フリードリッヒ王国 第6話 初めての依頼
基礎訓練が身に付き始めると、気が大きくなる。強くなったと思うのだ。放置すると、増長してなにが起きるかわからない。
そこで、訓練の合間にギルドの依頼を受ける事にした。
毎月、討伐隊には給金が出るがギルドの依頼は自由にしていいと言われている。いい小遣い稼ぎになると、喜んでいるのだが。
冒険者ギルドには様々な依頼が来る。
側溝が臭くてたまらない、掃除をしてくれ。住民をまとめた地域からの依頼。
猫が見つからない、探して。飼い主からの依頼。
薬草が足りない、これとこれを至急頼む。薬師ギルドからの依頼。
畑に猪が数頭きて食い荒らしていく、退治してくれ。ある村からの依頼。
村の近くに魔獣がでたようだ、村人が襲われケガをして意識が無い。すぐに冒険者を派遣してくれ。村長からの依頼。
などなど。大なり小なり結構な数がある。
それらを掲示する前に見てもらって、討伐隊が依頼を受けるか聞いている。当然、貼りだす前に来て検討しなければならない。早朝の王子の仕事となった。小国ならではのフットワークの軽さと言える。
ただ、全部は多すぎる、次回から、ある程度見積ってもらおう。
「この魔獣というのは?」
依頼者から、ある程度の状況を聞いているだろうギルドに確認する。
「話から魔獣は、ゴブリン。遭遇した数は、三匹、ただ、繁殖が進んでいる場合、最悪群れになっている恐れがあります」
「以前からここに?」
「いえ、今回が初めての依頼になります」
「では、森奥の群れから一部が離れて、住み着いたとか?」
「ギルドでは、そう判断しています」
「この魔獣退治に行ってみようか」
「では、よろしくお願いします」
村長の家に移動すると、知っている情報を聞き出す。その後、けが人の治療を見せてもらう。
「森で薬草を採っていると、棒で頭を打たれたが、意識があるので村に逃げ帰った。安心したら昏睡状態になった。ということですか」
「傷は後頭部なので、不意を突かれたようですね」
「群れがあると厄介なので、早めに手を打ちましょう。それで、昨日見かけた場所というのは?」
見かけたのは二匹、村の端の畑仕事の最中。お互い目があったが、逃げて行った。5人がそれぞれの畑にいたので、かなわないと逃げて行ったようだ。
魔獣としては、最弱と言われているので単独で行動しない。昼は偵察をだし、夜襲うのが常套手段となっている。
「今日の夜に来る?」
「そうだろうな、見かけたという畑に行ってみよう」
「ここじゃ、隠れる所が無いな」
見かけたのは、離れた森の端。少し距離がある。
「森に潜むしかないか」
暗くなる前に、森の茂みに隠れる。、身じろぎもせずジッとしていると、まだ寒くなる季節ではないが、体にはこたえる。
「これを、飲んでくれ。暗くても目が見える」
王子は、竹を切って筒にした【夜目】ポーションを渡している。筒の節の部分に穴が開いていて割竹で封がしてある。
一気に飲む。苦い、舌がヒリヒリする。
「個人差もあるが、二時間は持つはずだ」
少しずつ暗くなってきたが、森の中でも木の幹や枝、手前なら葉の状態もわかる。
「そう暗くなる前に来るだろう。ゴブリンは、夜行性じゃないから」
静かに身をかがめ耳をすましていると、ガサガサと何かが近づいてきた。
三匹のゴブリンが、棒を持ち森を出て畑に向かっている。
まだ畑には、食用になる作物は育っていない。それでも、幾本か引き抜いて食べれるのか確かめているようだ。あきらめたのか、さらに村に向かうゴブリン。
「どうします?」
「見つからない距離で後を追う。あとは打ち合わせの通りに、合図を出す」
皆声を出さず頷いたので、行動開始。
この村に、魔獣対策の囲いは無い。それは、ここが王都にちかいからか、魔獣を見たことが無いので必要ないのだろう。
ゴブリンは、村の近くに行くと、中の様子を見ている。特に中に入るようでもないようだ。
