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フリードリッヒ王国 第5話 訓練後期

 騎士隊の連携をならい、竜討伐をするのが最適とする副隊長。

 例を出し、一つ一つ論破するのだがどうも納得していないようだ。

 これは、これからの訓練で納得させるしかないようだ。




 訓練も2年を過ぎ、騎士隊仕込みの基礎体力、小型の盾、ショートソード、短槍、乗馬とメイス、弓として短弓や小型のクロスボウなど、基礎になる部分は習得したようだ。


 これから成長に合わせて、少し大きさを変えていこうかと考えていると、副隊長から「ただ大きさを変えるより、各々にあった武器防具に合わせた訓練が必要ではないでしょうか」と、提案された。

 それも納得のいく話なので、討伐に想定される武器防具になにがいいか、実際に見てみる事にした。


 近衛隊に話をして、竜と退治した時として訓練を見せてもらう。


 近衛隊は、城内に攻め込まれた際、王族の避難を最優先にする。その為、基本自身から相手に打って出る事は無い。普通は、騎士隊から推挙されるだけの能力を持っているので、追いつかれて戦闘になっても遅れをとる事は無い。

 ただどこにも例外はある、貴族のごり押しで入っているのもいるので、全員という事でもないのだ。


 改めて見ていると、少数が隊から離れてみている者たちがいる、身のこなしからあまり熱心に訓練を受けていないようだ。


 想定される戦闘は、城内の廊下、場所にもよるが王族が通る場所は幅を広くとっている。が、狭い所や室内も想定されるので、盾は小型で面長・移動に支障のないように騎士隊より軽めとの事。剣は、ショートソードより少し長いようだ、これも狭いところを想定している。


 3名が前一列、後方に2名、それぞれ交互に位置し隙間の無いように配置されている。

 竜対策と話してあったので、近衛兵の前には、攻城兵器の破城槌がある。


 破城槌は、主に門を破壊する巨大な丸太だが、それを台車に固定したようだ。

 近衛隊長の説明によると、破城槌を竜に見立て突進する。近衛隊は押している兵ではなく、破城槌に攻撃するという。


 訓練が始まった。突進する竜(破城槌)、ぶつかる前に左右に散開すると通り過ぎる竜に剣を打ち据える。

 通り過ぎた竜は、再度向かってくる。以後同じような攻防が繰り返された。


 「いかがでしたかな。ただ、わが隊の使命から、少し竜との攻防とは合わないかと思われますが、つたない考慮でこのような訓練としました。」

 「ご苦労であった。貴隊の協力に感謝する。参考になりました」

 「ありがとうございます」




 騎士隊も準備しているとの事なので、後日観に行く事になった。今日使った破城槌を使用するそうだ。


 当日騎士隊5名が、破城槌の横に立っていた。持っているのは、大型のラウンドシールド。今回の為に特注したそうで、金属製で大きさは150cm、身をかがめて全身が隠れるようになっていた。厚みもありかなり重そうである。


 隊長の「始める」と開始の合図、破城槌は後ろに引かれ距離を取る。騎士3名が横一列となり、中央の騎士が盾を地面に置き身をかがめる、左右の騎士は中央の盾にすこし被るように盾を置き同じく身をかがめる。続いて2名が3名の間に入ると、盾と盾の上に更に盾をのせた。

 持っているような態勢ではなく、体を斜めにしていることから、破城槌が突進してくるのを、耐えるようだ。とすれば、落下防止に突起でもあるのだろう、そうとすれば全部金属というのも納得する。


 「破城槌、進め」

 隊長の声が鍛練場に響く。ゴロゴロと徐々に速度を上げる破城槌。


 ドォーン


 ぶつかり合う両者。さすが騎士隊というべきだろう、かなりの衝撃に耐えたようだ。これを3度行い、訓練は終了となる。

 「すごいの一言しかない」

 王子の感想に、まんざらでもない様子の隊長と副隊長。

 参加した隊員に労いの言葉をかけて、王宮に戻っていった。


 確かに竜の突撃に耐えるだろうが、あれを誰が?討伐隊では無理だろう。あの重さの盾をどうやって運ぶ?そういえば兵站も必要だが、頭の痛いことだ。



 ☆☆☆



 基本訓練は終わったので、各自自分にあった訓練にするように。そう言われて各々は、自分の装備や武器を改めて見つめる事から始めた。


 ”きし”は、当初フルプレートで全身を防護しようかと考えていたが、実際装備してみると、子供用の薄い全身鎧であっても、重い・身動きが取れない。そのまま対峙すると、尾の一振り・爪の一撃でミンチになる事がわかった。


