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黒猫魔族の異世界社会見学【改稿版】黒猫になった俺がポンコツ魔王の娘を人間社会で教育してたら、世界を救う羽目になってしまった  作者: 5414


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第15章 開き直ってみた

まったく、なんなんだ。


猫になったり、子供になったり。


神は俺で遊びすぎじゃないのか。


そりゃ、クワンリと出会った時、難しいゲームの方が面白いとか考えたけどさ。


せっかく猫にも慣れてきたのに……。


なんかもう、やけくそだ。


そうだ。


人型になったら、この世界の料理を食べるのが楽しみだった。


まずは腹ごしらえでしょ。


女子二人に笑われたけど、笑いなさい。


悩んだところで、今はどうしようもない。


明るくいこう。


サルマの服はぶかぶかで動きづらい。


ただでさえ頭が重くて、重心を取りづらいのに。


これも慣れるしかないか。


「あ、あと、コーヒーみたいなお茶も飲みたい!」


それと、魔術を教えてもらおう。


どんなことができるのだろう。


ワクワクしてきた。


クワンリとサルマは、俺のことを船長や乗組員へどう説明するか悩んでいる。


「荷室に隠れていた密航者を見つけて、保護したことにすればいいんじゃないか?」


我ながら、なかなか良い案だと思う。


取りあえず今は、この世界の料理を堪能させていただきます。


神は俺の味方ではなく、クワンリの味方だったらしい。


それなら、それでも構わない。


こうなったら、なんでも来いだ。


次は何になるのか知らないが、受けて立ってやる。


扉が開き、料理を持った船長が入ってきた。


肉の焼ける匂いが、部屋いっぱいに広がる。


「やった! 飯が来た!」


長すぎる袖をまくり、小さな両手を合わせた。


「いただきます!」


……味が濃い。


肉のトマト煮込みのようなものだ。


ホルモンも入っている。


パンへ少しつけて食べるくらいで、ちょうどよい。


期待していたが、期待外れもいいところだ。


猫だから味が濃く感じるのだと思っていた。


そもそも、味が濃かったのか。


クワンリへ聞くと、これまで食べた鬼人料理やバーベキュー、ミルク粥以外は、だいたいこのような味らしい。


仕方ない。


魔術へ期待して、料理は完食した。


喉が渇く。


その魔術も、すぐに期待を裏切った。


『魔術は成人してからだ。今のお前が使えば身体への負担が大きすぎる』


クワンリから、きつく禁止された。


料理はまずい。


魔術も使えない。


もう、猫に戻りたい……。


サルマは、オババと見張りを交代する時間らしい。


食べ終わった皆の食器を持って、部屋を出ていった。


クワンリと二人きりになる。


猫の時は、何も気にせずまとわりついていた。


だが今は、子供とはいえ男の身体だ。


なんだか恥ずかしくなり、ぶかぶかの袖をいじっていると、クワンリが手招きした。


慣れない身体で、ふらふらと近づく。


抱き上げられ、膝の上へ横向きに座らされた。


クワンリは俺の頭を撫でている。


見上げると、顔がほころんでいた。


やっぱり、なんか恥ずかしい。


猫の時より嗅覚は落ちている。


それでも、嗅ぎ慣れたクワンリの匂いが、少しずつ俺を落ち着かせてくれた。


『ノルよ。このまま人の姿なら、私の養子にならないか?』


恋人の方がいい。


だが、この身体では言いづらい。


もじもじしていると、クワンリに抱き締められた。


匂いが濃くなる。


切ないような、ほっとするような、不思議な気持ちになった。


胸へ頭を預け、目を閉じる。


この際、養子でもいいかな。


眠りの淵をゆらゆらしながら、そんなことを思った。


   *


いつの間にか、ベッドへ一人で寝かされていた。


クワンリの姿が見えない。


不安で、心細い。


泣きそうになる。


いや、もう泣いていた。


子供のひくひくという泣き声が、自分の耳へ入ってくる。


猫の時もそうだったが、身体が変わると、感情や行動まで引っ張られるらしい。


頭では大丈夫だと分かっている。


それでも寂しさが募り、どうにもならない。


しくしく泣いていると、扉が開いた。


クワンリだ。


ベッドから降り、駆け寄る。


腿へ顔を押しつけ、そのまましがみついた。


『起きたか。寂しかったのだな。一人にして悪かった』


クワンリは手にしていたものを机へ置き、俺を抱き上げた。


頬を擦り寄せてくれる。


嬉しいのに、涙がどんどん溢れてきた。


鼻水まで出る。


しばらく泣きながらしがみつき、クワンリの匂いを嗅いでいると、ようやく落ち着いてきた。


『お前が寝ていたので、ミルクをもらってきた。喉が渇いたろう。ゆっくり飲むのだよ』


木の器を差し出してくれた。


鼻が詰まって飲みづらい。


それでも、少しずつ喉へ流し込んでいると、身体から力が抜けていった。


子供って、面倒な生き物だな。


我ながら呆れる。


一息つくと、今度はクッキーのような焼き菓子が目の前へ出された。


『サルマがお前に持たせてくれたものだ。あとで、ちゃんと礼を言うのだぞ』


頷きながらかじる。


口の中の水分が、一気に持っていかれた。


すぐにクワンリが、ミルクの器を差し出してくれる。


まるで母親ではないか。


クワンリの腕の中で焼き菓子をかじり、ミルクを飲む。


愛に包まれたような気持ちになりながら、俺はまた眠りへ落ちていった。


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