「何をしているんでしょう?」
「あいつら、斥候だろう。村を見つけ、中の様子を伺い、次の本隊が狙う物を物色しているのだろう。」
「このまま帰すのですか?」
「予定どうりだ」
かなり暗くなってきた、光が完全に無くなると【夜目】があっても、見えなくなる。今日は、星が出ているので、足元に注意すれば何とか歩けるだろう。
偵察が終わったのか、ゴブリン達は向きを変え森に歩き出す。
パチンッ。指を鳴らす、周りが水を打ったような静かな所で鳴らせば、異様に響く。
ギョッとするゴブリン達、あたりをキョロキョロと見ている所に、王子ときしが突っ込んでいく。
一匹が気づき「ギャァギャァ」と騒ぎだすと、迫る二人に向きを変え棒を向けて威嚇する。
棒に刃を当て、滑らすように近づく王子。このままでは、指を切り落とされると、棒を強引に降り剣を引きはがす。
それを予想していたのだろう、もともと力んでいた訳ではないので、フッと力をいれ、飛ばされた剣を振り上げ大上段に切り落とす。
強引に棒を振りぬいたせいで、体勢の乱れたゴブリンに回避できる訳もなく、肩から腹に切り裂かれそのまま絶命する。
一方きし。最初に気づいたゴブリンと対峙したのだが、棒を振り上げ威嚇している。不用意に近づけば、体格はほぼ同じなので、ゴブリンは野生の経験から向こうに分がある。
試しに打ちかかってみると、振り落とす勢いで、コンと当てられ剣が向うの方へと流される。ゴブリンは、打った反動で棒は正面を向いている。これは不味いと、棒目掛けて下から強引に上に斬り上げるが、しょせん無理な態勢で勢いもない。一歩下がって剣をかわすと、そのまま振り上げて打ち下ろしてきた。態勢が出来ていない状態で、流すような打ち方だったので、痛い事は痛いがケガという程ではない。
「なんだ、手こずっているのか?」
「・・・」
王子は、剣を構え、無言は手伝ってほしいのだろうと解釈して脇に移動する。同時に二人は、不利と背中を向けて逃げようとするゴブリン。
シュッ。
弓矢が背にささると、地面に倒れる。つかさず、背から剣を突き刺す。これで二匹目。
「逃げていきましたね」
一匹目が切られたのを見ていたゴブリンは、一目散ににげだした。
冒険者ギルド推薦の、”一匹逃がして群れの位置を調べる”だ。
ガサガサと森に入ってきたゴブリンを、ぼうが追う。
しばらく森を小走りに走っていたが、一時立ち止まると、あたりをキョロキョロしだした。
なんだ?迷子か?それとも追跡されているのがわかった?
さっきと違う方向に向かうゴブリン。
方向無視で咄嗟に逃げだしたが、もう安全だろうと誰もいないことを確認していたのかな。今度は、群れに向かうだろう。
さっきより慎重に歩くゴブリン。あたりはすっかり暗くなって、木々の間が星明りで照らされる程度になっていた。
パキッガサッ
ゴブリンの足音が森に響く。ぼうは音を出さないように、ついて行く。
しばらく(数分?)歩いていたが、さすがに真っ暗な所で足元が見えていなかった。
パキィ
乾いた枝を踏み、音をだしてしまった。
ビクッ。とまってこちらを見るゴブリン。もうダメと観念したぼうは、一気に駆け寄り小刀を刺そうとするが、体勢を整えたゴブリンは棒を構え、突き出した腕を叩こうとする。
その動きをみて、腕を下げそのまま突進する。体が半身泳いだゴブリンは、無理に棒を振り戻す。
ただ単に振り回す棒ならと、腕を上げ棒に叩かれるが体ごとゴブリンに体当たりする。
後方に倒れるゴブリン。覆いかぶさっているので、上半身体を起こし、刺さった小刀を抜いて首を斬る。
近くまで来たのかな?確認の為、近くの高い木に登り周囲を見渡すが、木々の下は、真っ暗で何もわからない。
しょうがないと、そのまま木の中ほどまで降りて、太い枝に足を置いて幹に体をくくりつける。そのまま、辺りが明るくなるまで仮眠をとると、再度上に登って周囲を見てみるが、ゴブリンの群れは見えなかった。