 かといって前に出て剣を振るう事になるだろうから、革装備では心許ない。選んだのは、主体は革装備、胸と肩、肘や膝を金属として動きに支障のないように作ってもらう事にした。

 盾は、爪から防ぐのではなくそらす事を考えて、小型より少し大きめとし。

 剣は、鱗を斬るのは不可能と、差し込むようにレイピア寄りの芯があり細く長い形状を作ってもらった。これは、打ち据えて叩くという剣の用途から離れ、刺突に特化した剣となり、扱うための訓練が続くことになる。



 ☆☆☆



 シスターも悩んでいた。神官騎士は、前線で戦う事を想定していない。


 例外は、ゴーストなどアンデッドの物理攻撃無効の相手だが、ゴーストは物理攻撃をしてこないので、重装備は必要ない。ただ、ゾンビなどの実態のあるアンデッドもいるので、軽装ではいられない。

 そこで、ある程度の衝撃に耐えられる素材が用いられる。神官騎士専用のローブとなっていて、前線で直接戦うのでなければ、十分な装備となっていた。


 普段は、これのお古を仕立て直してもらい着用していたのだが、前に出て戦う事があるだろうと思うと、別の装備を考える必要があった。


 シスターが選んだのは、薄手の革装備。戦乙女隊の一部で使用していたのだが、かなり大きくブカブカでも着せてもらい動いてみた。


 これいい


 以後、この装備がお気に入りとなり、平時はローブ姿、訓練は革装備でやる事になった。これには、”品位が落ちる”と教会関係者から白い目で見られるのだが、命に代えられないと無視する事にした。


 色々悩んだのが武器の選択。教会騎士の標準装備は、杖。これは固く程よく重さもあるので、棒術で攻防に使用できる。

 アンデッド対策に、メイスも使用され、これの訓練もあった。


 ただ、戦乙女隊が来るようになると、剣、弓、盾の一般的な武器はもちろんの事。変わり種の両手剣、双剣、斧、ランスなど多種多様な武器を使用していた。

 訳を聞くと「相手が剣や盾だけ使ってくるのかな?」

 想定される武器を使ってみて、攻防できるように訓練しているそうだ。なるほどと思い、戦乙女隊の武器庫を見せてもらった。


 目にとまったのが、なんの変哲もない棒。ただ、ものすごく気になる。

 「へえ、これが気になるのか。変わっているね」

 そう言って、手に持つと裏庭についてくるように言われた。


 「できるだけ弱く打つけど、これは扱いが難しいのだよ。痛いだろうけど、治療できるだろうから、勘弁してね」

 そう言うと、棒を前に突き出した。棒をつき出して狙うならかなり距離がある、なにをしているのだろう?そう思った時、棒が3つに分かれそのまま、腹をめがけて迫ってきた。

 危ない、とっさに杖で叩き落そうと振り落とすが、落ちたはずの棒が、クィと引かれると元の棒に戻った。


 「なにそれ?」

 「三節棍というのだけど、これは少し特殊でね。棒と棒を幾本も織り込んだ糸でつないでいるんだ。しかも、糸自体がかさばらないようにしてあるので、こうやって連結できるようになっている。

 このまま、棒として武器にもできるんだ。気に入ったかい?」

 「はい、ぜひ欲しいです」


 シスターの訓練にかなり際物の訓練が加わった。



 ☆☆☆



 兄さんは、半分あきらめていた。もう年だし、いくら訓練しても伸びしろが期待できないと思い込んでいた。

 ならと、通常の革装備に、非力でも扱える装填補助のついたクロスボウをそのまま使用することにした。


 そんな兄さんに驚天動地な出来事が起きる。


 王子からの話に、なにか思い悩んでいる姉さんが一緒に魔法ギルドに行ってほしいと言われた。

 姉さんは、得意な火魔法をさらに伸ばし、遅れていた水魔法を多様な攻撃魔法へと昇華させていた。

 訳を聞くと、「師匠が使っていた雷魔法をやりたいのだけど、それには風の適性が無いとダメなの。前に見てもらった時には、適性は無いと言われたのだけど・・」

 どうも納得できないのか、あきらめきれないのか、一緒に行ってほしいのだという。見ると手には、黒い手帳を握りしめていた。

 聞くと、師匠が雷魔法を習得した修行がかいてあり、効率よく鍛練する方法がまとめられていると言う。


 「そうですねー」

 ちょっと困った顔のギルド受付嬢。ただ、正直に言うようだ。

 「魔法使いとして必要な適性は、ありません。ただ、全然ないのかといわれると、そうですね、ろうそくの火を離れた場所から消すくらいの風は起こせると思います。これは、適性なのでよほど訓練しても、一般の魔法使い程度には、なれないと思いますよ」

