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フリードリッヒ王国 第7話 ゴブリンの集落

 ゴブリンがどうやって生まれたか議論されていたが、最も有力なのが「捨てられた子供が、森や洞窟の魔素の濃い場所で瘴気にあたり変質した」という説だ。

 魔素は、全ての物質空間に存在し、魔力で操作できる”魔”法の”素”と言われている。

 瘴気は、怨念とも言われているが、殺された時に強い執着を持っていると瘴気となり漂い、付近をさまよいながら瘴気同士で集積されるという。


 子供がベースの為、狂暴性はあるが体力も攻撃力も低く、単体なら危険度は低いと言われている。しかし、集団で行動し知力もあるので、複数でいた場合には危険度が高くなる。


 変質についてだが、魔素を多く取り込んで使用するので、結果、使用されなかった魔素が残り、どのゴブリンでも体内に小さな魔石を持っている。


 魔石については、体内に入ってきた魔素を消費か排出できなかった物が、集積された結果出来た、と言われているので、魔素の濃い場所に住んでいる人も魔石を持っている事がある。


 ゴブリンは、魔素を体の強化に意識しないで使っていると言われている。

 通常、幼児は走ったり棒を振り回せない、しかし、同じ体格のゴブリンは走りまわり棒を振り回す。それは、”魔力で自己強化を行っている”と考えられてきた。

 つまり、ゴブリンは無自覚の魔法使いといえる。



 ぼうの報告を受けた王子は。 

 「村の周囲には、小動物が多くいる。ゴブリン達も狩りに困らないだろうし、脅威となる魔物や魔獣がいないので、おそらくゴブリンはこちらの想定より数は多いはずです。

 さらに、村に行った斥候が戻らない事で、危険と判断し群れを移動させる恐れがあります。群れを見失えば、再度見つけるまでにもっと大きな群れになってしまいます。今以上増える前に、討伐した方がいいでしょう」


 「でも見失ったのですよね?」

 「見失った場所は、群れよりそう離れていないはずです。そこに移動して、これを使います」


 取り出したのは、少し大きい木箱。手の平より少し大きい。

 蓋を開け、中を見せてくれる。


 底に魔法陣が描かれてあり、小石大の魔石が固定されている。

 箱の他の五面には、底と違う魔法陣が書かれている。


 「それは、なんですか?」

 「アーチファクトと言われている物を、王宮で再現した魔道具だよ」


 王子の説明によると、底の表面に魔力を通しやすい金属が張ってあり、底から魔力を注ぐと、魔法陣が起動し魔石を反応させて、魔力を放出する。

 箱の内側五面に反射の魔法陣が描かれているのだが、これを通過した魔力は、周囲四方と上方(洞窟などでも使用可)に飛んで行って、ぶつかった魔力が飛ばされた魔力より強力だと反発して跳ね返ってくる仕組みになっているそうだ。


 「それは、魔力探知のアーチファクトですか?」

 「正解、よくわかったね。手の平に置いたら、この金属盤に魔力を注ぐように送る、その大きさに反応して魔石から放出される魔力が変わる、という仕組みだよ。小さい魔力だと、探知する距離も短いが多くの反応が返ってくる、大きくすると、距離は伸びるが大きな魔力を持っていないと反応が返ってこない。」


 そう言うと左手に持ち、魔力を注いでいるのがわかる。魔力は、大きさは違うが誰でも持っている。それを操作できるか、魔法は使えるかは別の話である。


 「近くにいる魔力持ちは、ここの村人と私たちだけだね」

 後日談、無属性魔法でも出来そうだと感じた兄さんは、この魔道具を借り、徹底的に調査して原理を解析、【魔力探知】の魔法を習得した。ただ、返還された魔道具は、組立・・いや修理不能で、新たに作る事になった。



