼女と出会った時も、ミルク粥が最初の食事だったんだよな。


「二十回噛んで食べろ」


「できるな?」


あれからそんなに長い時間は経っていないが、なんだか懐かしくなってしまった。



食欲が満たされ、思考が戻ってきた。


帰る方法に考えを巡らせる。


グルーミングしながら考える。

そのほうが頭が回る。


すっかり猫だな。


このまま猫として暮らしていると、魔獣に一直線。

それだけは避けたい。


そんなことが頭をよぎったが、今は帰る方法だ。


「待てよ。俺は山猫様だろ? 別に逃げなくてもいいんじゃないのか? ワイバーン側が探しているんだったら、見つけてもらえば、それで帰れるんじゃないだろうか?」


「山猫様、それは危険です。ワイバーン族は今、とても気が立っているようなので……」


「ワイバーンはルナに帰るために俺が必要なんだろ? 城の通路の光と、あの球体は、俺が来たから反応したんだよね?」


族長が頷いた。


「はい。あの反応には、私も驚きました。ちょうど今、砂猫と、あの城はまだ動くのではないかと話していたところです」


「じゃあ、そのことをワイバーンに伝えれば、俺の身は安全でしょ?

もしかしたら、俺が船を動かせるかもしれないんじゃない?」


族長と砂猫は、こそこそと話し合いを始めた。


やがて砂猫が、俺へ向き直った。


「それが一番確実に帰れる方法ですね。僕からワイバーンの族長に、すぐ話を通します」


そう言うと、砂猫は外へ走っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。