 離れた場所に微風で当てる事が出来る。そう聞いただけで、天にも昇るように、目が輝いている。そして。

 「ねえねえ、ついでだから兄さんも見てもらったら」


 「あら珍しい。全属性に適性はありません。魔力も魔法使いの半分程度ですね」

 ガクッ。俺も魔法が使えると、期待したのが間違いの元だったんだ。ん?珍しい?無いのがか?それなら一般平民なら全部だろう。


 「あなた、属性無しで適性があります」

 「「?」」

 姉さんと二人で「?」状態。

 「ギルドでは、無属性と呼んでいます。通常は、何かの属性と付属していて表面にでないのですけど、こういうのは初めてみました」

 受付嬢の話によると、どの魔法使いも程度の差はあるのだけど、魔法使いならだれでも持っているそうで。無属性は、属性によらない魔法で、身体強化や武器に付帯させて一時的な強化につかえ、接近して相手の弱体化をさせることもできるそうである。

 ただ、無属性魔法は、見た目が変わらなく、かなり強い効果を付帯しないと実感がでないので、長期の自己鍛錬より属性魔法を強化した方がいいので、やっている魔法使いはいないとのことです。

 それから、無属性魔法の一般的な効果を聞き、それからはそばに魔法使いがいるのだから、彼女から聞きなさい。と、魔法ギルドを後にするのだった。


 「俺は、魔法使い・・」

 ちょっと違うけど、目がすわったお兄さんです。



 ☆☆☆



 ”ぼう”は、これから進む方向に悩んでいた。

 例えば弓、短弓では物足りなくなってが、長弓を引くのにはまだ筋力が足りない。かといってクロスボウを扱う気にもなれない。

 では、短弓より大きい弓を作ってもらえばいいのか?そうではない気がする。

 装備も標準的な革装備をきているが、これもいまいち馴染まない。金属で部分を保護してみたが、煩わしいだけだった。かといって、このままだと気がすまない。


 唯一気に入っている、爺様からもらった小刀だけが、自分の装備だと思っていた。



 「よう坊主。」

 入ってきたのは、爺様と王都に連れてきた大男。最初、四人部屋だったが今年から小さな個室となっていた。その為、男三人はかなりむさくるしい。


 「そうだな、途中の広間にいくか」

 玄関前のエントラントトホールのらしい、あそこなら静かだし、別に聞かれ困る事もないだろう。


 「こいつが王都に出張だと聞いてな、しばらくぶりに孫成分を補給しにきたんだよ」

 なに?孫成分って、聞いた事ないんですけど。それに、こいつ?出張ってなに?