 ぼうの案内で、仮眠した場所まで来た。


 「どう使うかわかるかな?」

 「わかりました、貸してください」

 姉さんは、手のひらに載せると魔力を込める。最初は、小さく。


 「小さい魔力だと、近くだけです。反応は、ここにいるみんなからありますね」


 さっきより大きく入れてみる。

 「大きくすると距離も伸びますが、魔獣の魔力が小さいと感知できなくなるのですね。さっきは、全体に靄がかかった状態でした。森の魔力を感じたのでしょうね。強くしたので、森の魔力を素通りしてしまったのでしょう、感じるのはここだけです」


 王子から。

 「強い魔力放出は、感の良いゴブリンだと気づかれてしまいます。ゴブリンの魔力が小さくても、魔石に反応します。ごく短時間の放出にしてください」

 「わかりました。では、最大出力を短時間やってみます」


 「・・・」


 「いました。あっちの方向です。数は分かりませんが、小さな粒が一か所に集まっています。距離は、おそらくですが30分程歩いた先だと思います」




 移動する事30分。

 「もう近くだろう、足音をださないように」


 ぼうが指をさす、木々の隙間からゴブリン達が見える。

 少し森の(ひら)けた場所に住み着いたようだ。群れより規模が大きい、集落と言ってもいいだろう。

 中央の開けた場所に、小屋が5棟。小屋と言っても、低い立ち木に棒を立てかけて、大きい葉や草を立てかけて雨を防いでいる。その程度だが、ゴブリンでも知性があると分かる。


 ワラワラと意味があって動いているのか、忙しそうに作業をしているのが見える。

 小屋からは、荷物を運び出している。(つた)を上手に使い、引っ越しの荷造りをしているようだ。

 小屋は、不要なのだろう、手をかけているゴブリンはいない。


 王子は、あとで後悔する事になる。

「姉さん、先制攻撃します。あの中心に最大火力で撃って、ゴブリンの戦力を()ぎます」


 姉さんは、手を上に上げ魔法を詠唱する。何度も使用すれば、イメージが固定される、慣れた魔法なら頭でイメージし、名称をいう事で発動する。


 【バーストフレア】


 文字通り、上空に火炎を発生させ爆発させる。広範囲に火が飛び、当たった物を燃え上がらせる。範囲は、開けた場所の中心から森の手前まで。それほど開けた場所がないので、森にいるゴブリンには影響がない。それでも、半分近いゴブリンが悲鳴を上げ、地面を転げまわっている。


 「な・・・」

 声を失う王子、他のメンバーも声を出せない。


 ここで、最初に正気に戻った王子が叫ぶ。

 「森が火事になる、早く消せ」


 ゴブリンが燃えて喜んでいた姉さん、周囲を見渡すと森に火が近づいていく。さらに、火のついたゴブリンも森に駆け込んで行く。


 慌てた姉さん、慌てて水の魔法を発動する。


 【レインウォール】


 雨の範囲魔法、場所を指定して水の壁をつくりそこに雨を降らせる。本来は、火属性の魔物を閉じ込め水を浴びせて弱体化させるのだが。

 用途が、魔物単体用なので、壁は厚く逃げられないように、雨もザァーザァーという勢いで落ちてくる。

 これも高難度の魔法になる。つまり、魔力の消費が大きいのだ、それを広範囲に使用すれば、魔力は急激に消費される。


 2度の広範囲魔法により、魔力枯渇になる。症状は、体力枯渇と同じ。例えれば、マラソンを全力で走り切ったように、気絶寸前となっていた。


 崩れ落ちる姉さん、そこに森にいたゴブリンがやってくる。


 まだ散発的にしか来ないが、体が燃えていたゴブリンの火が消えている。ゴブリン達が、棒を構えて森に向かえば、そこに敵がいると理解する。

 軽度のやけどだったゴブリン達も、参戦してきた。


 「まずい」

 そう思ったが、ゴブリン達が迫ってきた。


 周囲の森にいたゴブリンは、14体。

 開けた場所で作業してたのが、20対。その内、軽度のやけどで棒を持って向かってきたのが半分の10体。

 計24体が、向かってきた。

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