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フリードリッヒ王国 第8話 乱戦

 「ここでは戦えない。ぼう、近くに立ち木の少ない場所は無いか。姉さんを守りながら防衛戦をやる。それから、帽子はかぶっておけ、あいつらが来たらそんな余裕は無くなる」


 「でしたら、向うに大きな岩があります。」

 そちらを見ると、人の背程の岩が一つ見える。一言でいえば噴火で飛んできた大岩、と言えばわかりやすいだろう。

 「わかった。きし、担いで向うへ。姉さんを岩に、そこで戦う。」

 「「了解」」


 王子達に幸いしたのが、中央の小屋にいた群れのボスの火傷が酷く、虫の息で群れの指揮をとれない状態だった事だった。指揮のないゴブリン達は、まとまる事もなく、それぞれが向かってきた。


 「できれば、仕留めてくれればいいが、出来ないと無理をしないように。それに、逃げて行ったゴブリンを、追いかけないように。

 姉さんを守りながら、数を減らす。ただそれだけでいい、負けなければ最後には勝てる。いいな」

 「「はい」」


 森にいたゴブリンは、焼け跡になった小屋を横切るのではなく、迂回して森を歩いて近づいてきた。まだ、火の気があるようで、それを恐れたのだろうか。ただ、向かいの森にいたゴブリンは、さすがに距離があり遅れると、真っすぐ向かってくる。



 岩に到着し姉さんを置くと、近くにいたゴブリン二匹が向かってきた。


 かなり怒っているようすで、興奮した声を上げ、棒をふり上げて向かってくる。


 王子は、慣れた様子で振り下ろした棒を、避けると腰で引いた剣を突き刺す。致命傷ではないようだが、それほど長く生きられないだろうと、逃げていくゴブリンを見逃してやる。

 次のゴブリンが迫っていた。

 


 きしに向かってくるゴブリンはいなかった。隣の王子に二匹向かっていたが、王子が刺したゴブリンの反対なので、移動せずゴブリンが近づくのを待っていた。


 王子の隣にいたシスターは、王子に向かっていた二匹目に、棒を突き出す。ゴブリンは、シスターをチラッと見たが、届かないだろうと無視した。

 目を離し王子に差し迫った時、横腹をつつかれ体勢を崩す、立ち止まったゴブリンに王子の剣が振り下ろされ、胸から腹を切り裂かれた。


 シスターの隣、端にいた”ぼう”と反対の端にいた兄さんは、迫りくるゴブリン目掛けて弓を引きたいのだが、森の木々と長く伸びた下草が、視界を邪魔して射ることができないでいた。


 群れの左右、森からの増援とやけどを負いながら来るゴブリンがまとまって向かってくる。少し遅れて最奥のゴブリン達も近づいてきた。


 近づいてきたゴブリン目掛けて、兄さんとぼうで弓をいるが、視界が悪いのでそうは当たらない。しかも、当たってもひるまずに向かってくる。


 「短槍に持ち替えろ」

 森に入る前、各自に短槍をサブウエポンとして持たせた。ゴブリンの数が不明だったので、近接された場合の装備だった。王子が被らせた帽子もそれで、革のヘルメットとしての役割を持っている。平時は、畳んで腰にぶら下げて持ち運ぶ。


 岩に背を預け、荒い息をする姉さん。それを囲む王子達に十数匹のゴブリンが襲い掛かる。その後ろに、さらに最奥から向かってきたゴブリンが続く。



 これが、狼など連携がうまく、森の地形に邪魔されない噛みつきだったら、王子達は、全滅していただろう。

 幸いしたのが、ゴブリンの装備が棒だけだった事、下草は踏み固められたので意味を持たないが、まだ、周囲に細いが立ち木があり、密集したゴブリン達には、棒を振り回せない事だった。

 突くという事を知らないように、ひたすら上から叩いてくるゴブリン達。


 帽子があるが、それでも頭・肩と叩かれると痛い。子供並みの体格なのだが、魔獣というだけあって下手な大人並みの力で叩いてくる。


 ただひたすら突いて勢い良く抜く。後ろに行ったら、力を入れ突く。刺しどころが悪いと一度ではひるまないのだが、さすがに二度になると、棒を放り出し手で押さえて倒れる。

 そんな仲間を踏みつけて、ゴブリンは押し寄せる。




 永遠とも思える時間が過ぎ、肩で息をして、帽子を脱いで頭のこぶをなでる。切れてはいないようだと、安心する。

 ただ、手だけはひどくやられた。青い内出血は数しれず、切れて血が流れているのだろう、革の袖から流れている。


 革の防具を脱ぎ、裂傷のひどいところはシスターが治療を。ポーションで治りそうなところには、綿に浸し細い布で縛る。

 とりあえずの応急処置が終わった者から、小屋の周囲と中に生きているゴブリンがいないか見て回る。

 「どうやら、もういないようだ」

 王子の討伐終了が告げられると、緊張が解け、一気に脱力していく。

 「もう歩けない」

 「手も動かないよ」


 一時間ほど休憩の後、ゴブリン達を、群れの中心にあった小屋に集め、さらに他の小屋を解体してその周囲に立てかける。

 魔力が幾分回復したが、まだふらついている姉さんだが、こうなった責任は自分にあると、火魔法を唱える。

 実体のある魔獣は、体の構成に血肉の他、大量の魔素と瘴気を持っている。一匹二匹ならそれほどでないが、これほどの集団となると腐敗に伴い魔素と瘴気が漏れ出て、一か所に集まって集積し、より大型の魔獣の発生原因となってしまう。

 それを防ぐため、火葬して魔素を拡散させ、さらに聖水か祈りで瘴気を浄化する必要がある。


 大型の魔獣なら、体内から魔石を回収するのだが、ゴブリン程度なら小指の先にもならない。一緒に燃やしてしまった方が簡単だ。

 最後に、水魔法で延焼しないように確認すると、村に向かって歩き出した。


 村長に、ゴブリンの群れの状況とそれを退治し、燃やして浄化したことを伝える。今日は、一泊してから戻る事にした。

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