 「坊やも、見ない間に大きくなったな。なんだ?俺の顔になんかついているか?」

 「オマエ、坊主に自己紹介していないだろ。どう見ても誘拐の不審者だぜ」

 「ひでぇな。これでも俺は、あの地区を束ねるギルドマスターだぜ、坊やよろしくな」

 はあ、最近のギルドマスターは、誘拐もやるんだな。そういえば、爺様に王都に行けと言われたけど、そのあとこうなるとは聞いていなかった。

 あの時は、訳も分からず憤慨して、こいつと話もしていなかったな。


 「どうだ調子は?まだ竜退治には無理だろうが、感じはつかめたか?」

 そう爺様に言われたが、その感じが何なのかわからないでいる、と正直に言うと。

 「ふむ。なんか変に成長したな。どういえば・・坊主が竜とあったら、正座して頭を下げ、よろしくお願いいたします、と言って剣を向けそうだな」

 「?(なにそれ)」

 「わからんか、あまりに礼儀正しく育っているようだ。それでは、納得できなければ、弓も引けないだろう」

 「そうなんですか」

 「そうだな、こいつは出張が終われば帰るだろうが、儂は帰っても用事がある訳じゃない。坊主を、村にいたように野生に帰してやってもいいがどうする?」

 「わかった、王子の許可をもらってくる」


 この後、爺様の実力を見た王子は、指南役として雇う事になる。


 ☆☆☆



 姉さんは、手帳に書いてある一つ一つを丁寧に試していく。


 おまえには、風の適性がないのだろう。だがもし、何かが起きて適性を持つことが出来たら、これを試しなさい。そう書き始まっていた。


 おまえは、もう火魔法は一人前の魔法使いを凌駕している。それを参考にするんだ。

 火を練るつもりで、風を練る。俺は、体内に松明の火をイメージするが、お前はお前のやり方があるだろう。それと同じに、体内に風をイメージするんだ。

 出来たら、その魔力を軽く握り、手の平に空間を作る。そこに魔力を移動させれば、あとは火と同じだ。


 何度も失敗したが、やっと手の中にやっと感じる事の出来るつむじ風を作る事ができた。


 やった、できた。


 うれしかった、手帳にやどる師匠の笑顔がみえた。


 風魔法ができたら、雷にする方法だが・・・


 なんども師匠の雷魔法を見てきたからか、発動時の姿勢、動作、顔つきまで思い出される。

 こうやって、こういう顔をして、こう言っていた。


 手帳の通り丁寧に、少しづつ、焦らない。なにかが生まれそうだ。


 数日後、手の平がジンジンするが、不快ではない。試しに投げてみるが、当たっても変化はない。やはり適性がないからかな。


 鍛練場に兄さんが入ってきた。


 「おーい。」

 「まだやっていたか、もう遅いよ」

 「ちょっと付き合って」

 「いいけど、どうすればいい」

 「そこに立っていて」

 「ああ・・?」


 手に雷を作り、後ろに手をやり前に突き出す【火球】のイメージだが、火はボールを投げる動作、これは指先から発射するイメージ。人差し指を突き出す。何かが、指から抜ける感じ。


 バチッ。小さい破裂音。

 「いてっ」

 兄さんが、しかめ面をする。

 「なんだいこれ?バチッって、たまに金属を触った時の感じだけど」

 「雷魔法よ」

 「へえ、出来たんだ。おめでとう」

 「えへへ、ありがとう。でも、出来るのはこれだけ」

 「それでもすごいよ。こっちはまだまだな。ああ、魔法使いの道は遠いよ」


 兄さんと別れて廊下を歩いていると、見たような大男が向かってきた。

 「やあ、お嬢さん・・もしかして、討伐隊かな?」

 「見た事・・あ、もしかして冒険者ギルドの偉い人?」

 「なるほど、見た顔だと思ったよ」


 姉さんが目に付いたのが、大男の腰に巻き付けていたロープ。

 「それは、なんですか?」

 どうも腰の物が気になるようだ。

 「これは、鞭だよ。俺のサブウエポンさ。」

 「ウエポン?武器なの?」

 「そうだな・・興味があるなら見せようか」

 「おねがい」


 鍛練場に戻り、端の立ち木の前に立つ。遠くで兄さんが、何が始まるか見ている。

 鞭を外して、地面に放つと。シュッ。一直線のロープになった。

 クィ。軽く腕を後方に。

 シュルシュル。鞭は、後ろへと流れていく。

 シュッ。小さく腕を振るうと。

 シューーー。小さく空気を斬り。

 バチッ。木の幹に当たり、表皮を削る。


 「どうだい?」

 「こんな武器初めて見ました」

 「そうだろうね、この国に数人しかいないと思うよ」

 パチパチ。手を叩いて教会騎士一人がやってくる。途中からみていたようだ。

 「それって、そう使うのか。初めてみたよ、あんた、それに興味があるのかい?」

 「ええ、自分の武器に会うのが無くて困っていたので」

 「ちょっと待ってて」


 訓練用の倉庫から鞭を持ってきた。

 「倉庫の片づけを手伝った時に見つけたんだけど、何に使うかわからないので、奥にしまっておいた物だよ。使うかい。」

 「ありがとうございます」

 「それじゃ、俺が教えてやろう。3日後にここに戻ってくる。それからしばらく教えてやる。それでいいか?」

 「はい」


 鞭に雷は流れなかった。王子に頼み、王宮の錬金術師に鞭に通電用の金属を仕込んでもらった。

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